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F組三国志 12-3 [F組三国志 12 舘内亜美]

へ~、ここが淳一さんの家か。
結構大きいな。

「みなさんようこそ、さ、どうぞ。」
「おじゃまします。」
「いらっしゃい、ゆっくりしていって下さいな。」
「今日は俺と母さんだけだから気を使わないでね。
母さん、こちらが省吾さま、チーム赤澤のリーダー、隣が美咲さま、クラスの委員長をしてくれている。」
「うわさは聞いてますよ、後ろの方は大学生なのよね。」
「はい、自分は髙尾和彦です、よろしくお願いします。」
「私は、早川玲名です、今日はこの後も予定があって、運転手役ということでおじゃまさせていただきました、よろしくお願いします。」
「お二人とも国立の?」
「ええ、大学では省吾リーダーのお父さまにお世話になっています。」

「さ、みんなこっちへ来て。」
「ピアノが置いてあって広いリビングね~。」
「へ~。」
「うちは家族みんなで演奏することもあってね、最近は回数減ったけど。
亜美、ピアノはちゃんと調律してもらってあるからね。」
「うわ~、弾いてもいいですか?」
「もちろん、皆さんはお茶でもいかがです。」

いいピアノだ…。
子どもの情景でも聴いていただこうかな…。

家のリビングにグランドピアノがあるなんて、うらやましい。
音の響きも違う…、このピアノ。
こんないいピアノ弾くの初めてだ。
あっ、淳一さんが立ち上がった。

チェロを用意して、もう、いつでも演奏できるって感じで私の演奏を聴いてくれてる。
チューニングも私たちが来る前に済ませておいてくれたのね。
じゃあ、シューマンは自然な感じで終わらせて、うふ、淳一さんと目が合った…。
演奏の姿勢に変わったから、準備おっけいってことね。
さて、淳一さんの白鳥、聴かせていただきましょうか。

行くわよ…。
あっ、優しくて綺麗な響き…、コンクール優勝ってほんとだったんだ…。
白鳥ってこんなにも…。

こんなにも…。

えっ、えっ、私、涙が、楽譜が見えない…。
でも弾ける、弾く、ずっと淳一さんのチェロを聴いていたい、一緒に演奏していたい…。

あ~、終わっちゃう、いやだ~。

…、即興変奏曲、始めちゃったけど…。
よかった、淳一さん応えてくれてる。
私、すごく幸せ。

ふ~、そろそろ終わりかな。
うん、淳一さんもそんな感じだ。

私の生涯で最高の出来だった気がするけど…、えっと涙を拭いて、演奏中に涙が出てくるなんて初めて。
あっ、拍手か…。

あっ、美咲さま涙を浮かべて、そりゃ淳一さんのチェロすごかったもんな。
あれっ、私、なんかくらくらする…。

淳一さんがこっちへ来てくれる、も~、素敵、大好き、え~い。

「おお~すごい演奏だったけど、亜美ったら大胆だ~。」
「お母さまもびっくりしたんじゃ…、あ、お母さまも涙目だ。」
「す、すごかったわ、淳一が最近変わってきたとは思ってたけど、こんなかわいらしいお嬢さんとお付き合いしてたの?」
「母さん亜美だよ。」
「ピアノ素晴らしかった、ううん、淳一の演奏も今まで最高だった。」
「俺もすごいって思う、二人のバランスがめちゃいいし、まさかこんなハイレベルな演奏を聴けるなんて思ってもいなかった。
途中から変奏曲に変わったけど、何時の間に練習したの?
今日、初めてって言ってなかった?」
「省吾、即興だったんだ、亜美は本物だよ。」
「亜美さん大丈夫?」
「ちょっと疲れたみたい、俺もずいぶん集中してたから…。」
「亜美さん、すごく幸せそうな顔してる。」
「酸欠か過呼吸か…、でも静かにしてれば大丈夫じゃないかな、顔色もそんなに悪くないし。」
「おい、淳一もぼんやりしてないか?」
「あっ、ああ、亜美のピアノがこんなレベルだなんて思ってもいなかった…。」
「二人がお互いの才能を引き出したってことかな。」
「うん、今まで、チェロを弾いてきてこんな感覚は初めてなんだ…。
母さんうちわってなかったっけ。」
「あっ、そうね…、あったあった、はい。」
「ありがとう。」

「やさし~、あおいであげて。」
「美咲さま、亜美、少し汗かいてるみたいだから。」

あれっ? なんか気持ちいい風が…。
淳一さんの顔が近くに見える…。
チェロは…、え~っと…。

「亜美、気分はどう?」
「うん、淳一さん、最高に幸せ。」
「そりゃ、そうだろうな。」
「えっ? あっ、あれっ? 私、私ったらっ…。」
「いきなり淳一に抱きつくからびっくりしたぞ。」
「えっ、私、あ~ん、淳一さんのお母さまもみえるのに、ど、どうしよう。」
「このままでいいよ、母さんも亜美のピアノ気に入ったってさ。」
「えっ、ほんと、チェロすごく優しくて、も~、好きよって言ったら愛してるって応えてくれて。」
「だったね。」
「あ~、でもでも私ったら、起きなきゃ。
あれっ、淳一さん…。」
「しばらくこのままでいいよ。」
「でもでも、みんな見てるし。」
「関係ない、暑くないか?」
「うん…、もう少しこうしてていいの?」
「ああ、誰も文句言わないからさ。」
「はは、文句なんて言えないよな~、これじゃあ。」

「ねえ、黒川くん、CDとか出してみない?」
「えっ? 髙尾さん、俺、そんなレベルじゃないですよ。」
「そうかな、う~ん、確かに沢山売ろうと思ったら、それまでの過程が大変で難しいかもしれないけど、二人の演奏の記録ということで作って、無理せずに、売れる範囲で売るって感じでも、制作費ぐらいは回収できると思うんだけどね。」
「そうなんですか?」
「CDは著作権とか販売経費とか、まあ会社の利益とかで、一枚当たりそれなりの金額になるんだけど、CDの物としての制作経費なんてたいしたことないだ。
で、チーム赤澤の経営学専攻メンバーとしては、将来の活動に向けて資金の確保ということも考えていてね。」
「どういうこと、省吾?」
「淳一、チーム赤澤自体は営利目的の団体ではないんだけどね。
活動資金はあるに越したことはないってことなんだ。
現時点では知り合いの教授とかからカンパいただいてるけど、できれば寄付とかじゃなく、経営学、経済学部生の実習や研究も兼ねて自力で稼げないかって取り組みなんだ。
チームを入会金や会費で運営するより面白いでしょ。」
「そのまま会社を起こしてしまえたら、さらに面白いとも考えているよ。
省吾リーダーには社長か会長になってもらってね。」
「自分はチェロで協力できるってことですか?」
「協力してもらえないかな。」
「そういうことなら…、でも全然売れなかったら?」
「最低ライン以上に、口コミだけで売れるから心配しないで、録音も、それなりの機材を使えるあてがあるんだ。」
「亜美、どう?」
「淳一さんと演奏できたら嬉しい。」
「はは、お母さん、いかがですか?
自分たちの真面目な取り組みの一環として、契約書もきちんとしますのでお許しいただけないでしょうか。」
「お願いします。」
「私の一存ではお約束できませんけど…、そうね学校の勉強の妨げにならない範囲でなら。」
「あっ、それなら。」
「亜美、どうした? 急に。」
「ね、淳一さんはお母さまにお話ししたのテストのこと。」
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