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香織-4 [権じいの村-3]

「みんなお疲れさま、作業一段落ついたとこ?」
「はい、真帆さん、この後は本部に戻って計算とか検討とかになります。」

「みなさんは、今は何をしてたのですか?」
「香織さん、ここは駐車場にするんで、おれは測量をしてたのです。
今回は簡単に、ですけどね。」
「ぼくらは土質の調査です、一汗かきましたよ。」

「ここをアスファルトで覆うのですか?」
「そうしてもいいんですけど、ちょっと問題があるんです。
「どんな?」
「一つは水はけ、大雨が降ったら車が水没しかねません。
もう一つは堆積物、アスファルト舗装をしても、すぐ地盤沈下してがたがたになってしまいます。
休耕田って聞いてたから予想してたことなんですけどね。」
「じゃあどうやって駐車場に?」
「きちんとやるなら堆積してる草や木の腐った層を全部取り除いて、不純物のない砂利や砂で埋めてしっかり固めてから舗装、となるんですけど…。」
「それじゃあ費用も沢山かかるし、面白くもなんともないじゃないですか。」
「そこで、まず近くの砂防ダムに溜まってる土砂か、川から砂利を運んで埋めようかと。
色々混じりそうですから、お勧めではないんですけどね。」
「どちらにしても砂防法とか河川法とかあるので、可能かどうか、うちの大学の法学部で調べてもらっていまして…。」
「可能ならそのまま手続きをしてもらうことになってます。」
「治水に配慮した形なら問題ないと思って、治水が専門の研究室と連絡を取り始めました。」

「はぁ。」

「沈下の方は開き直って、沈みたかったら沈め、ということに。」
「えっ? 沈んだら…、がたがたになってしまうのですよね?」
「どんな風に沈下していくのか継続的に調査していこうということにしようかと。」
「沈んだ所は埋め直せばいいですからね。」
「表面は実験的に間伐材を使うつもりです。」
「間伐材って森のですか?」
「はい、植林地の調査をしてる奴から間伐材を有効に使えないかって話しが有りまして、何んでも、ここの森はずいぶん放置されていたそうで、再生を考えると大量の間伐材が出てくるんだそうです。」
「そうでしょうね…、昔は林業も良い収入源だったそうです、でも今はぜんぜんだめで、森の手入れをする人もいなくなって…。」
「で、おれが考えたのは駐車場で使うという案なんです。」
「昨日は議論が白熱したよな。」
「どんな議論だったのですか?」
「間伐材をどう使うかです。」
「始めに出たのは板にして並べる、でも安定が悪くないかって言い始めて、輪切り案。」
「そうしたら輪を四等分にして並べ変えた方が安定が良いかも、とか、輪切りにしても厚さはどれぐらいが適当かって感じで。」
「結論は出たのですか?」
「いいえ、結論を出す代わりに色々試すことにしました。
駐車スペースごとで色々条件を変えることにしたんです。」
「ちなみに数学科の友人とか、何人かと連絡をとって大学の方でも考えてもらうことにしました。」
「ユニークな駐車場になるのですね。」
「はい。」



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