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子犬と [短編集-3]

公園の芝生でポメラニアンの子犬と遊んでいるのは沙織、中学一年生。
その姿をベンチに座って見守る父と母。

「なぁ、犬を飼うことにしたのは正解だったみたいだな。」
「そうね、沙織、ずいぶん明るくなった気がするわ。」
「体調も良いんだろ?」
「ええ、最近は学校を休むことも少なくなって。」
「やっぱり病は気からってことだったのかな。」
「アニマルセラピーって半信半疑だったけど、でもあなたのこと見直したわ。」
「えっ?」
「犬を飼うことを決めた時に色々話したでしょ。」
「まあな沙織には優しい心を持って欲しいからな。」

二ヶ月ほど前。

「なぁ沙織、犬を飼うか?」
「えっ、ほんと飼いたい飼いたい!」
「面倒は沙織がすることになるけど大丈夫か?」
「もちろんよ!」
「ただし条件付だぞ。」
「え~、どんな?」
「まずきちんと世話をすること。」
「分かってるわよトイレの世話もちゃんとするわ。」
「うん、それから一番大切なことなんだけど、子犬の心を考えて欲しいんだ。」
「えっ?」
「犬だって、その時々、して欲しいこと、して欲しくないことあると思わないか?」
「あっ、うん、そうだよね、わかるわ…。」
「でも、躾はちゃんとして欲しい、甘やかすだけでなくな。」
「うん、躾のことはミニチュア・ダックスフンドを飼ってる友達から聞いたことがあるから。」
「この三つが守れそうだったら明日ペットショップへ行こうか?」
「うん、あれっ、条件ってそれだけ?」
「もっと条件付けて欲しいのか?」
「ううん、でも条件付って言われた時さ、勉強のこととかあるのかなぁ~って。」
「はは、動物を飼うということは学校では教えてくれないことを色々学ぶことにもなるんだぞ。」
「うん、そうだ、お父さんパソコン使って良い?」
「いいけど…。」
「ネットで色々調べなきゃね、ポメラニアン、ポメラニアン♪」

pome-1.jpg

「かっわいい~!
ねえ沙織、この子、え~と、さくらちゃんだっけ?」
「うん、さくら。」
「だっこしてもいいかな?」
「そうね、先におやつをあげてからの方が良いかも、麻美、ちょっと待ってて。」
「うん。」
「はい、まずはこれをあげてみて。」
「へ~、子犬のおやつって、こんな感じなんだ。」
「さくら、おいで。」
「ふふ、かわいい~、さあ、どうぞ…、食べてる食べてる、かわいいなぁ~。」

「もう満足したみたいね、たぶん今ならだっこしても嫌がらないと思うわよ。」
「ほんと? さあ~、うわ~、か~わ~いい~。」
「ふふ。」

「ねえ、さくらちゃんの世話って、沙織がしてるんでしょ?」
「ええ、そうよ、麻美。」
「大変じゃないの?」
「そうね、面倒なこともあるけど…。
あのね、父さんがね、この子を飼う条件に出してきたのが、この子の心を考える、ってことだったの。」
「子犬の心?」
「で、色々考えてみたらさ、この子ってさ、生まれてまもなくお母さんから引き離されてさ、ペットショップでさみしい思いをしてたと思うの。」
「そうか…。」
「うちの家族の一員となったからには、もうそんな思いはさせないぞって、気になってさ。」
「沙織、優しいんだ。」
「へへ、そんな感じじゃないけどね、私がこの子の母さんになったのだから、きちんと世話してあげなきゃってとこかな。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
「逆にね、さくらに助けられてることもあるのよ。」
「はは宿題手伝ってもらったりとか?」
「そんなわけないでしょうが、ははは。」
「さくらちゃん、4y分の2yプラス2y、さあ、簡単にすると…。」
わん。
「おお、天才犬だ。」
「ははは、麻美、おもしろ~い、ふふ、さくらはね宿題は手伝ってくれないけどね、そこに居てくれるんだ。」
「沙織の部屋がさくらちゃんの部屋でもあるのね。」
「うん、私、一人っ子だからさ、兄弟の話とか聞くとうらやましかったんだ、おにいちゃんがいたらなぁ~、とか弟がいたらとかさ。」
「弟なんて面倒なものよ、生意気だし、まぁ、たまにからかって遊んでるけど。」
「麻美を姉に持った、弟に同情するよ。」
「そんなことないないわよ、3こ下だから、結構面倒見てきたのよ。」
「へ~、そうなんだ。」
「時には自分のしたいことも我慢してね。」
「ふ~ん、今なら分かる気がするわ。」
「うん、で、さくらちゃんに助けられてることって?」
「この部屋の住人が一人じゃなくなくなったってことかな、勉強してても、振り返ればさくらがお寝んねしていてさ。」
「あら、寝てるだけでもいいの?」
「ふふ、宿題やってる時とかは寝ててくれた方がはかどるわね。」
「そりゃそうよね。」

「ねえ麻美んちは何か飼ってるの?」
「う~ん、弟ぐらいかな。」
「はは、弟はペットレベルなのね。」
「ちゃんと餌も与えてるし色々世話もしてるのよ、でも犬を飼いたいな~。」
「だめなの?」
「うん、色々事情があってちょっと無理、そうそう晴美んちがミニチュア・ダックスフンド飼ってるの知ってた?」
「知ってるわよアンディとレニイでしょ、かわいいわよね。」
「あの二匹すごいのよね、躾が行き届いていてさ。」
「ほんと、ポーズもピタリと決めたりしてさ、ポメラニアンのさくらじゃ、あそこまでは無理なのかな、基本的な躾はちゃんとやってるけどね。」
「うちの弟もちゃんと躾なきゃいかんなぁ~。」
「ははは、餌を上手に使ってね…、うふ、麻美は夏樹んち行ったことある。」
「まだないわ。」
「夏樹んちは、ぬいぐるみみたいなプードル飼ってるの、すごくかわいいのよ。」
「へ~、あの子とは何かグループが違っててあんまし話したこともなかったけど、今度声をかけてみようかな…。
あっ、もうこんな時間、帰らなくちゃ。」
「そっか、さくらと遊んだりおしゃべりしてるとすぐ時間がたっちゃうわね。」
「ねえ沙織、またさくらちゃんに会いに来ていい?」
「もち、いいわよ。
さあ、さくら、麻美を見送りに行くわよ。」

「じゃまたあしたね~。」
「うん。」
「さくらちゃん、まったね~。」

わん。




すぺしゃるさんくす

gogohanasakura

あんれに">
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コメント 4

mona

かわいらしいですね♪
白くてふわふわ。お目目も♪^^
by mona (2008-06-17 00:03) 

あんれに

桜子ちゃん 可愛く登場ですね
ウチのはポーズぐらいしか特技がありません
by あんれに (2008-06-17 05:20) 

おにい

かわいいでしょ、へへ、って何でおいらが照れるのかな…。(笑)

アンディとレニイかっこよすぎですよ!
色々教えていただけたら、そう、待ての合図と、待って待った後、どういう合図で走り出すのかとですが…。
by おにい (2008-06-18 01:10) 

おにい

へへ、お話を書く時の癖で…。
途中で切っちまいました。
アンディとレニイを始めて見た時のインパクトは未ださめてません。
by おにい (2008-06-18 01:44) 

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