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大銀河帝国-09 [シトワイヤン-32]

彼らが交渉のテーブルに付くまで時間が掛かったのは、対立の構図が複雑だった事や大銀河帝国に対して組織内でも意見が分かれた事が原因だった。
それでも何とか五つの組織から代表者が日時を合わせて我々のキャンプに来ることに。
それぞれに対する護衛をこちらから派遣して、まず国境を越えて来る前、姫さまの祝福を充分感じられる様に時間を取る。
代表者を送って来た兵士達が他の組織と交戦しない様に距離を取り、休戦を確約させ、休戦が守られなかった場合、今後の交渉で大きく不利になると脅しをかけて貰ったが、姫さまの祝福を感じ美味しい食事を提供された兵士達に戦意はなさそうだとの報告が入る。
各組織の代表達も穏やかな表情になったというので、国境を越えてキャンプ地へ来て貰うことに。
私達の前に現れた代表者達は、神妙に考え込んでいる様に見えた。
一同が揃いテーブルに着いた所で姫さまの登場。
彼らは立ち上がり、胸の前で手を組む、それが自然なことの様に。
姫さまは遠路来てくれた事に感謝の言葉を述べたそうだが、私は生憎アラビア語が分からない。
そこからの会議は全てアラビア語でなされた。

「姫さま、結局話はまとまったのですか?」
「多分ね、それぞれに地球市民党のスタッフと特別警護隊の隊員がついて、内戦終結に向けてのプロセスを調整して行くことになります。
今まで政府軍を名乗っていた人達も一旦他の組織と同格とし、臨時政府を大銀河帝国の保護下、監視下の元に成立させることで合意に至りました。
一旦各陣営間の境界線をはっきりさせますが、国境では有りませんので自由に行き来出来ます。
私は、ヘリで空から国中を見た後、各組織の拠点を訪問して行きます。」
「祝福をまずは空から、広い範囲にという事ですね。
攻撃目標にされたりしないでしょうか?」
「特別警護隊が護衛のヘリを用意してくれますし、監視衛星からの映像を常に確認。
私に対して軍事行動を起こしたら、今回合意してくれた五つの組織に対する攻撃で有るとみなされ、瞬時に抹殺されるそうです。
でも、こちらが余程の高速で移動しない限り、私の影響下に入るので大丈夫だろうと皆さん仰ってました。」
「自身がそれだけのインパクトを姫さまから感じたと言う事ですね。」
「ええ、皆さん私への忠誠を誓って下さいまして、大銀河帝国領となり私と共に歩みたいとの発言に反対する人はいませんでした。」
「対立の原因は解消されたのですか?」
「そうですね、暫定的に国のトップを私に預けて貰うことになりましたので、一番大きな部分は先送り出来ました。
当面は大銀河帝国の自治領といった形を模索して行く事になりそうです。
帝国の力で、経済面を安定させて行けば落ち着いて行くでしょう。
二つの国家、場合によっては三つの国に分けるという提案もしたのですが、それでは国力が弱くなると分かっているそうで、何とか現状を維持、ただ周辺諸国との不自然な国境問題は大銀河帝国も気に掛けて欲しいとのことでした。
人を無視して乱暴に一直線の国境を定めてしまったが為に多くの争いを生み出したのですからね。
まあ、国境を持たない大銀河帝国の理想も考えて欲しくは有りますが。」

出口の見えなかった内戦状態からの脱却、それは姫さまにしか成し得なかった事だと誰しもが思う。
根本的な部分での人と人の対立は、本当に力有る存在が必要なのだ。
姫さまの介入により、政府軍を支援していた国も反政府軍を支援していた国も手を引かざるを得なくなり、大銀河帝国の存在を世界にアピールする事となった。
だが内戦によって疲弊し切った国の復興は容易な事ではない。
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