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パリ-07 [シトワイヤン-25]

晩餐会は主賓、舞姫さまの入場で始まった。
智里と愛華を伴っているので、より小柄に見えるが、何時になくそのオーラを強く感じさせているのは、彼女が、お姫さまらしく見える様に少しだけ舞の要素を取り入れたと話していた、その歩き方によるのだろう。
興奮気味に立ち上がり迎え入れた来場者たちは静かになり跪いて行く、スタンディングオベーションとは逆の光景を始めて目にすることに。
改めての紹介の後、舞姫さまはイタリア語でスピーチ、最後に少し笑いを取って締めくくる。
それからは司会者の進行に沿って二人のイタリア人が話をしたが、通訳が訳す必要を感じない内容らしかった。
食事が始まり、主役の舞姫さまは智里と…。

「お姉ちゃんイタリア語っぽく聞こえてた?」
「充分、ぽかったわよ、あの笑いは何と言ってとったの?」
「今日のスピーチは丸暗記で、イタリア語が話せる訳ではない、紳士淑女の皆さんは私にイタリア語で話しかけるなんて意地悪なことをしないで、という内容なんだけど、文を作ってくれた人から少し茶目っ気のある表現にしたから最後は可愛らしくと言われてね。」
「う~ん、皆さんの表情からは変な表現ではなかったと感じたけど、知らない言語で不安はなかったの?」
「一通り調べておいたからね、でも、笑って頂いたところは良く分からなくて微妙だったのよ。
それより皆さんが緊張気味だと感じているのは私だけかしら?」
「そうね、あっ、何か始まるみたいよ。」

イタリア語で歌い出した女性は美しいアルト、おそらくプロだろう。
その歌に対して万里は英語、智里は日本語で歌って返す。
メロディ言語だ、スピーチの締めくくりを受け、イタリア語の歌で話しかけれたことについてのやり取りの後、女性歌手は会場の人の為にイタリア語へ通訳をしながら二人に対してインタビューを。
晩餐会だからこそ許されるゆったりとした対話は、三人の歌声の美しさを堪能させてくれた。
表現出来るセンテンスは決して多くないので、込み入った質問、そう、舞姫さまの奇跡に関する話は後程お願いしますと振って彼女は歌での質問を終える。
奇跡。
晩餐会の前までに我々が把握出来た情報では病状に奇跡を思わせる改善が見られた人は数名だが、足腰の痛みなどが改善したという人は多数いるそうだ。
会場の人達も当然その情報を得ている筈で、奇跡を起こした少女を前に緊張を隠せないでいる。
食事やおしゃべりより、舞姫さまを見ていたいという気持ちが勝ってる為…。

「こんなに見られていると食べにくいわね。」
「代わりに食べて上げようか、おいしいのよ。」
「お姉ちゃんは何時まで成長期なのかな~?
私は終わってからゆっくり頂くことにするから良いわよ。」
「と言われても、こんなに見られている所で妹の食事に手を付ける訳にも行かないわね。」
「食べさせてあげようか…。」

姫さまはリラックスしているようだ。
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