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或る日の-09 [シトワイヤン-15]

或る日の昼下がり、愛華と。

「人が子どもを育てる事の本質から見直すべきなのよ。」
「見直すって?」
「社会との関わりを無視して子の躾をせず、ただ甘やかすだけの親。
高学歴なら幸福になれるという幻想の下、能力以上の学歴を子に要求し疲れさせ、自分も疲れている親。
そんな親がいるけど、本来は、能力に応じて社会の中で自立出来る力を子に身に着けさせ、最低限、人に後ろ指を指されない様に育てるのが親の役目でしょ。」
「そうだな、親本来の役目と向き合う、そこが教育制システムから抜け落ちている。
政治や社会と向き合っている党員は、大人に対する社会教育を考えているが、一朝一夕で出来ることではなさそうだね。」
「シンプルに我が子が親になる姿を想像出来たらと思うの。
私達はまず自分達が親になる姿だけど、参考にさせて頂ける尊敬できる大人が沢山いるわ。
でも、そういう人が身近にいない人も少なくないみたい。
テレビのドラマでも反面教師にするしかない人が沢山出て来て、二話目を見る気にならないのよ。」
「まあ、ドラマだと癖の強いキャラにせざるを得ないのだろうな、普通の人が普通に生活しているのを見ても面白くないだろうし。
テレビを見るより本を読んでいたい派だから、実際の所は分からないが。」
「う~ん、理想の人物を主人公にしても、そんな聖人君子は面白くないのかな。
単純に、自分はあんな大人になりたい、我が子にはあんな大人になって欲しいとかイメージすることを考えたのだけど。」
「バランス感覚のない人だと、変に偏った教育をしそうじゃないか。
逆に、あんな大人にはしたくない、という反面教師の方が示し易いかも。」
「傲慢な欲の塊みたいな人は目指して欲しくはない…、でも人それだから、そんな人を目指す人もいるのでしょうね。」
「愛華は子どもの頃どんな大人になりたいとか考えていたのか?」
「いいえ、大人になりたいとは思っていたけど、どんな大人にかは考えてなかったわ。
それに気付いたから、子どもに対してどんな大人になりたいかイメージして貰う、そうねスポーツ選手を目指すにしても、憧れる選手像を単にスポーツの記録だけでなく、人柄や人間性も含めて考えてみて欲しいかと。」
「そうだな、本間さんが苗川の市民に、頭の良し悪し関係なく子ども達に尊敬される人間像を示した様に、あっ、苗川の大人達は子どもから尊敬されているね。」
「ええ、大人達はきちんと子どもと向き合っているもの。
調査をしたチームが有ったのだけど、子ども達の心の安定度とかが他地区とは大きく違うそうなの、転校生が増えてるけど、いじめがなくて総じて仲が良いのだとか。
大人達が苗川の改造に取り組んでいることも、子どもにとってプラスに働いていると考えてるそうよ。
前向きな親の影響を受けるということね。」
「それを他地区にも広げて行くには教育の本質を見直すべき、まずは大人の意識改革ということかな。」
「ええ、利己的な考え方を駆逐して行くことは簡単ではないけど、それに取り組んで行かないと先に進めないわ。」
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