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夏休み-10 [シトワイヤン-08]

七人の市長と会う俺達の旅を終える頃には、テレビ出演の予定がしっかり入っていた、勿論レギュラー番組も有る。
皆さんの関心事は市民政党若葉の動静。
有る番組では…。

「瀬田さん、党内の調整作業までもが誰でも見られる状態で大丈夫なのですか?」
「誰でも見られる訳では有りません、市民政党若葉に党員登録して頂いた方に限ります。
もし、党の規約、党の方針に賛成では無いのに党員登録している人がおられるのでしたら問題ですが、今の所目立った妨害工作は受けていませんので大丈夫だと思います。
党員にも見せられない調整作業も行っているのですが、守秘義務が絡む僅かな事柄だけだと聞いています。」
「現時点で国会議員三名が所属政党を離党して合流されるというのは本当ですか?」
「一部の党員が党外に漏らしている情報ですね、それは党員のみが知る所ですので、私からコメントは出来ません。
確定した事柄に関しましては随時、党から発表されます。」

建前上、党の内外で情報を分けているのは、党勢拡大に向けての戦略。
気なった人には党員登録をして貰う、興味が続かなかったとしても、登録抹消手続きをしなければ党員としてカウントされ続け、党員数を底上げすることになる。
登録は簡単に抹消出来るのだが、今までにそのボタンを押した人は極僅かだ。

「九月一日に発表という事になるのでしょうか?」
「はい、リアル党本部開設の九月一日に合わせ幾つかの正式発表がなされると思います。
それからは随時発表になりますが、十月の党大会に合わせる動きも有ります。
現時点でお話し出来るのは、千人を超える議員が市民政党若葉の所属となって下さること、そして地方議会議員の方々は、市民政党若葉の可能性を強く感じておられるという事です。」
「可能性ですか?」
「ネットで繋がる党員達が市民政党若葉をどう活かして行くのか、少し考えてみて頂けませんか?」

すでに多くの答えが出ている質問を投げかけ、そこから幾つか解説させて頂いたが、それは全国の地方議会議員を意識してのこと。
今までにない形で自分の議席を脅かしかねない政党の出現に対して彼らがどう対応するのか楽しみだ。
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夏休み-09 [シトワイヤン-08]

記者会見で何を語るかについては、党代表の記者会見と矛盾を生じさせない様に打合せしたのだが、そこでポイントになったのは党員のみが閲覧出来るサイト。
記者会見でマスコミの注目を集めた翌々日、そこに国会議員からの書き込みが公開され意見交換が始まる。
先陣を切って下さった先生は、ご自身の考えを明確に示して下さった。

「国会議員が所属政党を離党して合流という事に対して、結構突っ込んだ議論がされてるわね。
こんな内容まで公開して良いのかしら。」
「まあ、建前上は党員のみが閲覧出来るサイト、党員に隠さず意見を求めるという姿勢は悪くないだろう。
まあ、歓迎する声が多いし、出身選挙区では九月一日に党支部立ち上げが確定している、彼女に問題はないと思うね。」
「後は、二人目三人目が何時名乗りを上げるかですが、その度に取材依頼が来るのでしょうか。」
「聞かれても、一般党員でも知り得ることしか知らないのだから、これからは党の広報に聞いて下さいとお断りして良いんじゃないのか。
今はこちらからアピールする時ではないだろ、まずは残りの旅を楽しもう、まあ、美女二人が目立ちすぎて落ち着かないけどね。」
「和馬が一番注目されてると感じています。」
「でもさ、どこへ行っても『テレビで見るより良い男』でしょ、テレビではどれだけ不細工に映ってるのって思うわ。」
「そ、そうだよな、単純に褒めて貰ってると思っていたのだが…。」
「それより総理大臣になって下さいという声が更に増えた気がします、最短で五年後、その時点で市民政党が政権与党になってる必要が有るのにですよ。」
「皆さん、若いリーダー、ヒーローの登場を待ち望んでいるのよね、和馬、どうする?」
「この先、市民政党がどうなって行くのか分からないからな、党員が増えた事によって研究者がまとめている党としての意見とは違う価値観を持つ人も増えるだろう。
まずは党員が同じ方向を向いてくれる様に教育して行く必要が有るね。」
「そこは番組を通して和馬の力量が試されているのでしょ、でも、総理となると一番の問題は外交かしら。」
「若くして総理大臣になるとは思っていないが、他国の元首からは舐められるだろうな。」
「ケネディ大統領は四十三歳で就任でしたが…、それよりも今の各国の指導者を見ていると国のトップリーダーと言うのは本当に大変だと思います。
そんな立場は目指さず、和馬には社長ぐらいの地位にいて欲しいです。」
「そうよね、皆さんお国の為を考えて行動されてるのでしょうけど、確実に反対派が存在するわ、正論を語っても、利害関係、それが実際にどうであれ体感的というか感覚的な意識が勝ってしまうと、説得なんて和馬でも無理なのよ。
市民政党若葉が政権を握ったら、それを積極的に支援する立場で充分だと思うわ。」
「そうだな、その時の為に俺達が出来る事を考えてみるか。」

自分自身総理大臣になろうとは思っていないが、何時の日か市民政党若葉が政権を握った時は力になれる存在でいたいと思う。
総理大臣、現実的ではない話が出来るのも旅の解放感故のことだろうか。
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夏休み-08 [シトワイヤン-08]

それからの旅行は予定通りとは行かなくなった。
議員名などは伏せられていたが、九月一日、党本部のスタートに合わせて地方議員が市民政党若葉の所属となると発表されたからだ。
取材依頼を多く受け、急遽記者会見を開くことになる。

「党の発起人であり、初代代表として、今回の発表はどう考えておられるのですか?」
「党を立ち上げた当初は地方自治に関して大きく意識していませんでしたが、党員の増加と共に市民政党若葉の可能性を地方議会の視点で捉え、更に発展的に考える声が増え、今回の発表に至りました。
バーチャル政党からリアルな政治団体になることの意味を今噛みしめている所です。」
「いきなり千人近くの議員を抱える政治団体となる訳ですが、発起人としての感想をお聞かせ願えますでしょうか?」
「そうですね、千人近い議員と言いましても地方議員は国内に三万人以上います。
これから、国政の野党議員の様にそれぞれの思惑で離合集散する様なことなく、与党の様に妥協できる所は妥協して大きくなり、力の有る政党になったら面白いと思っています。」
「人数の発表だけで具体的な氏名の発表はなされていませんが、何か問題が有るのですか?」
「一つは九月一日の党本部設立に合わせて発表したいからです。
そのタイミングで党の地方支部を誕生させるのですが、スムーズに行かない事情を抱える支部も存在します。
今まで、一つの市民団体が市議会を動かしてきた様な所は、そのまま市民政党若葉の地方支部に移行して貰うだけで問題有りません。
ですが複数が係わって地方支部を形成しようと試みている所も有り調整中なのです。
まだまだ市民政党若葉の一員として政治活動をして行きたいと言う声が届いている最中でも有りまして、公式には九月一日時点で地方支部として体制の整った所を公表させて頂きます。」
「まだ増えると考えて宜しいでしょうか?」
「はい、地方から国に要請したくても、ばらばらに動いていたのでは力になりません、ですが地方の抱える問題はどこも同じようなものです、それなら団結するに越した事はないと思いませんか。」
「国との関係を意識しているのですね、では、いずれ国会議員を擁立という事でしょうか?」
「有り得ない話ではないです。」
「それでは、国会議員が他党からの鞍替えするという話は無いのでしょうか?」
「自分達が市民政党若葉を立ち上げたのは、積極的に応援したくなる政党が無かったからです。
今後、市民政党若葉が魅力ある政治団体だと、国民の皆さんに思って頂けるまでに成長出来るとしたら、私どもの理念に賛同して下さる方は増えると思っています。」
「今は七人の市長に会うという企画の終盤だと思いますが、七人の市長はやはり市民政党若葉の展開に賛成されている方々だと考えて宜しいでしょうか?」
「素敵な方々ですので番組でも紹介させて頂いてます、番組では僅かな時間ですが、党のサイトで映像のロングバージョンを公開させて頂いてますので、是非ご覧ください。
私達は未確定の情報を広めるつもりは有りませんが、党員のみが閲覧できるサイトでは各地の事情を含め隠し事なく進めています、それが市民政党若葉の有り方ですので。」

この記者会見を境に、党内の動きをマスコミ各社が挙って報じることになる。
誰でも党員に成れる、今までも情報を隠して来た訳ではないのだ。
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夏休み-07 [シトワイヤン-08]

国会議員について、市民政党若葉サイト内では表立った話は出ていない。
それが、軽はずみに出来る話ではないと思いつつも、党の分析チームに状況分析を打診してみたら、すぐに予測が送られてきた。

「もう分析済だったとはね、皆さん上をみておられるんだな。
しかし、あくまでも可能性と添えれているが、衆議院議員八名から十三名というのは多くないか?」
「それ以前に、他党からの鞍替えって印象が悪くないかしら。」
「彼らの履歴、特に支持団体を考えたら違和感はないです、彼らの支持団体が市民政党若葉に変わるのですから。」
「九月一日時点での党勢予測から判断と有るが、これなら国政政党にもなれるという事だよな。
でも、支持母体が市民政党若葉となって、彼らは次の選挙を勝てると思うだろうか?」
「支持母体そのものの規模が小さくなるのではなく大きくなるのですから大丈夫では有りませんか?」
「派閥の中で微妙な位置にいるなんて事まで分析してるわね、与党議員でも一年生議員では出来ることが限られるのかしら。」
「九月一日、市民政党若葉リアル党本部開設に合わせて、十前後の地方団体が市民政党若葉に名称を変えて参加、十月の党大会までにはまだ増えます、国政政党になる一番早いタイミングは党大会だと思いませんか、少なくともそれまでには入党を打診しておくべきです。
党本部としては、すでに国政政党を視野に入れ打診しているかも知れませんが。」
「でも、打診って裏でこそこそやるのでしょ、それなら既存の政党と同じじゃない?」
「確かにそうだな、打診されなかった人がガッカリという事も有る得る。」
「では、バーチャルで始まった市民政党若葉が、数百人の地方議員を抱える政治団体に成ります、この機会に国会議員の方にも参加して頂ける国政政党を目指します、というのは如何です?」
「誰でも良いという訳では無いが党の方向性は明確に打ち出しているからな。
党代表に市長の話を報告し、相談してみようか。」

党代表と連絡を取る、今は地方議員からの所属問い合わせが多く寄せられ、事務方が大変な状況になっているとの事。
そちらの支援は学生リーダーと相談する様に伝え、国会議員に関する市長の話をした。
彼も国会議員の分析を見たばかりだったが、根回しをするにしても面識の無い相手、間に議員をはさみつつとなり時間が掛かると考えていた。
そこで、今の状況を正直に公表し国会議員にも広く呼びかけることを提案。
党代表は抵抗を感じた様だが、既存の政党とは違う形で進める、という言葉に折れてくれ、党本部が動き出すことになった。
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夏休み-06 [シトワイヤン-08]

旅行期間が二週間近くになることもあり、俺達のスケジュールは仕事、学習、観光ときっちり組まれている。

「パソコンさえ有れば仕事もレポート作成も、どこに居ても出来ると実感しました。」
「だね、極めて少数ながらも都会から田舎暮らしを選択し、ネットを活用して仕事をしてる人がいるって聞いたよ、静かな環境が安く手に入るのだとか。」
「大学を卒業したら試してみますか?」
「夏は高原に住み、冬は沖縄で過ごすのも良いかな。」
「冬はオーストラリアという手も有るわね。」
「敢えて冬の北海道を体験してみたい気もします。」
「今日の市長さんには雪の話も聞かせて頂こうか。」

と、のんびり気分で参加した市長を囲む集いだったのだが。

「和馬くん達が市民政党を立ち上げたことを知って私はとても驚いたのよ。
バーチャル政党を名乗りながらも、私たちの様に市民団体から市長を生み出した人にとっては当たり前の主張、ベータ版の頃は大学関係者中心に党員が増えて行ったでしょ。
誰もが入党出来るのならと、みんなで参加の可能性を探って来たのよ。
ねえ、立ち上げる時に今の姿はイメージ出来てたの?」
「そうですね、幸いなことに人脈がそれなりに有りましたが、逆に言えば手伝って下さる方に対して、本気で取り組み、それなりに拡大出来ないと申し訳ないという思いが有りました。」
「貴方は裕福な家庭で育ったのでしょ、どうして政治に興味を持ったの?」
「恵まれた環境で生まれ育ったからこそ、社会に対して自分の出来る事を考える様に、ということを父から言われて育ちましたので。」
「なるほどね。」
「自分の人脈も父や兄の人脈から派生したものです。」
「そっか、それにしても党の立ち上げを良く思いきれたものだわ。」
「そうでしょうか、自分はネットの環境が整っている今の状況で、誰も市民政党若葉の様な発想で党を立ち上げなかった事の方が不思議なくらいです。
積極的に投票出来る国政政党が一つも無くて、投票に行こうと呼びかけられても行く気にならないのなら、自分達で政党を立ち上げるしかないです。」
「う~ん、私達は地域政党を立ち上げたけど国政までは視野に入れてなかった、普通は考えられないと思うわよ。
でも、市民政党若葉が、国政を分析し党の意見を明白に示してくれた事で、地域政党が次に何をすれば良いのかが見えて来たのよね。
私達が市民政党若葉の所属となることで、他の地域へも影響を与える事になるでしょ。
それからね、私達が推薦して当選させた衆議院議員が一人、今は与党の議員だけど和馬くんの判断で彼女は所属政党を動くと思うわ。」
「えっ、自分の判断ですか?」
「貴方が実質的な党代表、党首なのよ。
被選挙権は持たないし党内での発言を控えてる、でも、番組では党の発起人という肩書で、しっかり自身の考えを示してるでしょ。
市民政党若葉が国会議員を擁する政党になる、そのタイミングは和馬くんに判断して欲しいのよ。」

それから、党内の求心力といった話を教えて頂いた。
市長は、表の代表が誰であれ、大きな判断には、党の顔として目立っている自分の意見が大きく反映されていると見せることで、多くの党員に納得して貰えるのだとも。
勿論党のことは考えていたが、その辺りの判断は党員選挙で選ばれた代表にお任せする流れだったので考えさせられることとなった。
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夏休み-05 [シトワイヤン-08]

俺達の旅行は七人の市長に会い、七つの市を番組で紹介することがメインだが、番組としては何の関係もない七つの市を繋ぐという企画も。
まずは伝統工芸の髪飾りを次の訪問先で販売という訳だ。

「芳樹先輩、直ぐに旅立つのですか?」
「ああ、苦労しつつも沢山売る姿を見せつけて、就職活動を有利にしたいからな。」
「何か企みでも?」
「個人に売るだけでなく、置いて貰えそうな店を探してアポイントメントは取って有るんだ、髪飾りメーカーとも相談してあってね。
明日は三店舗をピックアップ済み、番組の宣伝をしつつ営業活動をするのさ。」
「販売の話は聞いていましたが、そこまでとは思っていませんでした。」
「七人のリポーターの中では、トップということで日程的に有利だけど、髪飾りでは顧客が限られるだろ。
明日の中継では頑張らせて貰うから宜しくな。」
「明日は、理沙先輩とでしたね。」
「ああ、理沙の担当は比較的売り易いお菓子だから少し協力して貰うが、現地で髪飾りの似合う美女を見つけて出演して頂くつもりなんだ。」
「芳樹先輩なら簡単に見つけられそうですね。
でも、全く無関係な地方都市を結び付けられるかどうかの真面目な企画なのですが。」
「はは、俺も真面目に考えてるよ、今回はささやかな企画だけど、大都市圏に対抗する地方都市連合構想は面白いと思うんだ、市民政党若葉と同じ様に、始めは地味でも少しずつ拡大出来たら良いよな。
俺は、髪飾り販売を通して、その意味を訴えて行くつもりだよ。」
「頑張って下さい、スタジオで良い結果が聞けたら嬉しいです。」
「ああ、九月一日へ向けての助走でも有るからな。
あっ、トラックが来た、じゃあ、行商の旅に出るよ、また明日な。」
「はい、お気をつけて。」

芳樹先輩を見送った後は、のんびりと三人で夕食。

「和馬、地方都市連合構想を推し進めて行くにはもっと企画が必要よね。」
「ああ、でも、それぞれの都市にとって、どれだけのメリットを生み出せるのか考えると難しいよな。」
「芳樹先輩担当の髪飾り製造元は、社員に優しい会社だそうです。
売り上げが伸びれば、職場環境の良い会社で働く人を少し増やす事が出来る。
そんな地道な取り組みを市民政党若葉として応援。
ささやか過ぎる取り組みでも積み重ねることが大切だと思います。」
「始めから大きな成功を目指すのでなく、まずは地道にということか…、小さな企画なら番組でも、今までは地方の話題が少なかったが、今回の旅行を通して地方局と俺達の繋がりを強くして…。
梅子姉さんはマンネリを嫌ってるよな。」
「ふと気づいたら、地方の経済にささやかながらも貢献してるって企画を見つければ良いのですね。」
「芳樹先輩や理沙先輩が担当してる以外の商材を見つけられるかしら?」
「そこは、愛華のコミュニケーション能力に期待したい、まずは土産物売り場でリサーチかな。」

夕食後、軽い気持ちで立ち寄った土産物売り場、そこで自分達の知名度が上がってることを実感させられる。
その対応に苦慮はしたが、まあ、テレビで見るより良い男だと言われて悪い気はしない。
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夏休み-04 [シトワイヤン-08]

市長とのお茶会を終え、直ぐに地元の観光スポットへ向かう。
レギュラー番組の為だ、旅行中は中継での出演。
慌ただしく準備を済ませ、事前に収録してあった市の紹介VTR、市長と自分達とのシーンが流された後。

「梅子姉さん、このスイーツは市長さんのお勧めなんですよ~。」
「愛華、おいしそうね。」
「ふふ、美味しいです、本番が待ち切れなくて味見してしまいました、間違いないです。」
「じゃあ食レポは無しで良いのね。」
「はい、ゆっくり味わって食べます、カメラが有ると落ち着きません。」
「あんた、それで怒られないの?」
「ふふ、見た目だけで美味しさが伝わりますでしょ。」
愛華は笑顔で美味しさを表現。
「まあホントのところは、自分で食べてみないと分からないのよね、愛華と味の好みが同じだと限らないし。」
「え~、本当に美味しいですよ、でも市長さんにはスイーツに関してある苦悩が有るのです、梅子姉さん分かりますか~。」
「食べ過ぎて太ったとか?」
「いえいえ、ご本人はスマートな方です。」
「私に正解出来そうな質問なの?」
「梅子姉さんには無理で~す。」
「ちょっと~、愛華、旅気分で舞い上がってるでしょ、清香と交代しなさい。」
「は~い。」
「清香、愛華は大丈夫?」
「何か楽しいことが有ったみたいです。」
「一応聞いておくけど、市長さんの苦悩って何?」
「娘さんの為にと思ってスイーツを買って帰ると、凄く喜んで貰える日と怒られる日が有るとか、決して市長さんが悪い訳ではないのです。」
「娘さんが体重計を友にした日と、敵とした日の違いでしょ?」
「はい、さすが梅子姉さん、正解です、そして私達は市長さんの友となりまして、その証がこの髪飾りです。」
「似合ってるわよ、それは市長さんが選んで下さったの?」
「はい、今日の衣装に合わせて、でも和装洋装どちらにも合わせ易いです。」
「そうね、伝統工芸なのかしら?」
「はい、昔ながらの技術に新しい感性を取り入れて、市長曰く地味に人気が出てるそうです。」
「それが本当なのかどうか、私達は知る由もないのね…、あら嫌だ、私ったら和馬と仕事する様になって疑い深くなったかしら。」
「和馬は疑わずに、まとめて仕入れて次の訪問地で販売させて頂くことにしたのですよ。
販売担当は芳樹くん、明日は番組の宣伝をしながら売り歩きます。」
「芳樹か、康太が余り出ないから後を狙ってるのね、芳樹、皆が納得するだけ売る事が出来たら、その報告をスタジオでさせて上げるわよ。」
「あざ~っす。」
「もうその気になってる、まあ頑張ってね~。」

時間の関係で俺の出番は無くなったが、清香達が可愛かったので問題ない。
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夏休み-03 [シトワイヤン-08]

それから…。

「でね、市民政党若葉のシステムを活用すれば、市民からの不満に対処し易いと思うんだ。
勿論市民全員が党員という訳ではないが。」
「はい、すでにシステム上に存在する、この市の党支部は機能し始めています、市長がそれを上手く利用して下さったら嬉しいです。」
「まあ、文句を言って来る奴は確実にいるのだろうが、私も九月一日付けで、市民政党若葉の所属だと発表させて貰って構わないかな、そして君達に恥を掻かせないだけの市政をして行く、どうだ?」
「どうもこうも、自分には何の権限も有りません。」
「はは、党の代表は了解してくれてるのだが、私としては党の発起人にも了承して欲しいのだがね。」
「自分が了承しても価値は有りませんが、市長、私達の市民政党若葉を更に大きくしようという試み、応援させて下さい、宜しくお願いします。」
「では、横の繋がりの有る市長村長や議会関係者にも話を通して行くよ、党の支部が増えてもシステムは大丈夫かな?」
「はい、サーバーには、かなり余裕を持たせて有ります、スタッフも九月一日の市民政党若葉、リアル党本部開設に合わせて増強中です。」
「費用面は大丈夫なのか?」
「党員が増えたことで、サイトの広告収入が増えていますし、党のグッズ販売も好調ですので今の所は問題ないのですが、選挙となると全く見えてないです。
無い袖は振れないのですが、スポンサー企業にお願いするとか、今は無料の党費を任意でお願いするとか考えれば、多少のお金を集める事は可能だと思います。」
「ボランティアを頼ればそれほどの金額は必要ないよ、供託金を没収される様な無茶な立候補さえしなければね。」
「党としては供託金を用意すれば良いのでしょうか?」
「いや、基本的には支部任せで良いと思う、本部サイドは戦略的にどうしても当選させたい候補に絞れば良いと思うな、まあその辺りのことは今後の検討課題として出て来るだろう。」
「そうでしょうが、うちの社長は結構、気にしていまして。」
「はは、康太くんか、私達が目論んでる人数を当選させるのに必要なのは、金では無く党発起人会の面々が活躍する姿だと伝えてくれるかな。
うん、今日、君達と会えてその思いが強まったよ。
党の方向性は市民の求めてる所から外れていない、その上で党のイメージは君達が作り出している。
若者がもっと社会の中心になって行くべきだと思ってる人は少なくない。
君達に被選挙権権が無いのも、党の短い歴史が広く知られ始めていることもプラスに働くと思っているんだ。」
「自分達の番組は平日午後放送で、一般のサラリーマンが見られる時間帯では無いの微妙なのですが。」
「番組を録画して見ている人は私の周りに多くいるよ。
私も家内に編集して貰ったのを毎日見てる、影響力はしっかり有ると思うね。
君が一つの事柄を多方面から掘り下げる姿は、うちの子ども達の視野を広げる事に繋がってる、いや子どもだけでなく大人達にも良い影響を与えているんだ。」
「有難う御座います。」
「党のサイトでは今撮影している映像を編集し、市の紹介VTRをくっ付けて流してくれるのだろ。
他の市町村の先駆けとなり目立てるのは有難いよ。」

この市が旅行の一番目に選ばれたのは日程的な理由も有ったが、増え始めている市町村支部の中で一番積極的だったから。
それは市長が県知事選を目指しても、次の市長に有力な後継候補を立てられるという事情も有る。
市長は自分達のことを党のシンボルだと話して下さったが、この地で市民政党若葉から県知事、市長となって貰えたら、それは我々にとって、大きなシンボルとなるのだ。
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夏休み-02 [シトワイヤン-08]

市議会議員との懇談会では地方都市の抱える問題を中心に教えて頂いたが、皆さんは市民政党若葉への思いも熱く語って下さった。
懇談の後、市長との席へ向かう。

「市民団体が立ち上げた地域政党の所属では、国政に不満があっても大した声にならなかったのですね。」
「大きな政党でも地方の声が国政に届くかは疑問だけどな。」
「だから国政を変えるには、地方で市民政党若葉として実績をあげ、その勢いで国政政党にし…、ネット上では目にしてたけど、本物の議員さんから直にお話を聞かされて重みを感じたわ、党はリアルに動き始めているのね。」
「政権を握れる規模にしないと意味がないとも言われてしまったが、地方で議席を増やしていけば、いずれ国政も…、絶対無理とは言えないよな。」

市会議員達の熱い思いに触れ、自分の役割を見つめ直す。
勿論、国政までの道のりは長く険しいと理解しているが、可能性はゼロではない。
少し熱くなった俺達は、そのまま市長とのお茶会に望んだ。

「よく来てくれたね、若い君達が発起人となって立ち上げてくれた市民政党は素敵に拡大している、党員の一人として嬉しいよ。」
「有難う御座います、この市はどこの地方都市もが抱える問題は有りながらも、市の財政は健全だそうで、やはり市長のお力による所が大きいのでしょうね。」
「まあ、頑固なお年寄りに選挙で勝っての市政だからな。」
「所謂箱物行政だったのですね。」
「ああ、無駄に建てられた物をどう活かして行くかで苦労させられたよ。
まあ、彼のおかげで快適な市庁舎な訳だが。
ここもね、就任した当初は人の配置のアンバランスさに愕然としたんだ、のんびりお茶を飲みながら作業し、定時に上がる職員がいるかと思えば、時間に追われ残業をせざるを得ない職員がいたりとか。
その改革には反発が有ってね、まあ、のんびり作業を既得権益と捉えている人もいたんだよ。」
「かなりの大ナタを振るわれたのですか?」
「職務命令の形で普通に働く事を要求したのだが、裁判を起こす輩もいてね、民営化を進める気持ちが分かったよ。」

それから市政のことを色々教えて頂く、市長から腹黒さは微塵も感じられなかった。
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夏休み-01 [シトワイヤン-08]

市民政党若葉はリアルな政治団体を模索し始めている。
党の中核を担うのは研究者。
大学関係者が中心になって作り上げた政党は、国会で審議される議案一つ一つに対し、賛成反対の意志表示をするだけでなく対案を示して来た。
それと並行して地方自治に関しても。
国政の場に議員を送り込むのは難しいが、地方なら可能、すでに市議会議員も党員になり発言を始めている。
彼らが所属を市民政党若葉と表明すれば、ネット上だけの政治団体がリアルな団体となり、少しずつ影響力を増して行くと考え、その為の準備作業が進められている。
そんな状況下、俺達は夏休みを利用して旅に出る事となった。

「和馬、今日お会いする議員達は、市議会を市民政党若葉対国政政党所属議員という構図にしようとしているみたいね。」
「ああ、熱心な党員が多いことの裏に、というか、もうそこまで話が進んでいるんだよな、流石は市民団体の行動力と言ったところか。」
「すでに、所属を市民政党若葉に変えると決断なされたのでしょうか?」
「と、思うよ、あの市での党員増加率の高さは彼らの本気度の表れ、九月一日の発表までに、インパクトの有る人数が市民政党若葉の所属議員になると踏んでみえるのだろう。」
「他の地域でも話が進んでいるものね、大きくまとまった方が選挙でも有利になる、それだけの魅力を市民政党に感じて頂けているのなら嬉しいわね。」
「でも、なんかの間違いで議員になってしまった様な人までウエルカムとは行きません、審査は厳しくしてるのでしょうが。」
「その市に住む党員が情報収集をしてくれてるのだから、それを信じるしかないな。」

「あっ、海が見える。」
「おお、旅って気分になるね、留守番の康太を羨ましがらせる第一弾は車窓から見える海の画像にするか?」
「インパクトが弱いです。」
「そうよ、今日の生中継で私達が仕事を忘れて楽しんでる所を見せつけるのが一番でしょ。」
「康太の場合は裏を知ってるからな、楽しそうにしてるだけでは見抜かれるぞ。」
「ふふ、それは大丈夫でしょう、愛華はすでに浮かれ気味です。」
「そういう清香だって。」
「和馬はどうなの?」
「梅子姉さんに突っ込まれ無い様クールに行くか、敢えて突っ込み要素を差し上げるかが問題だな。」
「結局は出たとこ勝負なのね。」
「まあな、その前の市長さんとの対談に左右されそうだけど。」
「そうよね、市長さんのイメージが悪かったら、市の名所を紹介する気力が萎えるかも、頂いてるデータだけでは分からないものね。」
「七人の市長さんと出会う旅と題してるのですから、皆さん他の市長に負けない様、良い印象をと考えてみえますよ。」
「でもさ、腹黒さって滲み出て来るものじゃないか。」
「それはそれで楽しみです。」
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