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三学期-343 [花鈴-35]

 開店までの準備に随分時間は掛かったが私達の店はオープンの日を迎えた。
 目立つ建物に目立つ看板やのぼり、大学生が手伝ってくれ色々宣伝した効果か、オープン時間前から人が集まって来ている。

「姫、そろそろテレビ局の取材一本目をお願いします。」
「オープン前の店内を案内するのね、緊張するわ。」
「小学五年生が多少のミスをした所で、それは可愛らしいこと、細かい事を気にしてたら大物には成れないとは、姫に教えられたことですよ。
 姫は大物なのですから気楽に行きましょう。」
「そうね、誰かさんの受け売りに過ぎないのだけど、開き直って店の宣伝をしないとね。
 藤井さん、カンペ宜しくお願いします。」
「自分がカンペを出さなかったら何の問題も無いと思って下さい。
 テレビ局サイドからのカンペは気に入らなかった無視して構いません。」
「打ち合わせ通りにか…、それで面白くなるのかどうかは結果を見てみないとだけど、藤井さんはちゃんと私の見える所に居て下さいよ。」
「はは、出来れば自分の事を無視して頂けたらと思っているのですが。」
「そこまでマイペースで行ける様に努力はしてみるけど、さすがにね。」

 リポーターが店の説明を始めたから私の出番はもう直ぐ…。

「それでは、ここからは過疎地の再生を目指して新たに建てられたこの店を運営する株式会社花鈴、その会長である纐纈花鈴さんにお話を伺って行きたいと思います。
 花鈴さん、おはよう御座います。」
「おはよう御座います。」
「花鈴さんは小学五年生なのですよね?」
「はい、もう直ぐ六年生です。」
「小学生で会社の会長、大変なことは無いのですか?」
「会社は基本的に社長が回していますので、そこまで大変では無いです。
 会長の役目ってご存じですか?」
「えっ?
 株式会社の会長ですか…、考えたこと無かったです…。」

 この言葉を頂いて気が楽になった、作戦として考えていたことだが、自分は相手が誰で有れ教える立場になれば自分らしさを発揮出来るのだ。
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