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03 都市計画 [KING-05]

 城の子からテレビを通しての発表は一方的な布告とも言える。
 この世界の人達は受け入れるしかない。
 今のままが良いと思ってはいても、孫やひ孫の代を考えたら。
 マリアから借りてる宇宙船内の土地から、与えられる大地への移住と言われては。
 私達は戸惑い気味の人達に対して今後のスケジュール案を提示した。
 その柱は都市開発計画作成のタイムスケジュール。
 それは箱舟船団が惑星周回軌道に入って直ぐ、住宅などの建設作業を始めるとして、そこから逆算し作成した。 
 人口四千人にも満たない町からのスタートだが、城の子は、その拡大を意識して広大な土地を用意する。
 無計画に建設作業を進める訳には行かない。
 後から、住宅や農地、牧場などの配置を変えていては効率が悪い。

「ロック、都市計画作成チームはどうだった?」
「取り敢えずと言う感じで、各自が描いた図面を持ち寄って検討を始めていたよ。
 こちらからは、和の国と繋ぐ大型ゲートを一つ、町に設置とだけ話して、後は尊と翔が質問に答えていた。」
「どんな質問が?」
「やはり電気が一番気になるみたいだ、後は上下水道。」
「ここではマリアさまのテクノロジーに頼っていて、自給自足の範囲外だものね。
 で、どうなるの?」
「初期段階は城の子が必要なものを揃えるが、尊は少しずつ皆さんの技術に置き換えて行きましょうと話していたよ。
 町は一筋の川が流れる高い山の麓の平地、山が有る事で水の安定供給が出来、その水を利用した水力発電を考えている。
 生活廃水は海の栄養源になるそうで、下水管は用意するが、ごみを取り除くだけで殆どそのまま海へ流す。
 そうしないと、水産資源を増やせないそうだ。」
「へ~、そういった事もマリアさまから学んでいるのかな?」
「いや、データベースからの知識だよ。」
「ねえキング、私達が使って来たデータベースは、惑星でも使えるの?」
「少々手間だが、プリントアウトして図書館で閲覧可能となる。
 どこまでの技術を惑星で使える様にするのかはマリアと交渉になるが、自給自足のレベルを上げる事にはなっていて、今まで使っていたマリア達のテクノロジーの内代替手段の有る物は、移住の初期段階を終えた時点で、そちらに切り替えて行く。」
「馬車とか馬が活躍するのね。
 テレビ電話やテレビはどうなるのかな?」
「色々微妙でね、子ども達はここと同程度にしたいと考えているのだけど、マリアがね。
 文化レベルを江戸時代にまで戻す気は無い様だが、生活レベルを落とした人間がどう動くかに興味が有るそうで。
 彼女自身、ただの傍観者から研究者に変化しつつ有ると感じていて、それも謎の存在の影響かも知れないと話していたよ。
 そもそも、彼女達は、箱舟プロジェクトなんてことを考える様な存在では無かったそうでね。」
「人類が絶滅しない様に、謎の存在がマリアさま達を利用したのかしら?」
「かも知れない、そしてマリアさま達は傍観者で無くなりつつある、だがメインの作業は城の子任せだよな。」
「そうよね、でも…、マリアさまは私達を超越した存在だけど、傍観者に未来は有ったのかしら?」
「う~ん、そういう未来とかの感覚を持ち合わせているのかは疑問だわ、ねえキング、マリアさまは城の子が大好きなのよね?」
「それだけは間違いないと感じている。」
「人類滅亡の危機を迎えて、大きな出会いが有り、マリアさま達が変化し始め、城の子の存在が更にそれを、私はキングと子ども達を通してしかマリアさまを知らないのだけど、随分変わった気がするの。」
「ああ、確かに変わったと思う、子ども達と話す時は勿論、子ども等の話を私としている時もな。
 マリア達は子どもという存在を持っていなかったのかも知れない。
 例えは悪いが、私達が子猫や子犬を可愛いと感じる、それ以上に彼女が城の子の事を想っていると感じられる事が多々有った。」
「そうなると人々の生活レベルがどうなるのかは、城の子次第と言う事なのね。」
「ふふ、翔がね、尊はマリアさまの心を動かすのが得意なんだ、とか話してたわよ。」
「ただ、尊も自立の意味を考えているからな、三之助から教えられたバランス、新たな大地を物理的にも精神的にもバランスの取れた状態にして行きたいと考えているよ。」
「そっか、さすがキングの息子だなぁ~。」
「って、あなたの子でしょ、麗子。」
「私は、美味しい食材が手に入れば何とかなる、ぐらいしか考えてないから。」
「はは、何とかなるか…、今までは何とかして来たな。」
「麗子の料理も、海や城の存在と同じぐらい大きな存在だったのよね。
 美味しい食事と楽しい仲間がいれば、少しぐらいの不便は何とかなるのかも。」
「確かに重化学工業は必要ないのかもな。」
「人口が増えた時、第二世代以降がどう考えるかだ、データベースを書籍化して知識は残すが、戦争に勝つために科学が発達した側面があるだろ、平和なまま科学的な水準が低くても良いと考えるのか…、宇宙を目指すのかどうかも、今から考える必要は無いとは思うが、教育の方向性という課題は大きいぞ。
 当分の間、競争社会にはならないと思うが、向上心、競い合う心が成長に繋がるだろ。」
「そう言った事で意見が分かれた方が面白いと思うわ。
 多様な価値観を持つ人達が意見を出し合って、でも、互いに尊重し合える環境は整えて置きたいかしら。」
「そうだな、地球がどうなったかだけは第二世代にしっかり伝え、バランスの取れた社会を目指す事を教育の柱に据えるとか…、まあ、答えの出ないまま試行錯誤というのも有りだろう。」
「ふふ、どう考えても、山ほどの試行錯誤をして行く事になるのでしょうね、人類が地球でして来た以上に。」
「生活が安定していれば、道を誤る事は無いと思うのだけど…。
 キング、子ども達の計画は先々まで決まっているの?」
「しばらくは、惑星探査に出かけるとしても、目的地の第四惑星からは比較的近い所になる。
 人類がどれだけ人口を増やしても大丈夫な様に、別の恒星系にも人の住める惑星を確保して行くが、人が住むには不向きな、第三、第五惑星にドーム型のコロニーを建設し資源の確保を考えている。
 当分の間、第四惑星の人類をマリアと共に見守り続けながら、実験や研究をして行くことになりそうだ。
 到着後改装される和の国が遠くへ旅に出るのは先の事、子ども達がワクワクする研究対象は沢山有るだろうからな。」
「私達はそれに合わせれば良いのね。」
「ああ、ただ、この八人も城の子同様、少しずつ人類とは距離を置いて行く事を考えなくてならないだろう。」
「微妙な存在だからな、今のままだと、いずれ第二世代に肉体年齢的に追い越されるだろうが、そんな頃まで付きっ切りでいたら良くないと思う、第二世代の自立に対してマイナスにしかならないだろ。」
「そうね、マリアさまの神格化とは話が違うものね。
 どこかのタイミングで私達の事をはっきりさせるべきだわ。」
「この先、様々なイベントが有るのだから、そのどこかで…、でも…、どんな存在になるのか、まさに微妙だな。」

 地球では、大きな貧富の差が有ったが、皆同じ人間だった。
 だが、この世界には魔法使いの如き城の子がいて、その親がいる。
 また、マリア達管理者の存在は第一世代全員が知っていて、更には未知なる存在も。
 人々はすでに城の八人を特別な存在と考えてくれてはいるが、それは和の国の王家や貴族階級の様な捉え方。
 この先、第二世代が成長した社会は、私達の指導によってではなく彼等自身の手によらなければならない。
 その時、私達を表す言葉は、なかなか思い浮かばなかった。
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