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万里-06 [シトワイヤン-19]

「万里、愛華さんとこのパーティー、どうだった?」
「お姉ちゃんのテストと重なったのが残念だったわ、とても楽しかったのよ。」
「ほとんど英語だったのでしょ?」
「ええ、日本じゃないみたいでね、でも私には、ゆっくり話して下さったから、そんなに聞き返さなくて済んだの、でね、私達が普通に使ってる、意識改革とか価値観って言葉を、英語でって考えた事がなかったことに気付いたわ。」
「ふ~ん、そういう単語が交じる会話をしたんだ。」
「和馬さんが手伝って下さって、知らなかった単語を沢山教えて頂いたの。
お姉ちゃん、アメリカと日本は国の成り立ちも大きく違うこともあって、市民としての意識も大きく違うでしょ。」
「歴史を考えたらそうでしょうね、色々教えて頂いたのかな?」
「うん、でも今まで日本のことを中心に学習して来たから、把握し切れてはいないのだけどね。」
「欲張っちゃだめよ、世の中すべてのことを一人の人が理解するなんて不可能なんだから。」
「そうよね、ねえ、お姉ちゃんはGod Bless Americaってアメリカの愛国歌知ってた?」
「え~っと、Jackie Evanchoが歌ってるのを聴いたことが有るわよ、パーティーで聴いたの?」
「なんか話の流れで、皆さん歌い始めたのよ。
愛国歌なんて日本にはないでしょ、それをみんなで歌えるなんて、少し羨ましい気がしたわ。」
「そうね、そういう文化は日本にないし、何時までも敗戦国というのを引きずっている人がいるみたいで、本間さんとは日本をもっと日本人が愛せる国にして日本人が胸を張れる、いえ、日本国籍の人が胸を張れる国にしたいと話してるのよ。」
「そっか、色々考えてしまうな。」
「で、万里はGod Bless Americaを歌えるぐらいに覚えたの?」
「まあね。」
「聴かせてよ。」
「うん、もう少し練習してからね、パーティーの時に紹介して頂いた先生にはネットを通して英語の歌を教えて頂くことになったの。」
「あっ、愛華さんはそれを見越して私達にハイスペックなパソコンを用意して下さったのか。」
「違うわよ、私達をさりげなくこき使う為だわ、でもずるいのよね、働くなら好きな人と働きたいなんて、清香さんや和馬さんとも一緒だから喜んで働きたくなってしまうじゃない。」
「素敵な人の周りには素敵な人が集まる、その一人になってるのだから良いでしょ、私は本間さんにこき使われても平気だな。」
「ふふ、こき使うお人じゃないし、お姉ちゃんの胃袋に満足感を与えて下さるからでしょ。」
「まあ失礼な、胃袋ではなく、舌を満足させて下さると言って下さらないかしら。」
「テスト明けの会合では何をご馳走して頂いたの?」
「それはね…、ひ・み・つ・とっても美味しかったから、万里も本間さんにこき使われなさい。」
「う~ん、ねえ、こき使われるというより、私はいるだけで良いって言われることが多いのだけど、お姉ちゃんはどう思う?」
「そうね、万里といるだけで幸せな気持ちになるのは私だけではないのよ。
本間さんは、万里を見て万里と認識した瞬間から、脳内物質が変化して幸福感をもたらす、という仮説を立ててるの、ねえ初めて会った人達の反応はどうだった?」
「うん、私のこと何も知らなかったと思うのだけど、大袈裟なの、え~っと、世界で最も綺麗で知的な子どもの一人なんだって。」
「大袈裟じゃない普通の感想よ、まあ、アメリカ人にも万里の良さが伝わったという事ね。」
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