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岩崎高校生会議-32 [高校生会議-20]

しばらく前から私のお城では高校生の実習アルバイトを受け入れている。
広い庭園と映画やドラマ撮影の舞台となった城の一部を公開している事で観光スポットとなり、スタッフが不足気味になった事も有るが、高校生達との繋がりを強くしておきたいとの思惑も有る。
高校生は岩崎高校生会議の原点でも有るからだ。
城は岩崎王国のシンボルという事情が有るので、岩崎高校生会議のスタッフは特に優秀な生徒を送り込んでくれている。
私としてはそんな彼等と直接話しをしたかったのだが、諸事情により彼等との対話は聡美に委ねる事になった。

「あなた達、どう、仕事は慣れた?」
「はい、先輩方の記録を参考にさせて頂いて頑張っています。」
「聡美さん、システムのワークシートがすごく分かり易くて…、さすがですね、同じシステムでも高校生会議のとは全然違います、自分も遥香システム運用管理者を目指していて、無駄なく、漏れなくと教えられていますが…、自分が良く分かって無かった、という事が分かりました。」
「はは、そうなの、でもね、ここでは緊張感も半端ないのよ、遥香さまがご覧になられる事が有りますからね。」
「えっ、遥香さまは怖い方なのですか?」
「まさか、でもね、遥香さまからの指示や提案が多くなると申し訳ないでしょ、お手を煩わせては…。
そうならない様にスタッフが動いているのだけど、その上を行く指示や提案がね…。」
「聡美さん始め、遥香さまの周りには優秀なスタッフが沢山いると聞いてますが。」
「ええ、手足となって働いているわよ、世界規模で動いてるから大勢ね。
その優秀な筈のスタッフが三人がかりで長時間かけて練り上げた完成間近の企画が、システム上でチェックして下さってる遥香さまの目に留まると…、どうなると思う?」
「え~、ボツになるとかですか?」
「あなた達も遥香システムを使ってるから、当然作業途中でチェックが入ってる事は分かるでしょ。」
「はい。」
「そんな練りに練った様な企画に対して修正案を出されるのだけれど、それが的確なのよ、三人がかりで長時間掛けてたのは何、ってレベルでね。」
「遥香さまから駄目出しですか?」
「それだと、作業して来たスタッフのダメージが大きいでしょ。
だから側近メンバーが大勢で検討している事にして少しずつ修正案を出して行くの、遥香さまの指示に従ってね。
これが結構気を遣うのよ。」
「大変そうですね、でも聡美さんクラスの側近だと、そんな事はないのですよね?」
「勿論よ、遥香さまから振られる作業が中心だから報告は欠かせない、報告時に指示やヒントを頂けるので修正が楽なの。
それと頼れる部下が多いから、受けた仕事は一旦全部丸投げしてるしね。
あっ、管理職の仕事って把握出来てる?」
「自分は今、企業内の役割分担について学んでいます、一旦という事は、その後管理監督をされているという事ですね。」
「そうよ、君はリーダー候補なのかな?」
「えっ、えっと…。」
「聡美さん、彼はこう見えて優秀なのですよ。」
「でも、今はリーダー候補ではない様ね。」
「えっ?」
「岩崎高校生会議は世界に広がっている、勿論岩崎王国もね。
私の部下は世界中にいるのよ、遥香システムのお陰で一か所に集める必要が無いの。
当然沢山のリーダーが存在しているわ、リーダー候補も。
さあ、この環境で、あなた達が優秀だと思ってる彼がリーダーに成れると思う?
リーダーに必要な資質を考えてみてくれないかな。」
「太一はリーダーというより裏方向きなのかも。」
「そうだな、リーダー候補かと聞かれて、そうですと答えられない人がリーダーに成れる状況とは思えないです。」
「ねえ、将来、どんな立場で自分の力を発揮出来るか自分の可能性は考えてるの?」
「自分は、まだまだおぼろげです…、聡美さんは高校卒業後すぐに遥香さまの側近になられたと聞いていますが、大卒ではない高卒のハンデは有りませんでしたか?」
「全然なかったわよ、必要な事は働きながら学べば良いし、遥香さまの下で働かさせて頂いているという事は、すごく高度な学習をしているのと同じ事なの。
ハイレベルな大学の学生と話す事が有るのだけど、専門的な分野でもたまに教えてあげるぐらい。
私の場合学力が無くて進学しなかったのでは無くて、岩崎で目いっぱい働くのなら大学へ行くのは無駄だと思ったからなのよ。
遥香さまのお陰で、今は思いっきり正解だったと思えているわ。」
「私達が遥香さまの側近に成れるチャンスは有りますか?」
「多分無理ね、希望者に体験して貰う事が有るのだけど、皆さん緊張しすぎて何も出来なくなるの。
私がお仕えし始めた頃の遥香さまは美しくて聡明な姫、でも今は更に美しくなられてオーラが半端なくて…、女神さまの側近になるだけの覚悟はあるかしら?」
「写真や映像だと、多少細工出来るのかと思っていましたが…。」
「へ~そうなの、もう直ぐいらっしゃるから、色々話して差し上げてくれるかな。
高校生会議の様子とか知りたがってみえましたから。」
「えっ、本当ですか、お会いしたかったのです、今度の文化祭のお話とかさせて頂きますよ。」

私は自分の仕事を終え、聡美が高校生達と話している部屋へ。
入室してにっこり微笑むと…。
固まる高校生達。
しばらくすると、ぎこちなく跪く者、土下座をする者、手を組んで泣き出す者…。
誰とも話せそうにない。
なぜこうなってしまったのか分からないが、最近人間扱いされなくなってきた。
気を失いかけている子がいるので退室することになる。
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