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みどりの風-12 [高校生会議-12]

六月のある日、思いがけないニュースが飛び込んで来た。

「みんな、ちょっと聞いて。」
「遥香さまどうかされましたか?」
「岩崎本部から連絡が入って、本物の王様が岩崎王国に興味を持たれたそうなの、王国同士交流を持ちたいと、私達の事はきちんと調べて下さってバーチャル王国と知った上での事よ、キサワイ王国なんだけど、アジアの小国の中では比較的治安も良いみたい。
データは桜が整理してくれている中に有るわ。」
「それで、岩崎社長は?」
「私が反対でなければ前向きに行きたいそうよ、余計な支出はお爺さまのサイフで何とかすると。」
「基本的には悪くない事ですが、想定していませんでした…、互いにメリットは有りそうですね…。」
「問題は皇室との関係か…、いや単純にうちと相手国が友好的な関係だというだけなら、ややこしくないのかな。」
「担当を決めてまずは予備調査だな。」
「しかし、担当と言っても、ある程度の肩書は必要だろ、うちにとっては大きなチャンスになる、良好な関係を築きたいぞ。」
「そうね、ひとまず情報収集は…、でも…、桜が滞在している国から近いとはいえ…。」
「一旦外務大臣候補に振ってみませんか、まずは王国の外交担当大臣の様な肩書を付けて。」
「彼は今、東京?」
「はい、ですが遥香さまの判断一つ、連絡を取ればすぐ動いてくれると思います。」
「では、お願いして下さい…、友好条約とか締結してしまいましょうか。」
「いけると思います、資料によればアサリダ国王はアメリカの名門大学を卒業され、自国の改革に熱心な方の様です。
岩崎の企業展開に目を付けられたのは自然な流れでしょう。」
「前野さん、今、キサワイ王国との関係構築に人員を回しても大丈夫ですか?」
「はい、これは王国の拡大に繋がる事、向こうの支社も増強し…、大使館を置く方向で行きましょう。」
「聡美、桜には親善大使として訪問して貰いましょうか。」
「はい、日程の変更を打診しておきます。
遥香さま、先方には大学生の王子さまがお見えです、遥香さま狙いかも知れませんよ。」
「どう? イケメン?」
「画像とデータは資料ページの…。」
データはそれなりに量が有る、その中から聡美に教えられたページへ…。
「なかなかね、アメリカの名門大学に留学中か…、聡美のタイプ?」
「悪くないですね、公用語は英語、もう少し英会話に慣れておかねばです。」
「権力者は美人を妻に迎える率が高いから、美形の血脈になるのかもね。」
「王室に対する国民の忠誠心は悪くない、でも貧民もいるみたいです。」
「王室の資産は…、それなりにため込んでるわね、聡美、玉の輿狙ってみる。」
「私では相手にされませんよ。」
「私の従妹で側近を務めているという設定にしましょう、それなら王子さまの目に留まるかも。」
「どうして私に拘るのですか?」
「王家に嫁ぎ、その資産で岩崎王国の支社を一気に拡大させるなんて素敵でしょ、政略結婚ぽくて。」
「先方は遥香さま狙いですって。」
「え~、聡美は私を政略結婚の道具にしようと言うの?」
「私なら良いのですか~、でも、どんな男性なのか会ってみたいですね、王子さまってどんな感じなのかしら。」
「この国と国交を結ぶ事に関してはどう思う。」
「この資料通りであれば岩崎王国にとって大きなチャンスで有る事は間違いないです。
この国を介して他国との繋がりを強める事が出来るかも知れません、別の王族とも交流出来れば、イベント毎の記念グッズが世界規模で売れる可能性が有ります。
出費は増えるでしょうが、マーケットの拡大で軽くカバー出来ると思います。」
「う~ん、私の居城が生きて来るのかしら、お父さまもお母さまもこう言った事を想定して私の居城建設を考えておられたのかしら。」
「そうですね、来日して下さった場合、岩崎王国として王族をもてなす施設は有りませんものね。
これからの両国間交渉には時間が掛かるでしょうから、お城の完成は充分間に合うと思います。」
「でも、今までに経験の無い事だから、何処に落とし穴が有るか分からないのよね。」
「はい、色々シュミレーションしてみる様、指示を出しますが…、どの程度の極秘扱いすれば良いのか分かりません。」
「通常の守秘義務で構わないでしょう、先方は話題性を求めている訳ですから、隠さないと思います、交渉に入ったという、それだけでも観光面でメリットが有ります、うちも同様、みどりの風にも良い影響が有ると思います。」
「あっ、確かに…、先方は今頃、マスコミにリークしているかも知れませんね。」
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