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66-作戦開始 [キング-07]

時間を掛けて練り上げた作戦計画が実行される当日、各国から二百人近くの大人が和の国、国際ゲート前に集まった。
向こうの子ども達は全員ゲート近くに集まって貰い、五歳児が乳児の面倒を見る事になっている。
大人達は人種ごとに集まって貰っているが、人と人は間を置くように指示がしてある。
予定の配置になったとの連絡を受けカウントダウン、まずは尊と望がゲートをくぐり、子ども達を招く。
画面を通して顔見知りとなっていた子ども達は、二人が抱えていたぬいぐるみを見て嬉しそうに駆け寄り、そのまま二人と一緒にゲートを越えて和の国へ。
子ども達の考えた作戦が成功したという事だ。
ここからは時間との勝負とも言える。
精神状態が不安定になっていくであろう大人達の状況を一人一人見極めなくてはならない。
三郎を先頭に百人を越す大人達がゲートをくぐり、向こうの国民達に声を掛けて行く。
画面越しに見知った人と改めて挨拶を始めて十分もしない内に彼等に異変が起き始める。
ここまでは想定内だ。
こちらからの訪問者は観察者となる。
その一人が異変を感じた者に声を掛けると、暴力的衝動が涌き始めたと言う。
促されて自分から居住コロニーへ入って行った。
同様に二名が居住コロニーへ。
突然暴れ始めたのは四名、近くに屈強な男性を配置して有ったおかげで用意していた檻へ入れる事に成功、彼等の老化が進んでいた事も幸いした。
他の大人達は、大人しく静かに苦しんでいる。
中には過去の犯罪歴を語り始める者も、人に聞いて貰う事で苦しみを和らげたいのかもしれない。
過去に犯罪を犯したからと言ってすべての人が危険人物だとは言えないだろう。
この世界で人を殺せば自分も死ぬ事になるとは時間を掛けて説明してある。
問題は、蘇った記憶が死にたくなる様なもので有ったら、誰かを道ずれにしてと考えたら。
細心の注意を払いつつ対応している。

「そろそろ、お茶かしら、それともお食事かな。」
「麗子の、その呑気さには救われるよ、翔、三郎に連絡してお茶か食事か聞いてくれるか。」
「はい。」
「愛は尊達と連絡を取って、子ども達の今の様子を聞いてくれるか。」
「はい、彼等は今の所落ち着いてる、乳児達も含めて問題無いと連絡が入った所です。」
「ならば、その情報を三郎に伝えてくれるか。」
「はい、心配してるだろうと思って連絡しておきました。」
「有難う、他にしてくれた事は?」
「尊からの指示で、今の事は各国のリーダー達へも伝えました、彼等からはこちらの状況を聞かれましたが、まだ成功かどうかの判断を下す段階になってないと話しておきました。
向こうのリーダー達へも、彼らは苦しそうでしたが、よろしく頼むとの事でした。」
「ふむ、愛、翔、この作戦は成功するかな。」
「目先の危険分子七人は抑えましたが、他の人の危険性が分からなくて不安です。
ほんとは皆が怖い思いをしない様に記憶の蘇りが終わるまでゲートを閉ざしておいて欲しいです、でも、ここでどれだけあの人達を尊重し手助けできるかによって、今後の友好関係は違う物になります、今は誰も傷つかない事を願うのみです。」

話の途中、翔は明らかに愛の不安に気を使った。
二人の緊張がこちらにも伝わって来る。
本当なら、まだ無邪気に遊ぶのが普通な年頃、この一か月の間で急速に成長したとはいえ、まだ七歳前後の子ども達、酷な仕事をさせている事に気が引けるが、彼等はこの世界のトップリーダーになる宿命を受け入れてくれた。
私の役目は彼等を守り育てる事、この世界の平和を願いつつ。
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