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卒業旅行-19 [チーム桜-06]

さいたま市では状況の変化により過密スケジュールになりかけたが、関東支社長候補長江の指示により、すぐ安藤達に余裕の有る日程に戻された。

「すごいよな、長江さんの指示は的確だし、早いし、こちらから訪問させて頂く予定を全部キャンセルして…、言わば安藤社長に会いたければそちらから来いって事だろ。」
「ほぼお願いされる立場だから、ぜんぜん問題ないんだってさ。」
「同じ事を安藤社長が指示を出したらイメージダウンになりかねないと思わないか、そこを理由を説明して新副社長からだから、むしろ良い印象を持って頂けたかもな。」
「急遽押さえた会場も地元企業に働きかけて決まったそうだよ、会場費向こう持ちで。」
「地元放送局の取材もそこに組み込んだから、関東支社関連の発表はそこでするのかな。」
「イベントまで隠していても意味ないだろ。」
「そうよね、でも良かった、安藤社長達旅行終盤で疲れてみえるだろうから、ちょっと休める時間が出来て嬉しいわ。」
「だよな。」

さいたま市内の寿司屋。

「長江さん助かりました、自分達では全然調整出来なくて。」
「それは仕方ないよ、九州支社の発表から一気に問い合わせが増えたそうだからな、ここはイベントが計画されていたからか特に多いそうでね、俺の予測をはるかに上回る勢いだよ。」
「長江さんは関東支社長の話を安藤社長とされていたのですか?」
「いや、具体的にはなかった、ただ東濃支社長は短期間でという指示は受けていたから、次のステップへ向けての準備はして来た。」
「副社長就任は一度断られたのですよね。」
「ちょっと東濃で人材育成に力を入れたかったからね、副社長になると色々余計な仕事が増えそうだったから。」
「関東支社長って結構大変そうですが。」
「まあ、東濃支社から三人に来て貰う話はして有るからね、県単位の支社長候補としてだけど。」
「えっ、それで東濃支社は大丈夫なんですか?」
「東濃支社の社員全員、支社長になれる様に教育して来たからね、山上人事担当常務とも相談しながら。」
「あっ、山上部長も昇格ですか?」
「まだ正式に辞令は出てないけど、桜根の特性を考えての彼の働きは大きいからね。」
「安藤社長の強気の裏には色々有るのですね。」
「だが人材不足は否めない、佐紀ちゃんから提案のあった、桜根傘下入り希望企業から事前研修受け入れは、若干微妙な部分も有るが関東支社ではやらざるを得ないだろうね。」
「正式契約前だから微妙なのですか?」
「ああ、今までは傘下入り希望を全部受け入れてきたが、今後は分からないからね。」
「そうですか…。」
「君達、四月からは?」
「桜根本社で研修の予定です。」
「今まではチーム桜?」
「ええ、桜根でも実習を経験させて貰いました。」
「関東支社で研修ってどうかな?」
「自分は新人ですからどこでも大丈夫です。」
「私もです、実績ナンバーワンの長江さんの元で学べたらきっと自分のプラスになると思いますし。」
「ちょっと安藤社長とも相談してみるよ、名古屋の状況が多少なりとも分かってる人が多い方が楽だし、本社は本社で研修の余裕がなくなって来てるからね。
あっ、そうそう私は実績ナンバーワンとか言われてるけど、実際は他業務をこなしながら大きな実績を上げて来た人もいるし、バックを支えてくれた社員、それと安藤社長抜きでは大きな結果を残せなかったと思ってるんだ、そこだけは忘れないでくれな。」
「はい…、でも桜根社員の方々、皆さん安藤社長を尊敬しておられる様な話をされますが…。」
「彼は器が違うんだよ、社長になるべくしてなったというか、まあ君達もその内分かるよ。」
「はい…。」
「さ、そろそろ行くか。」
「はい。」

「これから何社か回るけど、しっかり観察しろよ、どこに問題が有るのか、どこをどう改善出来るか今日の分は明日までにレポートを出してくれな、ただし二人で相談するんじゃなくて、どちらが良いレポートを提出出来るか競って欲しい。」
「はい、がんばります、実践的研修なんですね。」
「緊張するけど、いよいよ桜根社員になるんだって気が…、長江さんとの調整役にして貰った時も嬉しかったですが。」
「はは、安藤社長お勧めの二人、その力量しっかり見極めさせて貰うよ。」
「えっ? 安藤社長が?」
「どうだ、ちょっとは緊張感が増したか?」
「自分の事なんて…、安藤社長、全然知らないと思っていました。」
「君らは安藤社長の事を、それほど知っちゃいないが、彼は君達の事をそれなりに分かっていると感じたけどな、新人二人ぐらい俺に預けないかと話したら即答だったから。」
「ほ、ほんとですか?」
「ああ、君達に力がなかったら他の部署に行って貰って、社長にはもっとましなのを推薦して下さいとお願いするからね。」
「う~ん、でも長江さんの作り話の様な気も…。」
「私も、実績がないですから。」
「ほほ~、なる程な、君達は安藤社長が推すだけの冷静さを持ち合わせているんだね、実際桜根傘下入り希望企業と相対する時には欠かせない素質なんだ。」
「どういう事ですか?」
「俺がどうやって実績を上げて来たと思う?」
「それは、桜根傘下入り希望企業の事を思って親身になって。」
「はは逆だよ俺は有る意味突き放して来たんだ、まあ表現は柔らかくだけどな、やばくなりつつ有る企業なんて歪だらけさ、そんなの外からちょっと話したくらいで変わる訳ないんだ。
だから、桜根がチャンスをあげる、でも社風から変えて行かなくては結果は出ませんよと説いてきた、もちろん桜根のイメージが悪くならない様にだけどね、いちいち親身になっていたら時間が掛かってしょうがない、まあ病巣的な部分だけには気を配って来たけどね。」
「え~っと、自浄能力と言って良いのでしょうか。」
「そうだね、自力再生出来るだけの人材を抱えていた所は早かったよ。」
「時にはシビアに…、見る必要が有るんですね。」
「時にはじゃない、常にだ、それを安藤社長が実践してこられたから、今の桜根が有るんだ。」
「うわ~、俺、甘く考えていたのですかね。」
「たぶんな、ま、取り合えずこの後の会社訪問のレポートはしっかりな。」
「はい。」
「明日の桜根イベントで取り上げるかもしれないからね。」
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