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F組三国志 10-3 [F組三国志 10 梶田梨乃]

「じゃあ改めてお願いします。」
「はい、矢野さん。」
「で、こちらが、須田沙里名さんと高山剛くん、俺たちの仲間ってとこだな。
少し紹介しておくと、須田さんはうちの大学じゃないんだけどね、大学の特待生なんだ。
で、高山はうちの経営学部。」
「えっと、須田さん高山、こちらが梶田梨乃さんだよ。」

えっ? 大学の特待生と経営学部生?
どういうことかしら?

「梶田さん、僕らは梶田さんちの事情を詳しく知ってる訳じゃない。
だけど、君の役に立てないかと思ってね。」
「は、はい、有難うございます。」
「須田さんの家は経済的にずいぶん厳しい状態なんだ、今もね。
でも、彼女は自分の力で大学に通ってる。
大学の特待生になるためにがんばったし、アルバイトもしてる。
あっ、特待生って知ってた?」
「はい、何となくは…、でも自分とは無関係かと思ってました。」
「君が本当に大学に進学したいと考えてるのに、お父さんの会社がどうにもならなくなったとしたら、考えに入れるべきことだと思うよ。」
「それで…、あっ、須田さん、ごめんなさいお忙しいのに。」
「ふふ、梨乃さんがあやまる必要はないのよ。」
「でも…。」
「須田さんは昼食だけでなく夕食もここで済ませていくしね。」
「はは、それじゃ、私、食い気ばっかみたいじゃん。」
「まあ、須田さんから色々話しを聞けば、学習にもっと前向きになれるかもしれないよ。」
「はい。」
「高山は、とりあえず呼んでおいた。」
「えっ? とりあえず、ですか?」
「君はお父さんの会社の事情、どれくらい分かってる?」
「えっと、特殊な技術を持ってる工場なんで、それほど大きくなくても今までは結構安定していたみたいです。
でも、ここのところ資金繰りが悪化したりとかで、詳しくは分かりませんが。」
「君がお父さんの跡を継ぐということは?」
「特にそういう話しは出てません。
弟が二人いますから…。
「でも、会社のことは直接君の人生に関わってくることなんでしょ?」
「はい。」
「大学へ進学するとしたら、何を専攻したいと思ってる?」
「まだ…、高校でそれを見つけられたらと思っていました。」
「例えば、君自身がお父さんの経営する会社のことを考えるってことはどう?」
「えっ、そんなこと思ったこともないです。」
「そりゃ、高校一年生だもんな。
でもさ、高校生だって、経営のこととかを学んだりしてもいいんじゃない?」
「そっ、それは…。」
「これは俺たちからの提案、まだ君の家の事情もよく知らないから、少々無責任な提案かもしれないけどね。
大学で経営学とか学んでいてもね、実際の経営に関われる機会なんて決して多くない。
でも、君のように経営者の娘なら、本人に意欲があって、親の理解が得られれば、本当に生きた経験が出来ると思うんだ。
本での知識と実際の現場の経験とは全く違うからね。」
「はい、あ、そうですよね…。
父も…、学校で成績優秀な子を雇っても…、現場の経験はないから研修が大変だって、よく言ってます。」
「もし、君が経営学とか学びたくなったりしたら、高山は喜んで力を貸すし、えっと、ちょっと厚かましいお願いなんだけど…、なあ高山。」
「うん、教えることで、自分の理解も深まるから力を貸すよ。
で、これは君のお父さんとの交渉になるんだけど、実際の経営状況とか研究対象として、お父さんの会社を見させてもらえないだろうかと思ってね。」
「う~ん。」
「矢野から君の話しを聞いてね…、君の手助けだけじゃなく、一つの会社の建て直しなんてことに関われたら自分にとって、すごくプラスになると思ったんだ、無理は言えないけどね。」
「みなさん…、私のこと…、私のため…。」
「はは、矢野さんたち一度に色々話しちゃうから、梶田さんとまどってるじゃないか。
梶田さん、まずは、須田さんから特待生のこととか聞いてみたらどうかな。
高山さんの話しは明日でも、テスト終了後でもいいからね。」
「は、はい、省吾さん、有難うございます。」
「じゃあ須田さん、お願い。」
「はい、省吾さん。
さ、梨乃さん行きましょ。
美咲ちゃん部屋は?」
「こっちよ。」

省吾さんが…。
なんか自分ではついていけない話しが…、でも自分のことなんだ、自分のためのことなんだ。
みなさん、私のために色々考えて下さってる。



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