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エピローグ-3 [権じいの村-13]

「お前、移住決めたんだって?」
「ああ、佐藤、とんでもなく辺鄙なとこだよ。
ほんとに何にもなくてさ、そこに村を作るんだ。」
「よく決意したな。」
「だって、面白そうじゃないか
まず現地調査、次に一期工事の概要決定、そして工事着手、それと平行して移住予定者の相互交流。
大変なことも色々あるだろうけど、開拓者として、今まで経験したことのない挑戦なんだぞ。
まぁ最初はさ…。」
「うん?」
「新党宇宙の党員には軽い気持ちでなったんだ、何か今時~、みたいな感じだったからさ。」
「ああ、俺もさ。」
「でも、最近は俺達って日本史に残ることに参加しているんだって気になってきてさ。」
「そうだよな、戦後の高度成長時代から核家族化が進み、さらには隣に住んでる人の顔さえ知らないような暮らしぶりになって、自己中な奴が増えて…、まあ俺もその一人だけどな。」
「はは、最近はそうでもなくなってきたと思うぞ。」
「へへ、ちょっとは気にしてるからな。」
「しかし慶次さんが総理になられてから、色々変わったよな。」
「ああ、それから色々教えられた。
物の値段なんて安ければ良いって考えてたけど、その裏に低賃金労働があったり、正社員でも過激な労働環境があったり、介護の現場で働く人が、大変な仕事をしている割には低賃金だったりとかさ。」
「で、ずる賢い奴らは、そんな中でうまく立ち回って高収入だけど、要領の悪い連中は、その食い物にされてるだけだったんだよな。」
「自由競争社会が限界を越えて、人に優しくない国になっていた。」
「俺だって自分が楽できて楽しければって思ってたさ。
でも慶次さんからの色々な提案を自分なりに考えている内に自分が変わってきた気がするんだ。
この国をより魅力溢れる国にしていくのは、あなたなのです、って言われた時には、まじで考えたよ。」
「俺もだ、それにしても、慶次さんが総理になって日本を変えるって言った時には、ここまで日本が変わるとは思ってもみなかった。」
「そうだよな、単に行政のシステムを変えるということではなく、人の心まで変えるとはな。
それも強制ではなく、提案やお願いだったから自然と心に入った。」
「ああ、宗教ということでもなく論理的な、お話しだからな。
でもさ、移住するとしたら、お前の結婚願望の方はどうなるんだ?」
「はは、開拓者魂を持っているのは野郎ばかりじゃないってことさ。」
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