「絵美は随分素直だったな。」
「ふふ、祐樹さん、絵美は入学してから毎日あなたの事ばかり話しているのですよ、この一週間でぐっと距離が縮まったのね。」
「はい、ですが、彼女は自分に対しても緊張していると感じます。
環境が激変して大変でしょうから、せめて自分に対してぐらいは、少し緊張を緩めて欲しいのですが…。」
「そうね、まだ本人が恋してると実感し始めたばかり、祐樹さんと違って慣れてないのよ。」
「自分も慣れている訳ではないです、一時は女性恐怖症になりかかったぐらいですから…。
まだ、友達付き合いを始めて間がないですが…、ご両親にとっては一人娘のこと、自分の家柄とか色々気になりませんか?」
「気にするのは白川の婆さんぐらいだ、君が気にする必要はないよ。
まだ若いのだから、この先、絵美が振られる事だって有るだろう。
だがそれも青春の一ページさ、親としては初恋の相手と結ばれて欲しいと思っているがね。
まあ、高校卒業までは妊娠しない様に気を付けて欲しいが、実のところ孫の顔は早く見たいんだ。
あの子の爺さん婆さん達にひ孫をみせたいしな。」
「そういう感覚なのですか、自分は妹に彼氏が出来たら、その彼とどう接したら良いか分からないのですが。」
「人それぞれだろうし…、私も正直言って君で無かったら対応は違っていたと思うよ。
君が成人したら、そうだな出来れば友人としてではなく家族として酒を酌み交わしたいね。」
「有難う御座います、そのお言葉にお応え出来るだけの男に成れる様に努力します。」
「頼もしいね、君達の会社は小さく始めるのだろうが、大きくしても構わないからな。」
「あまりプレッシャーをかけないで下さい、でも今日は色々なヒントを頂きましたから考えてみます。」
「失敗しても一億ぐらいの損失なら気にするなよ、それを糧にすれば良いのだからな。
どうだ、高校生社長の会社が資本金十億でスタートとかは。」
「それは…、考えてみます。」
「はは、十億にびびらないのか?」
「子どもの妄想に過ぎませんが、一億有ったら、十億有ったらと考えた事が有ります、現実的に検討してみるのも悪い事ではないと思いまして。」
「うちの社員達に持ちかけると、一様にビビッて逃げ腰になるのだがな。」
「自分は世間知らずですから。」
「しかしな…、企画書に説得力が有れば十億迄動かせる男だと認められたとしたらどうだ?」
「そんな金額より事業内容で認められたいです、経済効果という視点で考えれば、資本金関係なく大きな影響力を発揮されている方は少なく無いです。
十億動かせても僅かな経済効果しか出せないの有れば面白くありません。」
「はは、まいったな。」
「あっ、生意気言ってすいません。」
「いや、うちの社員達は皆真面目なのだが、何か欠けていると感じる。
う~ん、社員だけでない私もかな、忙しくなるだろうが、是非うちで高校生社員を兼任して欲しい、お願い出来ないかな?」
「はい、こちらこそお願いしたいと考えていますが、一通り落ち着くまでに時間が掛かりそうですので…。」
「直ぐにという訳では無いからな。」
「はい、お願いします。」