村の子どもに対する教育は、転入により増え続けている子どもへの対応に苦慮しながらも何とか形になって来ていて、少なくとも自分が十歳の頃より随分良い環境になったと思う。
 それでも長い目で見た時、例えば国の中枢で働ける人材を育てられるか、高度な研究に打ち込める研究者を育てられるかと言うと全く分からない。
 俺達は特殊な環境で育てて貰った訳で、同じことを大勢の子ども達に経験させることは難しい。
 また、高校大学と言った自分達が経験していない教育課程を思い描くのは更に困難。
 結局、学校教育に関して、俺達は英語教育の手助けをするに留め、後は専門家にお任せとなった。
 但し、近衛予備隊のメンバーに対しては先輩として、また指揮官として助言をすることも。
 予備隊はいずれ高校か職業訓練校になるかも知れないが、今は村でも向学心の強い子ども達の受け皿として、仕事に直結する知識を中心に体験しながら学んで貰っている。
 特に英語とパソコン関連は大人よりも頼れる子が育っていて、自分が村長になった頃とは比べものにならないぐらい発展した村にとって欠かせない存在となりつつある。
 その村は…。

「ジョン、村の運営はどう?」
「至って順調で、詩織の助言通り、村の運営は各部署のリーダーに任せ、村役場の業務は近衛隊の手を離れつつ有ります。
 当初、その必要性を村民に理解して貰うのにさえ苦労した村議会も、各集団の代表と言う立場では有りながらも村全体を考えた発言が増えています。
 こちらも近衛隊メンバーのアシストは減って来ています。」
「特に報告が無かったから、元受刑者の議員を含めて順調だとは思っていたのだけど、村長が暫く村を離れても大丈夫なぐらいに落ち着いたのかしら?」
「はい、長が不在でも問題なく回る組織を目指して来ましたので。」
「何処へ行っても連絡は取れるものね、それなら今度私が遠江王国へ行く時、シャルロット、ルーシーと三人で一緒に行ってみる?」
「行きたいですが、何か目的が有るのですか?」
「ネットを通しての情報は持っていても実際に見てみると違うものなの、予備隊の幹部達も近衛隊メンバーに昇格して良い頃合いだから順次交代で研修旅行に行って貰おうと思ってね。
 その先陣を三人で、それとあなた達はYouTubeチャンネルを通して日本で有名になって来てるから、テレビ局からのお誘いが有って、一稼ぎ出来るのよ。」
「稼げるのであれば是非お願いします。」
「ジョン役の吹き替え声優が大きな役を貰い注目されてて、今がチャンスなの。
 仕事と観光と研修のバランスが悪くならない様にスケジュールを組んで貰うから…、仕事と言っても質問されたらそれに応えるぐらいの感覚で構わないから。」
「そこにテレビカメラが有るのですね。」
「そう言うこと。」