「あっ。」
「どうしたの、省吾?」
「ほら、実がなってる。」
「ほんとだ、何の実かな?」
「え~っと、梅じゃないか。」
「あっ、そうだ、二月だったかな、このあたりで梅の花が咲いてた。
あの頃は他に花なんて見当たらなかったから、この辺りだけ、ちょっと春だったかも…、でも風が強くて震えてたな、私…、あの頃は、受験前だったし。」
「そっか。」
「ふふ、何か不思議よね、かわいかった花が、知らない間に実を結んで…、梅の実がこんなに綺麗だとは知らなかった。」
「うん。」