「私達もですが給料は充分だと思います。
 王子の指示で、学校農園からの売り上げや観光客向け事業の売り上げなどは学校職員の住環境を充実させる取り組みにも使われていますので。
 私の赴任先では、学校と職員宿舎が王国標準になるまでにそれほど時間は掛かりませんでした。」
「学校農園は珍しい果物や作物を中心に栽培していることも有り収益を上げているとは聞いていたが、観光客向けの事業はどう?」
「子どもの頃から単位制で年齢に関係なく学ぶと言う形は、来てくれてる観光客の国では珍しいのだとかで、その利点欠点を見極めるべく現職の教師も見学費を払って見に来てくれているのです。
 課題に取り組む時間には、子ども達の様子を見て教えてくれる人が多くて助かっています。
 英語でのコミュニケーションの時間や、算数ゲームは特に盛り上がり、お金を払って子どもの相手をして満足して帰る、そんな感じになっています。」
「算数ゲームは子ども達と対決?」
「ええ、ジョン王子が近衛予備隊で広めたメイクテンを応用した対決ゲームは特に白熱しています。
 0から9のカードの山から四枚を引き、その間に四則の記号を自由に入れて答えが10になる式を作る、知ってる人は多いのですが、早さを競う一対一の真剣勝負、自分のカードを並べ替えて10にするだけでなく相手のカードも先に10に出来たら、相手からポイントを奪えるスタイルが面白くて。
 特に算数の得意な人は子どもの中でも強い子と戦って、負けるともう一ラウンドと。」
「あのゲームは算数の能力が如実に現れる気がしていたのだけどどう?」
「はい、統計を取った訳では有りませんが、算数の得意な子ほど強い傾向が有ると感じています。
 自習中心にどんどん先の単元まで進んでいる子の中には、私でも油断すると負けてしまう様な子もいまして、今の所は勝ったり負けたりなのですが。」
「大人相手にいい勝負が出来れば子どもも嬉しいだろうな。」
「ですね、相手の手札からも得点に出来ることで、運の要素が少ないですから、観光客の中には自分の教え子達にもやらせてみると言って帰られる方が少なくないです。」
「英語でのコミュニケーションはどう?」
「一緒にフットサルをしながら、一緒に調理実習をしながらと言う形にしています。
 単元の修了試験に合格すれば良いので、授業時間で子ども達を縛っていないことに驚かれますが、それ以上に英語の学習を始めてから短期間で英語力が向上していることに驚かれます。」
「子ども達はそんなに頑張ってるの?」
「いえ、観光客とのコミュニケーション取っていることで自然と英会話が身に付いています。
 サポート役が話題に気を使った結果ですが、色々な人と会話した結果が生きているのです。」
「王国騎士団が目指して来た、生きた学習が出来てるのだな。」