「白川副社長、本日はお招き下さいまして有難う御座います。」
「長澤部長、今日はゆっくりしていって下さいね。」
「は、はい…。」

「…、では、会社創立記念パーティーの準備は大丈夫ですね。
簡単ですが、予定していた確認作業はここまでとします。
後、幹部の皆さんから見て遥香システムには上がって来ていない様な問題とか有りませんか?」
「私共より、神沢社長は如何ですか、戸惑われる事もお有りかと思いますが。」
「はは、丁寧に話して下さる事には慣れません、自分はまだ高校生ですから。」
「いえ、年齢関係なく多くの者の心を動かした尊敬出来る社長です。
ボランティア社員などという普通で有り得ない形態は、我々の中から自発的に生まれたもの、尊敬に値しない社長の下に、この様な形で人は集りません。」
「有難う御座います、とても照れくさいですが、ただ、それに関しましては少し懸念が有ります。
ダブルワークが主とは言え順次正社員になって頂く訳ですが、スタートが無給社員なだけに、サービス残業が常態化してしまわないかと思うのです。
また、給料は岩崎標準に合わせますが、きちんと皆さんに満足して頂ける額になりますでしょうか?」
「大丈夫です、社長からの目標として、ダブルワークで良いから全員を正社員にと言われた時に、我々が何を考えたかと申しますと、社長の人徳で得られた資本金を効率良く活かし、我々の給料のみならず、会社全体の経費や会社を発展させて行くための資金を如何に稼ぐかという事です。
社長が提案して下さった様々な案件を検討させて頂いた結果、全員が正社員となるまで然程時間は掛からないと思っています。
更に、社長、副社長が自ら看板となって収益を上げて下さいますので何の心配もしておりません。
ブラック企業で横行している様なサービス残業は発生させませんのでご安心下さい。」
「ですが、休みの日に、つい仕事の事を考えてしまうとか…。」
「はは、それぐらいは許して下さい、嫌々考えてる者はいないでしょうから。」
「そうですか…。」
「我が社は大勢が勝手に押しかけ社員になった様なものです、自分達で何とかしますので社長が心配される必要は有りません。」
「そうですよ、記念パーティー関係の交渉をしている時でも、神沢社長のお名前を出させて頂くだけで、スムーズに事が運びました。
写真集、CD、DVDなど絶対買うから出して欲しいという声も沢山届いています。
社長はそちらに力を注いで下されば良ろしいのです。」
「総務部長は個人的に欲しいのだろ?」
「長澤さん、訊かないで下さいな。」
「社長、写真集ですが一つ考えが有ります。
市内のおしゃれポイントで撮影して頂きたいのですが、その時に、完成したお二人のツーショット写真を真似しての撮影がしやすい様に、また、自分と社長や副社長とのツーショット写真に加工し易い構図にしておくのです。
写真集発売後に知り合いを利用して仕掛ければ、撮影ポイントへ行く人が増え、自分とのツーショット写真加工を流行らせる事が出来ると思うのです。」
「なるほど、楽しんで貰えて、衣装の売り上げにも貢献出来るかも知れませんね、お店の宣伝も可能ですか…、でも男女カップルの写真集、売れますか?」
「始めは売れ行きが悪くても、自分とのツーショットに作り替える事が出来ると知ったら試してみたくなると思います、異色さが話題になりますし、素敵なカップルですから、ブライダル関係の目に留まればCM出演に繋がるかも知れません、白川副社長は如何です?」
「そうですね、モデルは経験して来ましたが基本一人での撮影でしたので少しチャレンジです、あまり売れなくても赤字にならない程度の規模で試してみますか。
柿川市を前面に出して柿川の案内的な要素を含めれば間違えて買って下さる方が見えるかも知れません。」
「悲観的なご発言ですが、進めてもよろしいですね。」
「ええ、どうぞ。
さて皆さん、良い時間になりましたのでそろそろ食事に致しましょう。」