「本部、本部、こちら樋口です、どうぞ。」
「はい、本部です、どうぞ。」
「源九朗さんの所のテストします、どうぞ。」
「了解しました。」
「青、押しました。」
「確認しました。」
黄色、押しました。」
「確認しました。」
「赤、押しました。」
「確認しました、異常ありません。」
「では作業終了します。」
「了解しました。」

「源九朗さん、工事終わりました。」
「ご苦労さん、樋口くん。」
「では、緊急連絡システムの説明をさせて下さい。」
「うん。」
「ボタンは三つ、青、黄、赤とあります。
特に問題がなかったら青いボタンです、毎日押していただけると本部は問題なしと安心できます。
ちょっと困った、でも緊急ではないということが起きたら黄色のボタンを。
緊急事態発生の時は赤をお願いします。」
「押すだけでいいの?」
「そうですね、緊急時に電話連絡できる時は電話もお願いします。
赤は、深夜でも当直をたたき起こすシステムになっていて、本部からも電話を入れますけど。」
「うちは家族がいるからそんなに心配じゃないけどな。」
「はい、ですから一番シンプルなタイプにさせていただきました。」
「色々あるんだ。」
「独り暮らしやご老人だけの世帯には、赤いボタンを何箇所かに設置させていただきました。
風呂、トイレ、寝室といったところです。」
「なるほど、どこで倒れるか分からないからか。」
「ええ、本部ではどのボタンが押されたかも分かる様にしてあります。
さらにテレビ電話を設置させてもらいました。」
「そりゃすごい、でも費用は大丈夫なの?」
「はい、この取り組みには色々スポンサーがついてくれてまして、近い内にテレビ取材もあるそうです。」
「それも白川先生のお力か…。」
「はい、先生は初めの頃からこのシステムの重要性を考えておられまして、あちこちに働きかけて下さったのです。
ここでの結果が良かったら、他の村にも広げたいそうです。」
「そうか。」
「あと、例えば地震が起きた時とかにも、ボタンを押していただけると助かります。
青が押されていればこちらも安心できますから。」
「なるほどそういう使い方もあるのか。」
「ただ、停電には対応できるのですが、ケーブルが切れるとどうしようもなくて。
無線ということも考えたのですが、ちょっと無理がありまして。」
「そうか、そんな時は?」
「源九朗さんは車をお持ちですから、できたら、この周辺のお宅の安否情報を本部へ伝えていただけると助かるのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろんオッケイだよ、自分たちの村だからね。」
「よろしくお願いします。」
「はは、こちらがよろしくだよ、学生さんたちが来るようになってこの村にもずいぶん活気が戻ったからね。
もうすぐ携帯も使えるようになるんだろ?」
「はい、でも便利にはなりますが、ちょっとつまらない気もしています。
携帯の使えない村ってのが僕には結構面白かったので。」
「そういうものか。」
「あと、このシステムで何か問題とか気付いたことがあれば本部までお願いします。
「しばらく様子を見て改良の余地があれば改良していきますので。」
「うん、分かった、そうだ樋口くん今夜は時間ある?」
「はい、特に予定はないのですが。」
「良かったら飲みに来ないか、お仲間も二三人連れて来るといい。」
「いいんですか、ありがとうございます。」
「君たちの話しも、もっと聞きたいからね。」
「僕たちも色々なお話しを聞かせていただきたいです。」
「本部の方へも連絡しといた方がいいの?」
「いえ、大丈夫です、こういうお誘いは断ってはいけないことになってますので。」
「はは、そうなのか。」