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それぞれの夏-4 [権じいの村-7]

「おい、聞いたか?」
「何を?」
「ここに移住してきた人同士がここで結婚して生活するかもしれないって。」
「そうか…、プロジェクトの…、実現したら慶次さん喜ぶだろうな。」
「ああ。」
「そうだ、もし実現したら、今度作る風呂は子宝の湯とかにしないか。」
「はは、いいかも。」

「お~い、学生諸君、お仕事はどう~?」
「あっ、香織さ~ん、順調ですよ~、見て行きませんか~。」

「これが薪発電の最新型なの?」
「はい、今はですが…。」
「今は、なの?」
「すぐ、次のタイプが登場すると思います。」
「そう言えばコンテストなのよね?」
「はい、普通は完成品を競うのが一般的なんですけど。」
「ちょっと違うコンテストとは聞いてたけど…。」
「アイデアや試作品をみんなで評価してのコンテストなんです。」
「よく分からないわ。」
「薪発電なんて、しょせん火力発電なわけですから、今までの技術も色々生かせるんです。
でも、小規模で環境にも配慮して、しかも災害時にも有効で、且つ過疎地で使うことを想定して、労力も極力抑えたい、とか。
色々考えると工夫の余地が多々ありましてね。」
「それで、権じいの湯ではしょっちゅう工事?」
「そうです、改良したものを実際に使ってみることで問題点も見えてきますから。」
「そうか。」
「で、この慶次さん発案のコンテストのすごいところはですね、コンテスト参加者たちが思いついたことを、どんどん発表してることなんです。」
「あっ、普通は他の人に知られないように研究…?」
「はい、共同研究ということも有りますけどね。
基本、自分の研究の成果という気持ちがあるので、発表されるタイミングが遅れることもあるんです。
でもこのコンテストでは思いついたことや試作品を、どんどん発表することでポイントが得られることになっているんです。
時には、失敗作でも発想が良ければポイントをもらえたりします。」
「ふ~ん、まだよくわかんないけど。」
「コンテスト参加者たちから、失敗例、成功例、色々なことが広く発表されています。
それを参考にして次のアイデアを模索してる参加者もいるんです。
結果、コンテスト参加者全員による共同研究状態です。」
「共同研究? それって、すごいんですか?」
「はい、この取り組みへの参加は全国の大学に広まりつつありますし、この開発からの応用も色々期待できるんです。」
「応用?」
「燃料になる薪の自動補充という研究では、形の揃ってない物を効率よく補給という課題に取り組んでいます。
同じ形の物を補給するのであれば簡単なことが、形が揃ってないことによって複雑になります。
こういったことは今までも研究開発されてきたことではあるのですが、また違った側面から見直している研究者もいるんです。」
「へ~。」
「めちゃくちゃ複雑なシステムを考えてる連中もいれば、人の力に頼るシンプルなシステム、でも人に優しくできないかって考えてる奴らもいましてね。」
「なんかすごいことなのね。」
「はい、すでにこのコンテスト関連で幾つか特許とか申請されてますし。」
「そっか、君たちもがんばってね。」
「は、はい。」
「ふふ、キャンプに来た子たちがね、色んなお風呂があって面白かったって言ってたわよ。」
「露天風呂とか人気があったみたいです。」
「うん、がんばってね。」
「はい。」

「おい、お前、緊張してなかったか?」
「あ~、あこがれの香織さんと沢山会話してしまった~。」
「…。」



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