藤村記念館を出て遅めの昼食、しばらく宿場内を散策した後二人は展望台へ。

「今日の恵那山はかすみ気味だな。」
「うまく撮れそう? 正樹。」
「ちょっとインパクトが弱そうだから…。」



「ふふ、ここを通った昔の旅人たちも、あの山を見たのかしらね。」
「うん、多少崩れているから今と全く同じとは言えないだろうけど、旅の人も宿場の人も見ていたと思う。」
「そして恵那山もここの人たちを見守ってきたのね。」

「香織、そろそろ現代の旅人も出発するか。」
「ええ、まずは馬籠峠を目指すのね、遠いの?」
「距離はたいしたことないけどちょっと登りが急かな、でも峠を過ぎればだらだらと下って行くだけさ。」

「こうして歩いていると色々なものが目に入るわね。」
「うん、車で通りすぎたのでは気づかないものにも目がいくだろ。」
「ええ、道端の小さな花、何時からここで旅人を見守っていたのって感じの、えっと道祖神かしら。」
「歩くというのは、今では贅沢な旅かもな。」
「そうね、こんなのんびりした気分、久しぶりかも。」
「登りが続いてるけど大丈夫か?」
「これぐらい何でもないわよ。」
「もうすぐ、馬籠峠だからな。」
「うん。」