ドキュメンタリー番組が放映されてからテレビや雑誌の取材を受ける事が多くなった。
相手の要望に応じて対応しているが、今回のテレビ取材は村長が対応している。

「岩崎村というのは正式名称ではないのですね。」
「はい、私達が勝手に呼んでるだけです、私の村長という肩書も公のものでは有りません。」
「やはり株式会社岩崎からとったのですか?」
「そうですね、ここは社長を含めた岩崎家三代の挑戦ですから。」
「かなりの額がこの村の為に使われているとお聞きしましたが。」
「ええ、朽ち果てた廃屋の撤去、昔からの道路は全部潰して区画整理をしました。 
電気、水道、通信の整備、ガスはプロパンですが、近い将来都市ガスに出来ないか検討中です、住居は今でも充分快適ですが。
畑は土壌改良し、最新型の農業機械も導入しましたが、これからメインで取り組む作物に応じてさらなる設備投資を考えています。
林業も最新型の林業機械を導入、村周辺の植林地は随分綺麗になりました。
後はモトクロスコースの整備、さらにクロスカントリーコースや森林浴の出来る遊歩道も整備中です。
洋蘭の生産温室に続いて、観光客向けの温室も建設中、宿泊客用のコテージも稼働していますが今後増やして行く予定です。
岩崎学園は間もなく開校、その他にも色々、さて幾ら掛かったでしょう?」
「想像できませんね、でもその投資は回収出来るのでしょうか?」
「二十年三十年と掛かるでしょうが、社長は拡大を考えていますから。」
「ビジネスとしてどうなのですか?」
「社長はビジネスというより、お金持ちが真剣に取り組めば過疎地の一つぐらい軽く再生出来るという事を示したいと話しています。
過疎化は、都市部への人口集中を推し進めてきた企業にも責任が有ると考えています。
貧富の二極化により内需が拡大しない現状も労働環境を悪化させた企業に問題は有りませんか?
株式会社岩崎は、田舎に安定した仕事の場を築き上げる事を目的としています。
今の私達は岩崎社長に養って頂いている状態ですが、岩崎家の挑戦を成功させようと、社員、村民全員で頑張っている所です。」
「岩崎家の挑戦と言うのはどういう事ですか?」
「誰も住みたがらない様な土地を再開発して、都会の生活に疲れた人達が人間らしく暮らせる村を、どこまで大きく出来るか、そして、無駄に資産を貯め込んでるお金持ちが、社会のバランスを取り戻す事を考えるきっかけになればという事です。」
「その思いが、この別荘地の様な環境を生み出したのですね。」
「ええ、もう少し村の形が整ったら資産の規模を自慢してる方々に、岩崎家の挑戦を見て頂きたいです。」
「なるほど、それでは次に…。」