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21-拡大 [岩崎雄太-03]

社員が六十名に達した頃、テレビでプロジェクトの立ち上げからの軌跡を紹介するドキュメンタリー番組が放映された、都会を離れたくなった人達のドラマは視聴者の心へも届いた様だ。
その結果。

「社長、林業機械見学をメインとしたイベントへの申し込みが定員に近づきつつ有ります。
社員体験も問い合わせが結構有りまして、予定数を越えるかもしれません。」
「なるべく多く受け入れたいが、予定数を越えた後は次回の募集に応募して頂くしかないね。」
「予定通り社員は百人規模にするのですか?」
「ああ、今後の展開を考えると人手が足りなくなるからね。」
「収支のバランスは良くないですが。」
「基礎固めの段階で投資を躊躇すると結果までの時間が掛かり過ぎる、結果投資が無駄になる事も。
お金の事なら、お爺さまが自分名義の資産をここにつぎ込むおつもりだから心配いらない、簡単に言えば百人ぐらいなら何の問題もないって事さ。
そんな訳だから入社希望の人は積極的に採用して行こう、特に女性はね。」
「その辺りは、ドキュメンタリー番組での人選に気を配った成果か、社員体験は女性からの問い合わせが予想以上に来ています。」
「ネット環境も整ったからね。」
「スーパーマーケットの立ち上げは大丈夫なんですか?」
「一号店は岩崎村から一時間半ぐらいの駅近、村で採れた物を販売し、村の店で販売する物も一括仕入れ、村と都会の中継的な役割を担いつつ、百貨店の機能も持たせる。」
「百貨店の機能ですか?」
「通販に慣れている老人ばかりでもないだろう、そこがメインターゲットになる。
人口が多い訳でもないから店舗規模は大きくしない、食料品や日用品が中心だが、カタログショッピングで電化製品から衣類その他、何でも購入できるビジネスモデルを構築する、ネット通販を補佐する形で利益を上げるという感じと思ってくれれば良い。
長期間売り上げを伸ばすとはならないだろうから次の手も考えなくてはならないがね。」
「ご老人がターゲットという事ですか。」
「ああ、移動販売の基地とも考えている、俺達の村には店を作るが、店まで遠い集落だっていくらでも有る、そこを回る販売網を構築するんだ。」
「利益率はどうですか?」
「直接的な利益は少ない、マイナスになるかもしれないが、この先株式会社岩崎を伸ばすには必要なんだ、林業関係の請負に繋がったり、土地家屋を手放す時の相談に乗ったりとかの可能性も有るだろ。」
「林業は伸ばせるとお考えなのですね。」
「もちろんさ、手に入れた植林地が宝の山になる様、親父も動いていてくれる。
使い勝手や火災の問題、輸入材との価格格差が有って国内産木材の消費は伸び悩んでいたが、この所持ち直して来ているんだ、ここでさらなる需要の掘り起こしが出来れば、日本人は木と共に歩んで来た民族、何とかなるさ。」
「そうですね。」
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