アメリカ視察旅行には社長特務室の他、秘書室、広報部、撮影クルー、優の家族とその世話係まで同行したのでかなりの人数になった、ここに現地スタッフも加わる。
プログラムは社内的なものと社外的なものとがあったが、どんなプログラムも優が中心となった、これは相手にインパクトを与える狙いもあったが、彼の父が「会社全体を一番知っているのは優なんだ。」と話すぐらい優の認識が高まっていたからでもある。
取材も幾つか受けた、これは会社が他に例を見ない手法でその規模を急速に拡大しつつあり、また、総理大臣一家と家族ぐるみの付き合いが有るという事も関係しいていた。
あるテレビ番組では。

「優、君達の会社がなぜ急速に拡大してるか教えてくれるかな。」
「スミスさん、色々有るとは思うけど従業員に優しいという事が一番だと思います。」
「どう、優しいんだい?」
「仕事や給料に不満が有っても一生懸命働きますか?」
「そりゃあ不満は無い方が良いね。」
「うちでは、どうしたら不満の少ない会社に出来るかを、ずっとグループ企業全体で考えてきたのです。」
「なるほど、他には?」
「良い商品を作り薄利多売はしないという事。」
「日本製の良さは知ってるよ、従業員もお客も満足って事なのかな。」
「そうです、皆、仲間ですから、仲間に粗悪な商品は売れません。」
「う~ん、私も仲間になりたいね。」
「もう仲間ですよ、スミスさんが着てるのはうちの製品ですよね。」
「オ~、有難う、で、ここをクビになったら雇ってくれないか?」
「はは、真面目な話なら担当者を紹介しますが。」
「お願いするよ、番組制作会社も持ってるんだろ。」
「ええ、サンフランシスコにも拠点を置く事になりました、広報活動は重要ですから。」
「優は会社の重要な事について決定権とか有るのかい?」
「それは有りません、部下が四人の社長特務室室長に過ぎませんからね、ただ会社の皆は、自分の提案を良く受け入れてくれます。」
「手元の資料だと、それでかなりの利益を会社にもたらしているそうだけど。」
「たまたまうまく行っただけです、子どもの思いつきがうまくいったから大袈裟に書いているだけですよ。」
「ここで番組を見てる人達が考えるのは、株式会社桜根は買いかどうかなんだけど株式は上場してないんだね。」
「今の所必要ないです、資金はうまく回っていますから。」
「将来はやはり社長なのかい?」
「それは分かりません、佐々木総理は総理大臣になれとおっしゃってますが。」
「う~ん、どちらにしても将来が楽しみだね。」
「はは、今も楽しいですよ。」