悲しげに殺風景だった冬景色…、それが、今はあちこちに色彩を振り撒き春の喜びを奏でる。



そめいよしの開花はもうすぐ。
そんな昼下がり。
西山健と国井さよりはしゃくなげを見ていた。

「しゃくなげって、初夏のイメージがあったけど、もう咲いてるのね。」
「へ~、そうなんだ、花に疎いからよく分かんないけど。」
「ほら、しゃくなげ色にたそがれる♪ はるかな尾瀬♪ 遠い空♪ ってさ。」
「あっ、そんなのもあったな。」
「ふふ、でも、ボランティアに応募してなかったら、こんなに沢山のお花に出会うこともなかったかもね。」
「ああ、そうだな、気が付けば大学とかでも花は咲いてた、でも、この活動に参加してなかったら気にも止めてなかったと思う。」
「こんな事も、亀田さんはイメージしてみえたのかな。」
「たぶんな、この前も自然って素敵だろって、話しておられたから。」
「ふふ、それを今度は私たちが伝えて行くってことね。」
「ああ、まずは、そのきっかけとなる動植物園の魅力アップということなんだよな。」
「うん。」
「どう、さよりの方は、進んでる?」
「ええ、時間に余裕のある春休み中にある程度進めておきたいって思ってたからね。」
「どんな感じ?」
「もろ学園祭。」
「えっ?」
「運営スタッフがある程度の人数確保できそうな日を狙って、何月何日ミニ学園祭を開きますってとこかな。
で、時には実際の大学の名でやってみたり、架空の大学の学園祭としてやってみたり。
どこかの大学で何かのテーマを発表したい、その場が欲しいとなったら、その名でやればいいし、私たちは大学の混成軍な訳だから、うちらでやる時は架空の大学にするの。
単に模擬店を出すことを目的としないで、真面目な取り組みを中心に置いてね。
その辺りはバランスをとって、ということかな、ほら、亀田さんもバランス感覚は大切だって何時もおっしゃてるじゃない。」
「真面目な取り組みは、地味でも…、応援してくれる人を増やすことにつながるかもな。」
「健くんの方は進んでるの?」
「ああ、さっきもガイドボランティアの方とお話ししてきた。」
「反応はどう?」
「学生たちが真面目に取り組むなら協力は惜しまないって。」
「そっか、じゃあ学園祭にも。」
「えっ、結構平均年齢高いぞ。」
「年齢なんて関係ないわ、っていうより色々な年齢層の方々と交流は大切だって言われてなかった?」
「そうだった…、お互いにとってプラスになる取組ができるといいな。」
「ええ。」
「あっ、真面目な内容が植物関連なら、植物会館を利用させていただくという手もある。」
「いいの?」
「来週使わせて下さい、なんてことは無理だけど、きちんと準備して内容も良ければ、むしろ使わせていただくべきかもしれない。」
「そうか、お店にこだわる必要もないわね。」
「うん、だったら植物園内の休憩所でお茶会とか…、静かな音楽の演奏会とか…。」
「有りかも、雰囲気を壊さなければ良いのよね。」
「こじんまりとした企画でも…、ボランティアサークルだからこそ出来る企画があるかもな。」
「バイオリンやってて音大行ってる友達が居るけど、なかなかお客さんの前で演奏する機会がないって言ってたから。」
「う~ん、ガイドボランティアの方々に話してみるよ。
行けそうなら職員の方の意見も聞いて、問題が少なそうだったら、皆に提案しようか。」
「そうね、木々に囲まれた中で…、小鳥の声や、せせらぎの音に溶け込んだ生の音楽、聴いてみたいな。」
「そうなってくると人が足りてないか…。」
「ふふ、行けそうだったらバイオリニスト一人引きずり込むわ。」
「はは、さよりが動いたら一人で済む訳がない。」


花ワールド-hirata
ぷちぎふと工房 コンサルジュ