「お~い、哲平、ボールとってくれよ。」
「おう、いくぞ。」

バスケも久しぶりにやると面白い、まあ体育レベルの球技なら、なにやっても楽しいけどね。
部活のラグビーも好きだけど厳しくもあるからな…。
あっ、省吾。

「さすが哲平だな、バスケもうまいじゃん。」
「まあな、そういう省吾もなかなかのもんじゃないか。
さっきは絶対抜けるって思ったのにさ。」
「はは、たまたまだよ。」
「お前はただのガリ勉かと思っていた。」
「よせやい。」
「手は早いしな。」
「え?」
「秋山のことだよ。」
「ああ、あれは完全に偶然だよ。
自分でもびっくりしてる。」
「秋山ってさ知的美人って感じだよな。」
「なんだお前も狙ってたのか?」
「まあ密かにな。」
「お前なら女の子に不自由しないだろうに。」
「まあ、選ばなければな。」
「このモテモテ野郎が。」
「はは、でも誰でも良いって訳でもないだろ。」
「確かに、その通りだ。」
「どういうきっかけを作ったんだ?」
「まあ、きっかけは向こうからやってきたってとこかな。」
「ふ~ん。」
「でさ、哲平にも頼みがあるんだけど。」
「何だよ。」
「きっかけはクラスのことだったんだ。」
「あっ、彼女、学級委員長だったな。」
「ああ、それでクラス内のいじめ問題を持ちかけられたのさ。」
「いじめ?」
「そうか、そういえば哲平って休み時間教室にいないよな。」
「ああ、中学から仲の良い奴が隣のクラスだからね。」
「まあ、ちょちょいとやってる奴がいるわけよ、F組には。」
「そうか、それは良い気はしないな。」
「うん、で、何とかならないかって相談されてさ。」
「なるほど、なんとかしないと男がすたるってことだな。」
「まあ、そんなとこだ。
で、頼みがあってさ。」
「ああ。」
「グループを作って欲しいんだ。」
「グループ?」
「うん、まだF組はばらばらの状態だと思うんだ。
今は仲良しグループ的なのがあっても二三人でさ、このままいじめっこたちがグループを形成し始めると大きくなってしまう可能性があるんだ。
でも、今の内にいじめないグループを作っておけばそれを防げる可能性が高まるだけでなく、F組が楽しいクラスになると思ってさ。」
「そうか…、そんなことあんまし考えてなかった。」
「哲平なら男女問わず人気があるしさ。」
「はは、照れるなあ~、でもお前らで、そのグループ作れば済むことじゃないのか?」
「それじゃあ限界があるんだ、色々選択肢があった方良いだろうしさ。
それに、美咲たちのグループと哲平中心のグループとが、ゲーム感覚で競いあったり協力しあったりしたら、クラスが盛り上がると思ってさ。」
「う~ん、そうか…、俺の中三の時のクラスは結構まとまっていて楽しかったからな。
ここに入学して、ちょっと違和感があったから隣のクラスに行くことが多かったけど…。」
「何も堅苦しいグループを作る必要もないからさ、考えてみてくれないか。
俺も協力するからさ。」
「ああ…、協力? そうだ、省吾って数学得意だったよな。」
「まあ苦手ではないな。」
「俺、だめなんだよ、教えてくんない?」
「はは、交換条件ってことか、それぐらいならお安い御用だよ。」
「部活やってるとどうしても時間が足りなくてさ。」
「そうらしいな。」
「部活の先輩たちは、一浪して上を狙うか、それなりに妥協するかの二者択一だって言っててさ。
でも、妥協するにしてもそれなりのところへ入りたいじゃないか。」
「うん、今回の企みは、その辺も考えているから考えがまとまったら話すよ。」
「わかった。」
「とりあえずは、仲良しグループ作りを考えてみてくれるか?」
「ああ、了解した。」
「それでさ、どうせならゲーム感覚で…。」

へ~、省吾って、もっと付き合いづらい奴かと思ってたけど、面白いこと考えるんだな。