夏休み。
といっても旅行に出かけた子以外はほとんど学園に通ってきていた。
普段と同じように学習に取り組む子もいれば、普段とは違ったテーマに取り組む子、スポーツに励む子もいれば、夏ならではの遊びに興じる子たちもいる。
実習や研究で上がってくる大学生も普段より多くなり、色々な交流もある。

「なあ省吾、今日一つの発見をしたよ。」
「どんな? 啓介のことだから…、また下らないことか?」
「いやいや、俺達、趣味のごとく高校の数学やってるじゃん。」
「ああ、数学は微妙に俺がリードしてるけどな。」
「大した差じゃないさ。
でさ、微分積分もそろそろクリアだろ。」
「うん。」
「微分積分って何に使うと思う?」
「使う?」
「昨日さ、測量してた土木工学科の人と話しをしたんだ。
少し測量のことについて教えてもらったんだけどさ。」
「うん。」
「数学の知識を結構使ってんだよ。」
「ふ~ん。」
「ふと、思い出したのは中一の頃の同級生。
数学なんて勉強しても役に立たないとか言ってた奴がいてさ、つまない奴だと思った。
まぁ、それに応えられない先生にもがっかりしたけどな。」
「はは、そんな奴には測量なんて関係ないんじゃないのか?」
「まあな。
でさ、明日の午前、測量を手伝わさせてもらってさ、その後の処理なんかも教えてもらう約束をしたんだ。
省吾もどう?」
「う~ん、自由研究のテーマにするの?」
「俺にとっては四つ目のね。」
「そうだな知らない人から何か教えてもらうということは、自分の自由研究のテーマとも関係するから…。
明日なら…、自分の予定変更だけで済むから、行くよ。」
「じゃあ、明日、何時ものとこな。」
「おっけい。」