「ねえ母さん、この時計ってさ、こわれてるの?」
「そうね、たぶん普通に動くと思うわよ。」
「でも、ず~っと止まったままじゃん。」
「ねじを巻いてないからね…。」
「あっ、そうなんだ古い時計は電池じゃないんだね。」
「ふふ、この柱時計はね…、ねえ俊一は父さんのこと覚えてる?」
「うん、ちっちゃい頃肩車してもらったこととか覚えてるよ、おっきなおっきな、あっ母さん…。」
「…、この柱時計はね俊一の父さんとの想い出なの。
新婚旅行先で見つけてね、毎日のようにネジを巻かないと止まっちゃうんだけど、二人だけの頃も俊一が生まれて三人になってからも、ずっと私たちを見守っていてくれてたの。」
「ねえネジ巻いても良い?」
「…、もう少しこのままにしておいて欲しいかな、針も…。」
「5時36分って…。」
「うん…。」