「良郎、大学の方はどうだ?」
「うん、おじいちゃん、なんとかがんばってるよ、レポートとか結構めんどいけどね。」
「そうか、でも今はパソコンとかで書けるから楽になったと思うけどな。」
「そうでもないよ、うちの経営学の教授は手書きのレポートしかだめなんだよ。」
「はは、それは…、またレトロだな。」
「でしょ、でさ、さらにテーマがね…。」


「まぁ、教授といっても、実際に何らかの経営にたずさわった経験があって教授になったのか、机上の空論で教授になったのかってこともあるからな。」
「うん、おじいちゃんから教えてもらったことの方がって思う時もあるよ、バランスの話とかさ。」
「はは、経営学にも当てはまるんだぞ。」
「えっ?」
「より、効率よく会社を運営していこうと考えたらきちんとしたバランス感覚が必要なんだ。」
「うん。」
「でもな、こんな当たり前のことが理解できてない連中が多くてな。」
「そうなの?」
「作業効率ばかり重視して、人の心を大切にしないシステムを作った大企業があってな。」
「ははは、前に言ってたとこだね。」
「特に中間管理職たちはプレッシャーで大変らしい。」
「うん、こわれる人もいるんでしょ?」
「みたいだな、で、そのシステムを見習ってる会社もあってな…、はは、昨日居酒屋で愚痴を聞いてやった奴はな、まあ中堅クラスの企業で働いてる男だったんだけどな。」
「うん。」
「効率ばかり重視されてアルバイトで働いてる人間の心は無視されていて、やめてく人数に入ってくる人数が追いつかないってぼやいていたな。
求人関係だけで数ヶ月間、百万ぐらい使ったみたいだけど余裕がないってさ。」
「はは、馬鹿じゃない?  結局効率が悪くなってるんでしょ。」
「そうなんだ、どんな仕事だって慣れた人の方が作業効率は高くなるからな。
人を大切にしてれば、やめる人も少なくて結果効率も上がるって気づいてないわけだ。」
「バランス感覚に欠けてるわけだね。」
「まさにその典型だな…、ふっふ、経営学のレポートなんてな頭にバランスというキーワードを置いとけば結構簡単なもんだぞ。」
「う~ん…、でも…、やっぱめんどいよ。」