「祐樹くん、お客さんの入場が始まったが、子ども達からワクワク感が伝わって来たよ。
君達の色んな話は小学生の間でも話題になってるみたいだね。」
「はは、そうですか、それでは…、優香、客席へ行って、子ども達の様子を見て来てくれないか。」
「うん。」
「でな、優香の事を知ってる子も少なくないと思うんだ、その辺りの感触を確かめて、途中のコールアンドレスポンスに備えて欲しいのだけど。」
「分かったわ、打ち合わせ通りに進め易い様に準備して置くわ、開始前に一度報告に戻るわね。」
「ああ、頼むな。」

「祐樹さま、児童合唱団の子達は祐樹さまに教えられたという遊びで盛り上がっていました。」
「待ち時間は長いからな、どう、子ども達とは馴染めた?」
「はい、まだ戸惑う事も有りますが、彼らなりに気を遣ってくれます。」
「取材関係の人は?」
「子ども達とコミュニケーションをとってみえました、本番でカメラに緊張し過ぎない様にとの祐樹さまのご指示だそうですね。」
「まあ、緊張するなというのは無理な話だろうけどな。」
「それでも、全く話した事の無い人にカメラを向けられるのとは違うと思います。」
「気になる事は無かった?」
「ふふ、男の子のズボンが破れかけてた事くらいです、岡崎さんにお願いしておきましたから大丈夫だと思います。」
「はは、児童合唱団の制服を着てる事を忘れて暴れたのだろう。
う~ん、スポンサーを見つけて新調する事を考える時期かもな。」
「そんな心配までされているのですか?」
「女の子達がイメージの違うユニフォームを着たがっていたんだ。
うちがスポンサーになるのは、まだ早過ぎるだろ。」
「祐樹さまは子どもに甘いとスタッフの方が話してみえましたよ。」
「まあ、みんな真面目に取り組んでいるからね、普段はそれほど練習に付き合える訳では無いんだ、だから進歩してるのが分かるのさ。
あの中から次世代の仲間になってくれる子が成長してくれると思うよ。
今の所属だと色々面倒な事が有るからね。」
「先を見越して子ども達を可愛がっておられるのですか?」
「はは、それは最近後付けされた事情だよ、可愛い後輩達に児童合唱団を楽しんで欲しいのさ。
今日のイベントもね。
絵美も楽しんでくれると嬉しいのだけど。」
「ふふ、祐樹さまとご一緒なら、どんな事でも楽しいですよ。」