夏イベント一年生担当企画には市内五つの高校からの参加者が合同で取り組んでいる。
チームは高校毎に分けず、混合編成。
先輩方の方針なのだが、これが組織構築を難しくした事は間違いないだろう。
俺はチームメンバーに対しSNSの有効活用、だがSNSだけに頼る事無く直接会う機会を作るという方針を示した。
SNSは便利だが誤解を生む可能性が有るからだ。
実際トラブルになったのは、連絡時の誤解だった。
その誤解を早く解く事が出来たのは、第三者、主に上司役がそのやりとりを確認していたから。
これが如何に有効だったかは他チームへの支援や交流に入ったサブリーダー達の報告で確認出来た。
他チームでも便利な道具として使ってはいたが、使いこなせていなかった訳だ。

「剛太、太一くんが一旦チームリーダーになって様子を見る事になったみたいね。」
「ああ、茜は、あそこのリーダーと太一だったらどっちを選ぶ?」
「もちろん剛太よ。」
「真面目に答えてよ。」
「ふふ、言うまでもないでしょ、太一くんはもう企画の全容を把握して組織の立て直しを進めている。
その手際の良さにファンが増えつつ有るそうよ、チームのサブ達からも反発は受けてないみたい。
ちなみに太一くんは高校入学以来九人の女子から告られたけど本命は別にいるそうよ。」
「はは、そういった情報は何処から入って来るのかな?」
「女の子の娯楽なの。」
「それで、揉めてはいないのか?」
「前任者の人気は落ちてるし、男女問わず太一くんと剛太を認めているみたいよ。」
「そうか、理沙さんの方はどう?」
「リーダーやサブリーダー達の関係修復と組織の再構築を進めているわ。
たとえ仲が悪くても、論理的に考え作業を進める様にお願いし、その作業過程で互いの実力を見極めた上で、誰がリーダーに相応しいか考える様、提案したそうよ。」
「彼等の反応は?」
「理沙から論理的に話されて簡単には反論出来なかったみたい。
理沙を敵に回すなんて、余程のお馬鹿でない限りしないでしょうけど。
彼女からは、剛太の出番を作らずに済みそうと、連絡が有ったわ。」
「他の二チームは?」
「組織改革をする事で効率アップ出来そうだって。
サブリーダー達は、夏イベント一年生担当企画メインスタッフのほとんどを剛太中心に回せる体制にしようと考えているわ。
彼等からの報告をまとめたら、一度、目を通してね。
そこから参加者全員向けの組織構築参考資料と、メインスタッフ向けの資料をまとめるから。」
「ああ、有難うな。
自分を社長として会社組織のシュミレーションという、反発を受けかねない提案をさせて貰ったけど、皆が真剣に受け止めてくれたのは雑用担当のサブリーダーがきっちり仕事をしてくれたからだと思うよ。
ラッキーだったのかな俺は、うちのチームはサブリーダーのレベルが高くてさ。」
「でもね、他のチームだってレベルの高い人は少なくないと報告にあるわ。
私達がラッキーだったのは、持っている力を充分に発揮出来る組織構築を進めた剛太がチームリーダーだった事。
少なくともサブリーダー達は全員同意見、だから剛太中心にしようって考えているのよ。」
「はは、嬉しい様な申し訳ない様な…。」
「社長はゆったりと全体を見ていてくれれば良いのよ。」