キサワイ王国へは一月に岩崎社長夫妻と共に訪問する事が決まった。
すでに先乗り部隊は現地支社員と共に動いているが、総人口三百万人ほどの国、つまり茨木県の総人口程度。
現地からは、岩崎王国の力で国民の生活レベルを向上させ安定させる事は難しくないとの報告が届いている。
今までの調査結果から日本の過疎地を立て直すよりも簡単だと判断したという。
国王の後ろ盾も有る訳だが…。

「利害関係の把握はきっちり出来ているのかしら、桜の感覚ではどう?」
「私も長期の滞在という訳では有りませんでしたので、先乗り部隊とは別ルートで調べている所です。
ただ、私が心配しているのは、いきなり所得が増えた労働者の一部がギャンブルに走ってしまう事です、各国の支社が抱えている問題で、そのまま犯罪に繋がったケースも報告されています。
まずは、まともな娯楽施設を充実させる様に提案しておきました。」
「お金の使い方まで気を配らないとだめなのね。」
「ええ、それだけに教育組織としての岩崎高校生会議の存在が重要です。
先乗り部隊の連中もそう感じて高校生会議への遥香システム導入を早めるそうです。
まずは大学生中心に構築を始め、そこに学力の高い高校生を加えて行く、サポートは支社の社員と共にボランティアの形で、遥香姫親衛隊実働部隊も同じシステム内で編成して、遥香さま訪問の際に動いて貰う予定だそうです。」
「結局名称は岩崎高校生会議で通すの?」
「はい、今後の海外展開を考えた時、世界共通のIWASAKI KOUKOUSEI KAIGIとし、岩崎王国を支える世界的な組織に成長させて行こうという方向で進んでいます。」
「そうね、言語や宗教などの問題が無ければ数カ国で一つのシステムという事も有りよね。
高校生という名称を使う意味は幾らでも理由をでっち上げる事が出来るものね。」
「ええ、まずは若者達の意識改革となりますが、現地支社の活躍がすでに知られている状況での、友好条約締結とあって、かなり好感度を持たれている様です。
現地で画策しているのは、一気に岩崎王国の国民を増やす事、岩崎王国の国民になっても二重国籍となる訳では有りませんから。」
「メリットは?」
「遥香さまから国民に向けてのメッセージとして、愛ある行いを勧めて頂ければ教育的効果が大きいのではないかと。」
「姫度は上げようとしてる…、でも影響力はどうかしら。」
「昨日連絡を取った先乗りスタッフは、遥香さまの訪問決定後、一気に遥香さま関連グッズの売り上げが伸びたと話していました。
キサワイ王国から遥香姫親衛隊へ登録する人も増えています。」
「う~ん、キサワイ王国のシステムへはもう日本からでも参加出来るの?」
「はい、行政関連で組み始めたシステムへはアクセス出来ませんが、支社で構築しているシステムと高校生会議へのアクセスは問題有りません、まだ内容は薄いですが。」
「一度、様子を見ておくわ…、それと…、キサワイ王国の後に訪問させて頂く二か国でもシステム構築は進んでいるのよね?」
「はい、支社では導入済みで、高校生会議への展開も間もなく始まります。」
「国民の方は岩崎王国をどう捉えていらっしゃるのかしら。」
両国とも、遥香さま訪問決定を受けて盛り上がっています、映像が届いていますのでそれをご覧頂ければ熱気が分かりますよ。」
「もう少し状況を把握しておく必要が有るわね、CDやDVDの制作に時間を取られていて…。
一区切りついたところだから、久しぶりにみんなでチェックをしましょうか。」
「お願いします、海外から遥香姫親衛隊に登録してくれる人達も、遥香さまという姫に憧れています、その気持ちを大切にして、さらに盛り上げたいです。
えっと…、明後日、二時間ぐらいの間、余裕の有るチーム遥香メンバー全員で三か国の現状観察という事でよろしいですか?」
「そうね、桜の方で仕切ってくれる?」
「勿論です、では準備に入らさせて頂きます。」

日本の一企業体がバーチャルで作り出した岩崎王国の姫である私。
岩崎王国はリアルな国に囚われる必要はない。
現実の国境を越えた姫という存在を私達は演出しようとしている。