今日はお泊りのお客さんが来るからって、母さん張り切ってるな。
年末で、落ち着かないと思うのに。
父さんは引っ越したばかりで大掃除の必要もないからなんて、お気楽だよね。
あれっ、もう到着?
横山さんと、あっ、赤木さんも一緒か。
うわっ、何か恰好良い人が…、す、すごく綺麗な女の人もいる…。
ご挨拶に行かなきゃ。

「美里、ご挨拶済んだらちょっと手伝ってくれない。」
「は~い。」

父さんの会社の偉い人達と大きな団体のリーダー達って事だけど、まだ大学生って…、恰好良いだけだけじゃなくて、すごく頭の良い人達なのかな?
横山さんの方がうんと年上の筈だけど、ほんとに目上の人って話し方してる。
赤木さんが話してる佐々木さん…、イケメンよね、母さんが張り切る理由が分かる気がする…。

「どう、高校の事は考えてるの?」
「はい、家から通うとなるとあまり選べないので、もう決まった様なものです。」
「もう決まったって、受験は?」
「高校に入るだけなら特別な事をしなくても、私なら推薦で入れるって先生や先輩方が話して下さいました、でも大学進学を考えると今からでもかなり頑張らないとだめかもです、ただ将来についてはまだまだぼんやりしていて何も決まってないので色々微妙なんです。」
「まだ中学生だから、あせることもないよ。」
「そうですよね、佐々木代表の本も読まさせて頂いているのですけど、私にはまだ難しくて。」
「はは、もっと年長の人を意識して書いたからね、でもあれを読もうという気持ちの有る人がここの中学の生徒会長で嬉しいよ。」
「ふふ、皆さんがここを特別な場所に選んで下さった事が私は嬉しいです。
ここの大人達だって、これ以上人口を減らさない様にって頑張っていますが簡単な事ではなくて。」
「皆さん、そういう事の専門家でもないからね。」
「専門家って?」
「とてもおいしい果物を作る人が、それを売るのも上手とは限らないでしょ。
だから売るのが上手い人に任せた方が良いのだけど簡単な話でもない、お金の問題とか色々絡んでくるからね。
自分達は過疎地再生の専門家育成を目指してるんだよ、始まったばかりだけど。」
「上手く行きそうですか?」
「すべてメンバー次第だね、ただ、過疎地を守って行く事は都市部に住む人の力なくしては難しいという事を理解して下さってる方ばかりだから、何とかなるかも。」
「ここがどうなって行くのか楽しみです、私達も動きますから、お役に立てそうな事が有ったら教えて下さい。」
「ああ、お願いするよ、今日は赤木さんにそのお願いをする為に来た様なものだからね。
二つの柱は理解してくれたかな?」
「横山さんと飯山さんの会社、それとプロジェクトリーダーがボランティア系の取りまとめをして行くって事ですよね。」
「うん、それでさ…。」

佐々木さんは赤木さんと普通に…、相手が中学生だからといって偉そうにするでもなくお願いしてる。
この人は嘘のない人だ、で、過疎地の事を考えてる…。
でも赤木さんも恰好いいな、あんな年上の人相手でもちゃんと話せて。
私もあんな中学生になれるかな…。