「あっ。」と思わず声を上げる山上。

(牡丹だ!)

彼は牡丹の花に心を奪われる。

(それにしても、こんな所に自生するような品種じゃないと思うけど…。)

と、辺りを見回す。
そこは、ハイカーのために適度に整備されていてベンチがあり作業着姿の老人が座っていた。

「驚いてくれて有難うな。」

老人から声をかけられる、山上。

「は、はい、こんな山の中でこんなに艶やかな牡丹に出会うとは思ってもいませんでした。」
「はは、わしのいたずらなんじゃよ。」
「えっ? いたずらなんですか?」
「うちの庭からここに移植してな、この池に来る人を驚かせてやろうって。」
「確かにこれだけ立派だと驚きます。
でも、掘って持ち帰る人がいるかもしれませんよ。」
「まあ、それならそれでいい、持ち帰った人がちゃんと世話してくれればな。
「わしも後、何年生きられるか解らないからな、この牡丹にはずいぶん楽しませてもらったし。」
「そうなんですか…。」
「もっともわしは毎日のようにここに来ているから、簡単にお持ち帰りとはいかないんじゃがな、はっは。」
「毎日なんですか?」
「ボランチアって奴をやっていてな、この池の周辺の管理者って感じだな。」
「へ~、じゃあおじいさんが、この神秘的な池を守っているのですね…。
あっ、そうか神秘的に見えるように管理してるのですね?」
「お主なかなか見る目があるのう。
手を加えすぎても、手を抜きすぎてもこの風景は守れないんじゃ。
牡丹はまあ、日光東照宮の陽明門で、完璧はいけないと1本の柱をわざと逆さまにしている様なもんじゃな。」
「はは、でもあの位置なら池を見ている時は目に入りませんから、それも計算の内ですか?」
「まぁな、そうだ、お主、独身か?」
「は、はい。」
「うちの孫娘がな…。」


【ホテルクラブ】世界のホテルを予約。口コミ情報もあるので安心。

花の色の効果