「結構難しいのよ。」
「そんなことやったことがないから…。」
「シュート入ると思う?」
「…、俺なら…。」
「ねえ、状態が安定したら見に行かない。」
「…。」
「君は健康なの、確かに足は今まで通りには機能しないけど他は何ともないからね。」
「…。」
「リハビリだってゆっくりで良いから…。」
聡子は突然涙ぐむ。
とまどう蒔神に…。
「私の息子は高校生の頃に事故でね…。」
「…。」
「ごめんなさい。」
そう言い残して聡子は病室を後にした。

蒔神は色々考え始めることになる。
病院のベッド、考える時間はたっぷりある。
聡子の言葉の意味をじっくり考えていたところへ病院の院長が訪れる。

「蒔神くん調子はどう?」
「は、はい…。」
「川上くんがね、あっ聡子さんって言った方が分かり易いかな、彼女から君に変な話をしてしまったからと報告されてね。
少し説明させてもらおうかと思って来たんだけど。」
「はい。」
「彼女は事故で息子さんを亡くされていてね、君ぐらいの歳だったんだ。」
「やはり、そうだったのですね。」
「君と話していたら思い出してしまって、なんて涙ながらに話していてさ。」
「自分は聡子さんにずいぶん失礼な態度をとっていた気がします。」
「ふむ、そうなんだ。
まぁ、君のような目に遭ったら誰しもそんなものだから、あまり気にしなくて良いよ。
もちろん川上くんも分かっているからね。
そうそう、川上くんからはどれぐらいの話を聞いたかな?」
「車椅子バスケットのこととかですけど。」
「うん、君はある意味ラッキーだったんだよ、足以外は全部大丈夫だから。」
「足がだめになったことは自分にとって…。」
「それはわかるよ、でも今君に考えて欲しいことは何ができるか、ということなんだ。
今、何がしたい?」
「やはりバスケです。」
「もうしばらく様子を見て体が安定したらできるようになるよ。」
「でも、本当のバスケじゃないんでしょ?」
「うん、もっと大変かもな。」
「えっ?」
「腕を思いっきり鍛え上げないと上へは上がれないからね。」
「リハビリでちんたらやるスポーツじゃないのですか?」
「まぁそんな人もいるけど、君には世界を目指して欲しいな。」
「世界ですか?」
「もちろん簡単ではないけど…、そうだ今度名古屋で大会があるから、まずは見に行こうか。」
「は、はい。」
「それまでには普通に車椅子を扱える様になっていて欲しいかな。」
「はい。」


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