「あらっ、これって桜?」
「ああ。」
「ちょっと気分的に…、暗い感じがしない?」
「そうかな、じゃあ…。」



「モクレンね。」
「うん、写真としてはいまいちなんだけど、空の青と花の白が気持ちよくてさ…、そうだこれはどう?」



「この花は?」
「こぶし。
この花を見てると、なんとなく君を思い出しちゃうんだ。」
「ふふ、私はこんなに素敵じゃないわよ。」
「で、こっちがね…。」



「ずいぶんさっきとは雰囲気の違う写真ね。」
「これは、特別自慢できるほどの写真でもないんだけど…。
一月にカメラを手にしてから、梅を撮ろうとしてたんだ。
花を撮りたくてさ。
でも、いまいち思うように撮れなくてね。
まあ、今にして思えば、風の強い屋外で梅のアップを撮ろうとしてたことが間違いだったんだけどな。」
「はは、風じゃ…、花に、じっとしてなさいとも言えないしね。」
「で、春になって、撮影日和の日に、まあようやくイメージ通りに写せたかなって花がこれさ。」
「ふ~ん、で、この花でも、誰かを思い出すの?」
「思い出すって感じじゃないけど、ほら、この前行った居酒屋の女将さん。」
「あっ、そうね、和服姿が似合っていて、元気もよくて。」
「だろ。」
「他には?」
「アルバム見てよ。」




「拡大もできるからね。
大きくすると俺の下手な写真でも少しはましに見えるってことなんだ。」