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新学期-415 [花鈴-42]

「それで納得されたのです?」
「納得した訳でも無いのですが、面倒事が続いていましたから、どうでも良いと。」
「もっと素敵な彼女と出会えるチャンスが出来たと、考えることは?」
「言われてみれば…、これからはそう考える様にします。」
「それでトラブルの整理は出来てるのですか?」
「両親の離婚はほぼ確定、その原因となった父の会社の倒産、そのどちらも自分にはどうしようもない事です。
 元カノは自分が社長の息子だと言うことに価値を感じていたのかも知れません…。」
「あらっ、倒産してしまったの?
 倒産寸前とは聞いていたのだけど。」
「親父は諦めてないみたいですが、母は時間の問題だと。
 原因は色々有るそうで、その中に父の浮気も有るのだとか…。」
「息子として会社の為に頑張ってみるとかは?」
「三回生になったばかりの自分には何も出来ないですよ。」
「成程、彼女にフラれる訳だ。」
「えっ?」
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新学期-414 [花鈴-42]

 そんな流れから会う事になったのは、武田健司さん。

「自分に興味を持って下さったのは、やはり社会学的視点からですか?」
「ええ、私が今まで接して来た学生とは違う体験をされてると聞きましたので。」
「そんなに特別な体験をした訳では無いのですが…。」
「色々重なったのですよね?」
「冷静に考えれば悪循環が有ったと思っています。
 家庭の問題に気持ちが持って行かれてたことで、新たな問題の切っ掛けを作ってしまっていたとか。
 彼女にフラれたのは、そんな感じなのですよ。」
「彼女さんに理解を求め協力して貰うことは出来なかったのですか?」
「彼女は面倒事が嫌だったのだと思います。
 それ以前に別れるタイミングを計っていたのかも知れません。」
「男女の事は良く分かっていませんが、武田さん的には、それで納得?」
「結婚することも考えていたのですよ、ですが結果的に…。」
「武田さんのトラブルに対して手助けでは無く、逃げることを選択したと考えて良いのですか?」
「それだけなのかは分かりませんが、別れ話は簡単なことでした。」
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新学期-413 [花鈴-42]

「合宿所に来ている大学生でもですか?」
「ええ、真面目に生き過ぎて来た反動なのかと思える人も、まあ、愚痴を言い過ぎるぐらいで実害は無いのですが、ストレスを抱えてる人がいます。」
「そのストレスをお酒の力で?」
「根本的な解決が難しくてのストレスみたいで…。」
「ストレス社会と言う言葉に触れた時に調べてみたことは有るのですが、私の周りにそんな人が居なくて良く分からなかったのです。
 そんな人とも話してみたいですね。」
「姫さまを尊敬してると話してましたから喜ぶと思います。
 お酒を飲んでない時は普通に優秀な学生ですから、是非会ってあげて下さい。」
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新学期-412 [花鈴-42]

「はい、少子化で若者が少なくなった上に教育現場の労働環境の悪さが知られる様になり教員を目指す人が減って来ているのですが、モンスターペアレンツの存在も関係していると思います。
 姫さまの小学校にもいるのですか?」
「田舎暮らしを選択人達だからか、そんな人はいませんし、いたら村八分になるかも。」
「都会とは人間関係が違いますものね。」
「結局いじめなのですよ、気の弱い子をいじめるのと同じ感覚で立場上強く出られない人達を攻撃対象にして楽しんでる様な。
 他者より優位に立っていると思いたいと言う本能がそうさせるのでしょうが。」
「本能ですか…。」
「社会集団の中ではその本能をコントロールする必要が有るのですが、出来ない人もいるのです。」
「いますね、普段は大人しい人がお酒を飲むとコントロールが効かなくなることも多々有ります。」
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新学期-411 [花鈴-42]

「そもそも派遣社員レベルの臨時採用的公務員の存在がおかしいのです。
 人の採用に関して、きちんと予算を組むべき所を、税金だからと躊躇する首長に問題が有ると思いませんか?」
「御免なさい、政治のことには疎くて…。」
「政治に疎い大学生を生み出してることも問題です。
 自分の国、その将来をまともに考えられない人が政治家となって多くの国民に失望を与え、政治に対して諦める人ばかりになってるのが、今の日本だと聞いたことが有ります。」
「…。」
「真面目に働いてる公務員でも、その給料が税金で賄われてるからと言って気軽に攻撃対象とされてる人がいることは御存じですか?」
「いえ…。」
「モンスターペアレンツにとって公立学校の教師はおもちゃに過ぎないのですよ。」
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新学期-410 [花鈴-41]

「労働環境ですか…。」
「気持ち良く働ける環境って大切な事だと思いません?」
「勿論です。」
「残念ながらノルマなどのプレッシャーに押し潰されそうになりながら働いてる方は少なく無い様です。
 充分な給料を得ていたしてもどうかと思いますが、大したことの無い給料で働いて、自分をすり潰している人もいるのです。
 株式会社花鈴が事業所の買収を積極的に進めて来たのは、過疎地の会社で働く人達の労働環境を改善したいと言う思いが有ったからで。」
「それが成功しているから…。
 自分の将来を考える様になって知ったのは、正式な教員になる為に不利益を受け入れている人の存在です。」
「非常勤講師との肩書を持つ人達ですね?」
「ええ、能力の低い人が教員になるのはどうかと思っていたのですが…、微妙だと思いませんか?」
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新学期-409 [花鈴-41]

「一口に認知症と言っても、その進行具合によって様々なのですよ。
 怒りっぽくなった人は周りに不快感を与える訳ですが、暫くすると入院したりして、デイサービスに来なくなったりします。
 穏やかな人達は談笑して楽しんでるのですが。」
「認知症の方をお世話するのは大変そうです…。」
「ええ、ですが、それを前提に働いてる訳ですから。
 でも我が社では相談して他の仕事もして貰っています。
 毎日ご老人の世話ばかりをするのではなく、店の仕事や集荷や配達をしたり。
 株式会社花鈴が複数の事業所を抱えていることで可能なのですが、複数の業務をこなして貰うことによって出会いの機会も増えるのです。
 デイサービスセンターだけで働いてたら視野が狭くなってしまうと思いません?」
「確かに…、日によって違う仕事に就いたりするのですか?」
「時間単位で複数の作業をしている社員が多いです。
 事務系の社員が一時間だけ畑仕事をするとか。」
「それだと移動や着替えたりする時間のロスは無いのですか?」
「ブラック企業では有りませんから、そこまでロスを気にしていません。
 気分転換出来る時間が有るから、作業に集中出来ると好評なのですよ。
 椅子に座っての仕事ばかりでは体にも良く有りませんので。」
「メリットが有ると?」
「基本的に個人の希望を聞きながらスケジュールを組んでいますからね。
 そこに一手間掛かってはいるのですが、結果的に労働環境の質を上げられていると結論付けられています。」
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新学期-408 [花鈴-41]

「そんな人形が?」
「音声を認識して簡単な対話が出来るの。
 ちょっと遊んでみたけど面白かったわ。
 お歌を歌って、とお願いすると歌ってくれるのよ。
 ある認知症の方はご自分のベットに寝かしつけて一緒に寝ているのだとか。
 人形の話す独り言に応えて微妙な対話が成立することも有るそうでね。」
「へ~。」
「デイサービスの担当者が、朝、迎えに行くと息子さんが人形と一緒に送り出すそうなのだけど、行ってきますと言うと、それを聞きとれた時は何種類かの反応を示す。
 でも、聞き取って貰えないことも有るそうで…。」
「パソコンの音声認識も微妙ですものね。」
「試してみました?」
「はい、現時点では手を動かした方が早いです。」
「ですよね。」
「そんな人形をデイサービスセンターにも置いているのですか?」
「ええ、ただ、その子は取り合いになって乱暴に扱われることも有るそうなので、今後の方針は検討中だそうです。」
「認知症の方はそんな感じなのですか…。」
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新学期-407 [花鈴-41]

「デイサービスに通われてるご老人でも、ちょっとした作業を手伝いたいと思っている方や子どもの相手をしたいと思われる方がおられるのです。
 うちのセンターでは、そんな思いを積極的に後押しすることで認知症の進行を遅らせることが出来たらと考えていまして。」
「認知症のことは良く分からないのですが、進行して行くものなのですか?」
「ええ、認知症を直す薬は無いみたいですが、進行を遅らせる薬は多々有り、新薬では高額なのが話題になりました。
 患者さん個人レベルで考えると薬の効果は判断しにくいのですが…。」
「個人では薬を使わなかった場合と比較出来ませんものね。」
「実際問題として、環境の変化と言う要因も有ります。
 デイサービスに通い始める前と比べ、子どもとの時間を過ごす様になったからか、表情が豊かになった人もいるそうで。
 合う合わないが有るみたいですし、認知症が進むと怒りっぽくなったりとかの症状が出る場合も有り、全員に有効とは言えません。
 一応、子どもと遊ぶ時間を取ってる人達のデータは整理して貰っていいるのですが、認知症の進行を遅らせることに有効なのかどうかの判断は難しいです。
 科学的な実証が出来なくても続けて行く方向で動いていますが。」
「見守りが大変だったりするのですか?」
「今はデイサービスの職員と保育の職員に意見交換して貰ってる段階です。
 無理の無い範囲で続けて行けたらと考えていまして、問題を起こしそうな人は人形に相手をして貰うとか。」
「人形相手では…。」
「おしゃべりしてくれる人形は結構人気が有るみたいですよ。」
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新学期-406 [花鈴-41]

「そんな感じなのですか…。」
「問題が有るとすれば従業員の生活環境かしら。
 田舎暮らしに抵抗の無い人にとっては関係の無い話だけどね。」
「母子家庭の人からの応募が有ると聞きました。」
「社会的にハンディをお持ちの方も受け入れて行く姿勢を示しましたので。
 実際、母子家庭の授業員は増えつつ有ります。
 移住に不安の有った人達も、仲間が出来たことで安心して下さってるみたいです。」
「守られて?」
「社会的弱者でも、都会から離れられない人は我々の支援対象には成りませんが、田舎暮らしに挑戦してみようと言う人には最大限の支援をと考えています。
 老人向けのデイサービスセンターの隣に保育施設をオープンさせたのも従業員の為なのですよ。」
「あっ、ご老人の中には子どもと遊ぶ方もおられるとか。」
「職員に見守られた状態なら、どちらにとっても良いことだと思いませんか?」
「ええ、確かに。」
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