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赤澤省吾-04 [F組三国志-01]

「へ~、お洒落なカフェだね。」

 カフェなんてめったに入らない俺にとっては、ちょいとプレッシャーを与えてくれる大人な雰囲気の店ではあった。
 でも、ここまでで緊張がほぐれ、無難にというか楽しく会話して来たのだから何とかなるだろう、秋山さんはとても話し易い人だ。

「あっ。」
「何?」
「Bud Powell のCleopatra's Dream。」
「え?」
「ほらこの曲。」
「このピアノ?」
「うん、うちの親父、JAZZが好きでさ。」
「へ~。」
「だから小さい頃から自分も耳にしていてね。」
「そっか、私んちは母さんがクラシック好きで、だから、私もショパンとかシューマンの曲が好きになったの。」
「そうなんだ、俺もシューマンのクライスレリアーナとか好きだよ。」
「うんうん、何か嬉しいな、自分の周りの友達ってみんなJポップとかばっかでさ。」

 しばしの音楽談義。
 きっかけをくれたBud Powellに、そして親父の趣味の広さに感謝だ。
 彼女が口にする演奏家のCDが家にあったりする。
 もちろんクラスのことを話し合ったりしたから、ずいぶん長くカフェにいた。

「あっ、時間良かった?」
「そうね、家には連絡入れておいたから大丈夫だけど、そろそろ…。」
「出よっか。」
「うん。」

 地下鉄の駅まではすぐ。
 そして…。

「どこで降りるの?」
「覚王山よ、赤澤くんは?」
「覚王山。」
「えっ?」

 神様、有難うございます。
 今日一日でずいぶん心の距離が近づけたと思っていたら、家も近かったなんて。
 それにしても隣の中学出身だったとは…。
 朝、自分が使う出入口とは真反対の出入り口を使い、自分は地下鉄の先頭車両、降りたら早足で学校へ、彼女は最後尾に乗り、降りたらのんびりと学校へということだったらしい。
 つまり、同じ列車に乗っていても顔を合わせることが全くなかったということだ。
 ここは思い切って…。

「ねえ、明日待ち伏せしても良いかな?」
「待ち伏せ?」

 しまった、待ち伏せと言うワードはミスチョイスだったか…。

「待ち伏せじゃなくて待ち合わせでしょ、もちOKよ。」

 やった~!
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