07 緑化 [KING-05]
惑星への引っ越し作業は少しずつ進んでいる。
囲いを作りながら家畜を移動させる作業など手間の掛かることは多いが、急ぐ必要はなく人々は作業を楽しんでいる様だ。
環境の変化が動物にストレスを与えないか心配していたが目立ったトラブルは無く、惑星で暮らす家畜の数は順調に増加中
惑星への移動に合わせ環境調整をして来たことが良かったのか、人も家畜も健康を害することはなかった。
農作物は気候を考慮して、今まで栽培して来た作物とは違う品種の栽培にも取り組み始めた。
第四惑星に降り立つまで、惑星環境に合う作物の試験栽培をして来た事も有り、今の所、大きな問題は起きていない。
ただ、食料の備蓄は充分有るが、広大な惑星全体の緑化を考えると植物資源は全く足りていないと言える。
緑化が進み始めているのは、まだ町の周辺のみに過ぎないのだ。
「尊、植物が増えないと惑星の環境が安定して行かないのだろ?」
「はい、町の環境は人工的に維持している状態で、目標としている自然な形での循環には時間が掛かりそうです。」
「町の人達にも緑化に対しての意識を高めて貰うべきではないのか?」
「そうですね、作業は順調に進んでいますので、周辺地にも目を向け緑化作業を考えて貰えると、僕らは遠隔地の緑化に力を入れられます。
箱舟宇宙船の農地は、少しずつ惑星の緑化促進に向けての育苗中心に切り替えて行こうと考えていましたが、皆さんに手伝って頂けると早くなります。」
「まずはこの惑星の現状を知って貰う必要が有りそうだな。」
「そうですね、皆さんをちょっとがっかりさせてしまうかも知れませんが、空からの映像を中央広場のスクリーンで紹介してみましょうか。」
箱舟船団と町を繋ぐゲート周辺は中央広場として整備されつつあり、市民全員が集まれるだけの広さが有る。
ここに大型のスクリーンやモニターを設置し始めているのはテレビを導入する代わりで、人が集まる娯楽の中心として行く予定。
尊が、改めてこの惑星の現況を紹介するとアナウンスした所、多くの人が集まった。
大型スクリーンには、第四惑星の様々な場所を様々な高さから撮影した映像が映し出され始める。
私達は同じ映像を城のモニターで見ながら…。
「こうして空からの映像を見せられると、町は惑星上の点に過ぎないのだと改めて感じさせられるわ。
町にいると気付かないけど、広大な荒れ地が広がっている惑星と言うのが現状なのね。」
「なあ、愛、緑化作業は難しいのか?」
「そうでもないのだけど、今は土地の広さに対して種子が少なすぎるし、箱舟としての役割を考えたら気軽に試せない種子も有るわ。
小麦や牧草なら、枯れてしまっても次への肥料になるぐらいに考えて良いのだけど。
生き物の循環を促す微小な生物が増える必要も有るでしょ。」
「そうか…、一旦増え始めたら一気に広がりそうな植物も有るとは言え、大地の広さに追い付くまでには時間が掛かりそうだな。」
「惑星が牧草ばかりでは味気ないし、木は生育に時間が掛かるのよね。」
「愛、町の周辺以外はまだ緑化に取り組んでいないのか?」
「赤道付近で一か所、南半球で一か所、気候調整をしながら始めていて、赤道付近は町周辺より早く植物が生長してるわ。
牛や豚がそれを食べて、その糞が微小な生き物によって分解され植物の生長を促すという循環がささやかに出来つつ有ってね。」
「その映像も人々に見せて行くのか?」
「勿論よ、手付かずの所ばかりを見せられては残念な気持ちしか残らないでしょ。」
「愛、そうでもなさそうだぞ、スクリーン前での会話を拾い聴いているが、緑の範囲を広げて行く話で盛り上がっているのが分かる。
和の国の森でどんぐりを拾ってとか、挿し木で増やすとか、散歩道を海と山に向けて整備して行く話は具体的な案が出て来ているよ。
食料生産に余裕が有るのだから、城の子に頼ってばかりではなく自分達もこの惑星を住み易くする為に働こうってさ。」
「尊が協力要請の話をする前に、皆さんその気になってるということなの?」
「みたいだな。」
緑化推進は人々にとって新たな目標の一つとなった。
緑に覆われた大地を作って行くのは自分達なのだと。
希望の島で花の種を採取するのは子ども達の役目となる。
大きい子達は苗床を作り生育状況を観察。
大人から季節の話を教えられ、今回芽が出なかったり枯れてしまったとしても時期を変えて挑戦すれば…、そう、子ども達は、これから初めての夏を経験する。
翔は極端に暑くならない様に調整すると話していたが、四季の有る生活が始まったのだ。
川沿いでは馬車道と散歩道を作る作業と共に花壇の整備が始まり、希望の島から移植された花が目を楽しませ始めた。
そこには様々な木が植えられ始めたが、勿論若い木ばかりだ、枯れてしまうかも知れないが敢えて植えた木も、それぞれの木々は大人達の地球での想い出を象徴していたりする。
「海までの道はもう直ぐ完成ね。」
「ああ、歩いて海水浴に行けそうだな。」
「望、海の生き物はどうなってるの?」
「和の国の海でちっちゃい子達が採って来た海藻とか蟹や貝から始めているけど、海の広さを考えたら微々たるもの、増えるまでには時間が掛かるでしょうね。
魚を泳がせても良いのだけど、餌が充分に増えてからでないと難しそうなの。
当分の間、食卓に並ぶ魚は和の国の海だけが頼り、川も餌が増えないとね。」
「餌を増やしている段階か?」
「ええ、でも、餌の餌が増えないとだめだから時間が掛かるのよ。」
「そういう餌の繁殖力は旺盛なのだろ?」
「それでもね、データで見る地球の日本の様な状態になるまでには何年掛かるのか見当が付かないわ、マリアさまが箱舟に入れなかった生き物がいないと、生きて行けない生物がいるみたいだし。」
「そうか…、かつての地球では絶滅して行く種も少なからず存在したのだが、原因は環境の変化、その変化は人間の手によるものも多く、自然界のバランスを壊して来たのが人間だった。
絶妙な自然界のバランスを創り出す事の難しさは分かるよ。」
「この惑星は人類にとって地球以上の環境にするのよね、でも城の子の力無くしてはこれを維持出来ないのでしょ?」
「今はまだね…、でも、海中を含めて植物が充分に広がり生長すれば、動物と共存しながら大きな循環を完成させられると思うわ。」
「この惑星以外にも人の住める惑星を作って行く計画が有るのだろ、そっちはもっと時間が掛かると言う事なのか?」
「今の所、実験の候補に上がってる惑星は重力がこことは違っていてね、本格的に人が住める様にとは考えていないの。
微生物の繁殖だけに終わってしまいそうな惑星も有るし、それでも秘密基地には段階的に重力を変化させて行く研究施設が完成し、それぞれの惑星向けに実験生物の繁殖を試み始めたところよ。」
「違う環境に適応する生物と言うのは興味深い、どれぐらいの範囲まで適応出来るのだろうな。」
「そこが研究のメインになると思うわ、都合良く環境改善に役立ってくれる植物が見つかれば、様々な作業をスピードアップさせられるのだけどね。」
「簡単ではなさそうだ、その植物が次のステップへの障害になる可能性は否定出来ないだろ。
まあ、今はこの惑星の緑化が成功すれば良いのだが。」
「シミュレーション的には問題ないのだけど、どれだけ時間が掛かるのかが掴みきれてないの。」
「まだ、変数が多過ぎるという事か?」
「ええ、マリアさまも、本格的な惑星改造は初めてだと言うし。」
「だろうな、元々は傍観者だったのだから。」
囲いを作りながら家畜を移動させる作業など手間の掛かることは多いが、急ぐ必要はなく人々は作業を楽しんでいる様だ。
環境の変化が動物にストレスを与えないか心配していたが目立ったトラブルは無く、惑星で暮らす家畜の数は順調に増加中
惑星への移動に合わせ環境調整をして来たことが良かったのか、人も家畜も健康を害することはなかった。
農作物は気候を考慮して、今まで栽培して来た作物とは違う品種の栽培にも取り組み始めた。
第四惑星に降り立つまで、惑星環境に合う作物の試験栽培をして来た事も有り、今の所、大きな問題は起きていない。
ただ、食料の備蓄は充分有るが、広大な惑星全体の緑化を考えると植物資源は全く足りていないと言える。
緑化が進み始めているのは、まだ町の周辺のみに過ぎないのだ。
「尊、植物が増えないと惑星の環境が安定して行かないのだろ?」
「はい、町の環境は人工的に維持している状態で、目標としている自然な形での循環には時間が掛かりそうです。」
「町の人達にも緑化に対しての意識を高めて貰うべきではないのか?」
「そうですね、作業は順調に進んでいますので、周辺地にも目を向け緑化作業を考えて貰えると、僕らは遠隔地の緑化に力を入れられます。
箱舟宇宙船の農地は、少しずつ惑星の緑化促進に向けての育苗中心に切り替えて行こうと考えていましたが、皆さんに手伝って頂けると早くなります。」
「まずはこの惑星の現状を知って貰う必要が有りそうだな。」
「そうですね、皆さんをちょっとがっかりさせてしまうかも知れませんが、空からの映像を中央広場のスクリーンで紹介してみましょうか。」
箱舟船団と町を繋ぐゲート周辺は中央広場として整備されつつあり、市民全員が集まれるだけの広さが有る。
ここに大型のスクリーンやモニターを設置し始めているのはテレビを導入する代わりで、人が集まる娯楽の中心として行く予定。
尊が、改めてこの惑星の現況を紹介するとアナウンスした所、多くの人が集まった。
大型スクリーンには、第四惑星の様々な場所を様々な高さから撮影した映像が映し出され始める。
私達は同じ映像を城のモニターで見ながら…。
「こうして空からの映像を見せられると、町は惑星上の点に過ぎないのだと改めて感じさせられるわ。
町にいると気付かないけど、広大な荒れ地が広がっている惑星と言うのが現状なのね。」
「なあ、愛、緑化作業は難しいのか?」
「そうでもないのだけど、今は土地の広さに対して種子が少なすぎるし、箱舟としての役割を考えたら気軽に試せない種子も有るわ。
小麦や牧草なら、枯れてしまっても次への肥料になるぐらいに考えて良いのだけど。
生き物の循環を促す微小な生物が増える必要も有るでしょ。」
「そうか…、一旦増え始めたら一気に広がりそうな植物も有るとは言え、大地の広さに追い付くまでには時間が掛かりそうだな。」
「惑星が牧草ばかりでは味気ないし、木は生育に時間が掛かるのよね。」
「愛、町の周辺以外はまだ緑化に取り組んでいないのか?」
「赤道付近で一か所、南半球で一か所、気候調整をしながら始めていて、赤道付近は町周辺より早く植物が生長してるわ。
牛や豚がそれを食べて、その糞が微小な生き物によって分解され植物の生長を促すという循環がささやかに出来つつ有ってね。」
「その映像も人々に見せて行くのか?」
「勿論よ、手付かずの所ばかりを見せられては残念な気持ちしか残らないでしょ。」
「愛、そうでもなさそうだぞ、スクリーン前での会話を拾い聴いているが、緑の範囲を広げて行く話で盛り上がっているのが分かる。
和の国の森でどんぐりを拾ってとか、挿し木で増やすとか、散歩道を海と山に向けて整備して行く話は具体的な案が出て来ているよ。
食料生産に余裕が有るのだから、城の子に頼ってばかりではなく自分達もこの惑星を住み易くする為に働こうってさ。」
「尊が協力要請の話をする前に、皆さんその気になってるということなの?」
「みたいだな。」
緑化推進は人々にとって新たな目標の一つとなった。
緑に覆われた大地を作って行くのは自分達なのだと。
希望の島で花の種を採取するのは子ども達の役目となる。
大きい子達は苗床を作り生育状況を観察。
大人から季節の話を教えられ、今回芽が出なかったり枯れてしまったとしても時期を変えて挑戦すれば…、そう、子ども達は、これから初めての夏を経験する。
翔は極端に暑くならない様に調整すると話していたが、四季の有る生活が始まったのだ。
川沿いでは馬車道と散歩道を作る作業と共に花壇の整備が始まり、希望の島から移植された花が目を楽しませ始めた。
そこには様々な木が植えられ始めたが、勿論若い木ばかりだ、枯れてしまうかも知れないが敢えて植えた木も、それぞれの木々は大人達の地球での想い出を象徴していたりする。
「海までの道はもう直ぐ完成ね。」
「ああ、歩いて海水浴に行けそうだな。」
「望、海の生き物はどうなってるの?」
「和の国の海でちっちゃい子達が採って来た海藻とか蟹や貝から始めているけど、海の広さを考えたら微々たるもの、増えるまでには時間が掛かるでしょうね。
魚を泳がせても良いのだけど、餌が充分に増えてからでないと難しそうなの。
当分の間、食卓に並ぶ魚は和の国の海だけが頼り、川も餌が増えないとね。」
「餌を増やしている段階か?」
「ええ、でも、餌の餌が増えないとだめだから時間が掛かるのよ。」
「そういう餌の繁殖力は旺盛なのだろ?」
「それでもね、データで見る地球の日本の様な状態になるまでには何年掛かるのか見当が付かないわ、マリアさまが箱舟に入れなかった生き物がいないと、生きて行けない生物がいるみたいだし。」
「そうか…、かつての地球では絶滅して行く種も少なからず存在したのだが、原因は環境の変化、その変化は人間の手によるものも多く、自然界のバランスを壊して来たのが人間だった。
絶妙な自然界のバランスを創り出す事の難しさは分かるよ。」
「この惑星は人類にとって地球以上の環境にするのよね、でも城の子の力無くしてはこれを維持出来ないのでしょ?」
「今はまだね…、でも、海中を含めて植物が充分に広がり生長すれば、動物と共存しながら大きな循環を完成させられると思うわ。」
「この惑星以外にも人の住める惑星を作って行く計画が有るのだろ、そっちはもっと時間が掛かると言う事なのか?」
「今の所、実験の候補に上がってる惑星は重力がこことは違っていてね、本格的に人が住める様にとは考えていないの。
微生物の繁殖だけに終わってしまいそうな惑星も有るし、それでも秘密基地には段階的に重力を変化させて行く研究施設が完成し、それぞれの惑星向けに実験生物の繁殖を試み始めたところよ。」
「違う環境に適応する生物と言うのは興味深い、どれぐらいの範囲まで適応出来るのだろうな。」
「そこが研究のメインになると思うわ、都合良く環境改善に役立ってくれる植物が見つかれば、様々な作業をスピードアップさせられるのだけどね。」
「簡単ではなさそうだ、その植物が次のステップへの障害になる可能性は否定出来ないだろ。
まあ、今はこの惑星の緑化が成功すれば良いのだが。」
「シミュレーション的には問題ないのだけど、どれだけ時間が掛かるのかが掴みきれてないの。」
「まだ、変数が多過ぎるという事か?」
「ええ、マリアさまも、本格的な惑星改造は初めてだと言うし。」
「だろうな、元々は傍観者だったのだから。」