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それから-01 [シトワイヤン-35]

世界は随分平和になったが、私達は今も姫さまと共に旅の途中。
私達の一番上の子どもは、もう三歳になる。
彼はファルコン二世号で生まれた。
清香にとって空飛ぶ宮殿で姫さまに見守られながらの出産は喜びに満ち溢れるものだった、生まれて来る子どもにとっても姫さまの祝福の中なのだから。
医療チームに待機して貰ったが、安産で何の問題も無かったのは長年姫さまの祝福を感じながら過ごして来たことが関係していると思う。
清香と愛華、私は二人と結婚した。
大銀河帝国の法律はとても簡単で、一夫多妻を否定する条文が無い。
多くの法が必要無くなるぐらいに地球市民の意識が姫さまの祝福によって高くなっている。
飛行船での旅には、私の四人の子ども達と、智里の子も同行。
飛行機と違い比較的低空を飛ぶので乳幼児でも問題はない。
智里は帝国のスタッフと結婚したが、一番大切な妹のそばを離れる気は無く、夫と子育てしながら業務をこなしている。
子ども担当のスタッフもいるが、時に姫さまが子どもの相手をして下さることも。
姫さま御自身の結婚は大きな問題なのだが、まだその時では無いそうだ。

「ねえ、姫さま、どうして日本語や英語が有るの?」
「そうね、元々遠く離れた国だったから、別々で言語が形作られてね。
一つの言葉の方が便利なのだけど、それぞれに、その言葉を使ってきた人たちの思いが有って大切にして行きたいの。」
「ふ~ん、姫さまは色々な言葉を話せるのでしょ、覚えるの大変じゃなかった?」
「大変だとは思わなかったかな、色々な言葉を話せると言っても、普段あまり使わないwordは知らないの、それでも手助けして下さる方がいるから大丈夫なのよ。
裕くんも普段から日本語と英語を聞いて使ってるでしょ、それと同じなの。」
「そっか。」
「ねえ裕くん、夕日が綺麗ね。」
「うん、茜色だね、でも、朱鷺色とか、夕焼けを表す表現は色々有るんだよ。」
「へ~、そうなの、誰に教わったの?」
「お父さん。」
「今日の夕日を裕くんはどう表現するのかな?」
「う~ん…、おひさまは、真っ赤になりながら、大好きな姫さまに、また明日お会いしましょうと、そして静かに、少し寂しげに…、ねえ、朝日と夕日って同んなじようなのに随分違うよね。」
「そうね。」
「明日も姫さまと共に健やかでいられますように。」
「それは?」
「昨日、船長が夕日に向かってね、僕を肩車しながらつぶやいていたんだ。
夕日を見てる人達は、みんなそう思ってるんじゃないかって。」
「じゃあ、明日も裕くんと共に健やかでいられますように。」
「ふふ、姫さまは何十億人の姫さまなのに、いいの?」
「もちろんよ、裕くんのことだって世界中の人がご存じなのだからね。」
「そうかな?」
「そうよ、だって、裕くんが生まれた時、世界中の人に紹介したのは私なんだから。」
「う~ん、覚えてないな。」
「でしょうね。」
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