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大銀河帝国-22 [シトワイヤン-34]

内戦状態から大銀河帝国の自治領になった中東の国は、ゆっくりとだが着実に復興している。
その復興事業の特徴は実験的な施設が多いと言う事。
規模の大きなものも有り、その中の一つに海水を流す水路が有る。
満潮時には海水で満たされるが、干潮時は干上がり水質を悪化させない設計。
この水路には、かまぼこ型の覆いが掛けられて…、巨大な農業用のビニールハウスが水路を覆っている状態と言えば分かり易いだろうか。
太陽によって暖められた海水から蒸発した水分は透明な覆い部分で結露し集められ蒸留水として利用されている。
覆い部分に海水を上から撒く構造、その気化熱で冷やしているので大量の真水とまでは行かないが効率は悪くない。
覆い部分を冷やした海水は集められ、塩田へ流している。
メイン水路の両脇では、マングローブを形成する植物を中心に様々な植物が植えられ緑化実験。
環境に合わずすぐ枯れてしまった種は少なくないが、じわじわと繁殖している種も有り、研究者達は、その種を中心とした緑地帯の形成を目論んでいる。
水路の奥には塩水池を複数作り、死海の様な観光スポットに出来ないかとの実験も。
海水の流し込み方で塩分濃度に差をつけつつ、温泉さながらに付加価値としての効能を加えられないかと研究が進む。
一帯を海水の淡水化事業と塩の織り成すテーマパークとして拡充して行く計画が着実に進んでいて、観光客向けの施設も増えつつある。
水路からの高温高湿の空気を取り込むサウナ、深層水をくみ上げての屋内海水プール、海水風呂、海水淡水化装置によって作り出した淡水を農業に使う前に溜めた屋内プールなど、それぞれに特徴が有り人気。
地元の人はサウナに入る人の気が知れないと話すそうだが、サウナとプールを組み合わせて楽しむ観光客は多い。
舞姫さまの社が併設されていることも有り、施設の拡充と共に観光客が右肩上がりで増えている。
投資額は少なくないが、経済の活性化が進み内需拡大にも繋がっている。

「和馬さん、死海の様な塩分濃度の高い池って、映像で見ると小さいですよね。
もう少し広い方が楽しめそうだと思うのですが。」
「確かに今はまだ小さいが塩湖を目指して大きいのも造ってるよ。」
「あまり情報が入って来ていませんが。」
「まだ、プロジェクトが始まったばかりだからね。」
「大きなプロジェクトなるのですか?」
「ああ、二つのプロジェクトを並行して進めて行くんだ。
一つは、掘りに掘って大きな窪地を造り、完成したら海水を流し込んで周辺の環境にどんな影響を与えるのか研究して行くプロジェクト、熱しにくく冷めにくい水が砂漠の寒暖差を緩和するにはどの程度の規模が必要なのか、それとも全く効果がないのか、小さな池だけでは充分なデータが取れないだろ。
ある程度の規模になれば暑い時の地上よりは確実に低く安定した水温を保てる、半分を水中に沈めた倉庫と上に断熱目的で土を被せた倉庫を比較したりとかも考えているんだ。
そう、もう一つのプロジェクトは地上に建設した様々な施設を土で埋めて丘にする、その為の土は塩湖を作る為に発生した土砂を使うという訳さ。
丘の中腹には半分埋まった家の一部が見えていたりしてね。
気候の良い時は屋外の空気をしっかり味わい、酷暑の時は窓辺の部屋を断熱目的で閉鎖したりとか色々試して行くんだ。」
「地下を掘り進むより経済的なのですか?」
「勿論さ、更に今後の気候変動が微妙で、砂漠地帯でも大雨に見舞われる可能性が否定出来なくなっているそうだ、そういった事にも対処して行ける様に海水を流し込まない、ただの大きな窪地を造る話も出て来ている、海水を使った実験を進めている地域とは大きく離れた所で、浸透した地下水に塩分が混じらないことを意識してね。
まあ、利用価値の無かった土地だから、様々な可能性を探りながらいじくり回せるんだ。」
「和馬さんはやけに詳しいですね。」
「はは、砂漠を人の住める環境に出来ない様では、月の開発など宇宙への進出は無理だろ、大銀河帝国としては、まず地球の環境と向き合っていかないとね。」
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