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大銀河帝国-21 [シトワイヤン-34]

中南米の旅を終えMAIHIME TOWNへ、ファルコン号はここでメンテナンスに入る。
ヘリウムガスの圧力や温度を調整し浮力調整したり、プロペラを回して高度や移動速度の調整を行っているファルコン号は、燃料電池を使用しているのでとても静か。
ちなみに、昔の飛行船は空中に静止する事が出来なかったが、船外の各種センサーと姿勢制御系が連動しているので、風が強くなければ静止状態も可能。
複数のプロペラが衛星からの位置情報に基づき細かく動いて位置を自動調整、無風に近く温度変化が少なければ燃料の消費は僅かで済み、騒音を撒き散らすヘリコプターとの差は大きい。
移動時でも飛行機と比べ消費する燃料は少なく、排出するのは主に水で地球に優しい飛行船、燃料の水素を得る段階に問題が残ってはいるが化石燃料を燃やして飛ぶ機体よりは随分ましだ。
かつて飛行船の大事故が有ったが、この機体はヘリウムの代わりに水素を利用しても問題がないだけの安全性が確保されている。
あらゆる事故を想定し、多くの安全装置が施されていて、今回のメンテナンスではそれらが問題なく作動するかのテストも行われる。
旅行中様々なデータを取って来たが、部品の消耗具合なども調べ、アフリカ旅行に備える。
ただ、間もなく姉妹機、ファルコンⅡ世号が完成するので状況によっては、そちらを使うかも知れない。
ファルコン号と基本仕様を同じくする小型飛行船は、すでに数十機が製造され運行中、ファルコン号タイプと簡単にドッキング出来る形状に統一されている。
今は主に観光と宣伝に使われているが、地球防衛軍では山火事発生時の出動も検討している。
飛行船で水のタンクを運ぶのではなく、水のホースをホールドして噴射することを目指していて、複数の機体を並べ水のホースを支える事が出来れば、連続放水が出来、効率を上げられると。
ただ、ホースのみとは言え水を流すとそれなりの重量となり課題は多い。
それでも熱心に取り組んでいるのは、MAIHIME TOWNの属する州でも大規模な森林火災が起きているからだ。
予防的に乾燥が進んだら大規模に水を撒くという案が浮上するぐらい深刻な状況。
少々乱暴だが、真水の確保が難しければ延焼を食い止める為、海水を防火帯に流す案も出ている。
塩分が、その後の環境に与える影響は大きいだろうが背に腹は代えられないとのことだ。

飛行船は強風に弱いと言う弱点は有るものの、地上基地の整備を進め、海の豪華客船に対し空の豪華飛行船という位置づけを目指している。
今回のファルコン号による中南米の飛行は、そのデモンストレーションとしての役目を充分に果たし、飛行船は隼と共に大銀河帝国の象徴となった。

「姫さま、ファルコン号での旅は如何でしたか?」
「出発前に、飛行船の歴史を調べたりもしたのですが、最新技術のおかげで思ってた以上に快適でした。
速度も充分だと思います、もっと速度が出る機種も有るそうですが、観光向けの客船ですので。
同乗していた技術者の方とは飛行船の技術面について話し合え楽しかったです。
大銀河帝国が国や企業の壁を越えて集めた技術者集団の力量も教えて頂きまして、帝国の存在が科学技術の発展に貢献出来ている、それをファルコン号で実感出来たのは素直に嬉しいですね。」
「今後は各自治領にも地上基地を建設し、小型飛行船を就航させて行き、観光やファルコン号への補給に使える様に、環境に優しい空の交通手段として発展させて行きたいです。」
「そうそう、プロペラのない飛行船タイプのドローン、屋外では使いにくいかも知れませんが使ってみたいですね。」
「あっ、そんなのも有りました、早速、手配します。」
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