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改革-16 [シトワイヤン-30]

MAIHIME TOWNに於ける最後のプログラムは、姫さまのファンサービス。
熱気球に乗り、空から巡礼者達に手を振る光景は、建設中のMAIHIME TOWNを上からゆっくり見ておきたいという姫さまの要望から。
姫さま自身は気球を意識してなかったのだが、一人だけで宙に浮くというのは何とも心元なく、キャッシーが熱気球を用意した。
途中、かごの外に出たりして楽しそうな姫さまの姿は、天女とか妖精とか人ならざる者で、観客の多くは口をポカンと開け、ただ見上げるのみ。
今回の滞在中、姫さまが人前に出たのは記者会見とイベントだけ。
町を離れる時もヘリコプターで空港へ直行の予定なので、居合わせたマスコミ関係者は大喜びで撮影し、速報として生中継したところも有る。
姫さまが見下ろした、まだまだ未完成のMAIHIME TOWNには姫さま滞在期間中、のべ二百万人を超える人が押し寄せた。
それを仮設の施設中心にしのぎ切ったのだが、当然飲食物やグッズの売り上げは半端なく、その利益から幾つかの工事を前倒し出来そうだと言う。
姫さまの帰国後は仮設商店の規模を縮小しつつ、舞姫さまの聖地として、社を中心に施設を充実させて行く。
またアメリカに於ける舞姫さまの拠点として、グッズ工場も順次稼働の予定だ。

「姫さま、空から巡礼者達を見下ろして如何でしたか?」
「まさしく数えきれない程の人達が集まって下さっていることを実感出来ました。」
「それでも姫さまを慕う人達のほんの一部なのですよ。」
「その実感はないですね。」
「ねえ万里、舞姫さま研究が進んでるのは知ってるでしょ。」
「まあ、知ってはいるけど、あまり見て無いの、何かね…。」
「万里に無理なお願いをする様な研究は全部断ってるから安心して良いのよ。
その中で幾つか注目してるのが有るのだけど、舞姫さまの祝福を感じられるエリアに関する研究が有ってさ。」
「私には実害の無い研究なのね。」
「ええ、それによると、舞を舞った時にはそのエリアが凄く広がるのだけど、それ以外の時は広がったり狭くなったり、ただ、平均値を出して行くと少しずつ広がってみたいなのよ。
因みにデータを検証してみたら、万里が美味しいスイーツを食べた時に広がり、ホームシック気味の時に狭くなってるみたい。
あえて、研究者には教えてないのだけどね。」
「へ~、そんなこと考えても無かった。
でも、平均値が伸びてるという事は、まだ成長期ということかしら。」
「ふふ、もう少し身長が欲しいのかな。」
「うん、実里が成長期全開で成長痛に悩まされているとか、そこだけはお姉ちゃんに似たみたいだけど、抜かされるのは兎も角、見下ろされるぐらいになられるのは抵抗を感じるのよ。」
「美しさでは全く勝負にならないのだから、それぐらいは許してあげなよ。
今日は大勢の人を眼下に見下ろしたのでしょ、女神さま的存在としての自分を実感しなかったの?」
「全くそんな感じじゃないのよ、勿論、全ての生きとし生ける者に幸多からんことを願っている、でも女神という存在、いえ、女神とは存在ではなく、空想の産物でしょ。
私という存在は誰かの空想によって成り立っていると思いたくないな。
普通の人とは少し違うかも知れないけど、神ではないと定義付けしたいの。」
「この世に唯一無二の存在としての万里を表す言葉が無いから仕方ないのよ、一番近いのが女神な訳で。」
「でもさ、絵画に見る女神とはほど遠いでしょ、私。」
「あんなのは、それこそ空想の産物、気にする必要ないのよ。
これから、子犬や子猫と戯れる映像とかを公開して行くでしょ、それを見た人達は、舞姫さまに類似する存在が今までいなかったと気付いてくれると思うわ。」
「そうね、普通の女の子っぽい所を沢山見せたら、舞姫フレンズの人達がどんな反応をするのか、少し楽しみでは有るかな。」
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