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改革-14 [シトワイヤン-30]

『子孫に負の遺産を残し過ぎているのではないか』
舞姫フレンズ達の多くは、この言葉を真摯に受け止めてくれたが、個人として実際にどうしたら良いのか分からない人も多い様だ。
そんな中、各地で様々な人が立ち上がり声を上げ始めた、せめてこれ以上負の遺産を増やさない様にと。
日頃から問題意識を持って活動していたが、今一つ成果に結び付けられなかった人達が、姫さまの言葉に背中を押された形で意見を発信する。
例えば、先進国の国民は高額な電気代を受け入れて、脱火力、脱原発に力を入れるべきだとか。
実際のところ、日本の電力会社は電気代を安く抑える為に努力していると思う。
だが、安ければそれで良いのだろうか。
経済的な観点で見れば安いに越したことは無いが、少し視点を変えて電線の地中化を考えてみよう。
日本は何処へ行っても電柱が立ち並ぶ町ばかりだが、もしコストの掛かる地中線が当たり前に普及していたら、その分電気料金が現状より高額だったとしても、電力普及時から普通のことであったなら文句を言う人はいないのではないだろうか。
負の遺産として、いずれ廃炉になる原発を増やす、地球温暖化に影響を及ぼす石炭火力発電所を使い続けるという道を選ぶのか、費用は嵩んでも環境に負荷の掛かりにくい発電を模索し推進して行くのを当たり前のことにするのか、考える余地は有ると思う。

「和馬さん、MAIHIME TOWNにも電柱が見当たらないですね。」
「電線などは地中に有るのが当たり前なのさ、初めから地中ならコストも抑えられるだろ。」
「でしょうね、苗川は災害に強いインフラ整備を目指し、大改造に合わせて電柱を無くしました。
一気に施工した事で工事単価が抑えられたとはいえ、多額の費用が掛かったのですよ。
当初、本間さんが市民に負担をお願いしていたのですが、反対する意見も有ったのです。
でも結局は、とてもすっきりした街並みが観光客にも好評で苗川自慢の一つになりました。
費用も急速に伸びた税収でカバーする事が出来て、めでたしめでたしなのですよ。」
「なあ智里、電力会社が協力的だとは聞いているが、実際はどうだった?」
「今後、電線の地中化は少しずつ進んで行くと考え、工法や維持管理の方法に関して、色々実験的に進めたのですよ、苗川で。
その分の費用負担をしてくれただけでなく、苗川は全国的に注目を集めるだろうからと、見学者を意識して小規模水力発電や、小規模火力発電などの建設も。
実際、工事を始めた頃から、地中線化のモデル地域として見学者が大勢来ていましてね。
清香さんの会社も小規模火力発電所建設に関わっているのですよ。
また、まだあまり知られていない事ですが、広いエリアで停電になっても苗川を中心としたエリアだけは、直ぐに復旧できるシステムを実験的に運用していて、大都市圏では不可能な電力の地産地消の研究も進められているのです。」
「人も工場も増えて来てるがそれに対応してという事なのか?」
「それも有りますし、地球温暖化対策を意識してのことでも有ります。
苗川の小規模火力発電所は化石燃料を燃やすのではなく、森林の手入れをした時に出る使えない木や製材所で出る製材廃材などを使っています。
勿論二酸化炭素は出ますが、化石燃料を使うよりはマシなのですよ、排気は森へ流され微々たる量かもしれませんが木の光合成に使われます。
遠くから燃料を消費して運ばれて来た化石燃料による発電とは、同じ火力発電でも意味が違うのです。」
「問題点はないの?」
「色々な意味で効率が悪いです、植林地の維持管理と一体的に運用出来ればコストパフォーマンスは改善されるのですが、燃料が石炭や石油ほど扱い易くないのですよ。」
「発電コストとしては割高でも、森を維持管理する手助けになる一面も有るということかな?」
「ええ、有害物質を発生させないゴミなら一緒に燃やせるメリットも有ります。
理想としては、化石燃料に因らない発電で得られた電力を使って、林業用の機械類を動かせると良いのですが、まだまだ難しそうです。」
「そうだよな、綺麗な空気という問題だけでなく、燃料の多くを輸入に頼ってる状態は国際情勢の変化に弱い一面が有り好ましくはない。
まあ、輸出してる側にとっては、今のままであって欲しいだろうけどな。」
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