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進路-01 [シトワイヤン-23]

私が大学進学という選択肢を選ばなかったのは、本間市長の手伝いをしている中で、受験の無駄を感じたからだ。
高校は真面目に通い万里に恥ずかしくない成績を収めていたのだが、自分のやりたい事は明白、市政の手伝いをしながら万里を守っていくこと。
そのどちらにも、大学でなければ学べない要素を感じなかった。
大学入試の為に強要される学習内容も同様だ。
それでも何の迷いも無かったわけでなく…。

「ねえ、本間さん、お姉ちゃん進学関係で迷ってるみたいなんだけど。」
「智里、どこの大学に良い男が多そうか調べさせようか?」
「そ、そういう問題ではないです、大学そのものの意味を考えていまして。」
「お姉ちゃんは、すでに大卒職員より有能だからね。」
「そんなこと無いわよ。」
「う~ん、大学で何を学ぶか、かな。」
「お姉ちゃんは、今まで本間さんの元で色々学び経験させて頂いて来たのよね。」
「そうよ。」
「なら、このまま本間塾の塾生ということで良いじゃない、私も中学卒業したら、ねえ、本間さん、塾生にして下さるでしょ。」
「本間塾?」
「吉田松陰の松下村塾は学校関係の法律に縛られない学びの場だったのですよね。」
「だろうな。」
「実際、本間さんは幅広い知識と見識で多くの人を導いて来られました、塾と名乗っていなかっただけで本間塾の塾生に値する人は多いのでは有りませんか?」
「そうですよね、市長から学んでいるのは私だけでは無いですし、共に学ぶ松下村塾の理念に通じる所が有ります。」
「そうだな、私なりに、人を育て共に成長すると考えて来た。」
「だから、お姉ちゃんは色々面倒な大学へ行くより本間塾の塾生という立場で、和馬さんに話せば面白がって、お姉ちゃんに必要な先生とか紹介して下さると思うわよ、勿論、取材対象になるでしょうけど。」
「う~ん、必要と有れば大卒資格を取る道も作れるが…。」
「そんな資格より本間塾塾生の肩書を価値の高いものにすれば良いと思うな、ね、お姉ちゃん。」
「そうね、本間塾の塾生は凄いと世間の人に認めさせれば良いのね、本間市長、お願いします。」

こんなやりとりが有って本間塾はスタートし、市長筆頭補佐の私は塾生筆頭になった。
本間さんは筆頭という言葉が好きなようだ
和馬さんは万里の予想通り面白がり、番組で紹介すると共に愛華さん清香さんと揃って塾生に、そんな話が広がると、本間さんのかつての部下を中心に塾生が集まり始め、その中から事務担当が生まれ、組織が固まって行く。
塾生には本間さんの認めた人しかなれないが、すぐに二十人を越したのは本間さんの人望の厚さだと思う。
吉田松陰の時代と違い今はネットで情報交換できる、大学と違って単位の制約もなく、意見を交わし学び研究する場は至って簡単に出来上がった。
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