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智里-02 [シトワイヤン-21]

メロディを共通言語化する取り組みを始めたのは、勿論遊びだ。
当たり前のことだが、意思疎通に時間が掛かり過ぎる。
それでも高校生部会のメンバーに話したら何人か乗ってくれた。
既存のメロディーを使う場合に著作権との関係はどうなるのか、といったことを調べるチームと、純粋に作曲から取り組むチームが立ち上がる。
人前で歌う事に抵抗の有る人は多いだろうから簡単にはいかないだろうが、まず苗川を歌声溢れる街にしようと盛り上がり始めた。

「バキャラマモン♪」
「健司は、まだ中二病の真っ最中なのね、で、一応聞くけど、それ何の呪文?」
「俺の作った言語で腹減ったと歌ってみた、智里、なかなか良いだろう。
これが通じる様な世界になったら平和な世界になると思わないか。」
「あなたは充分過ぎるぐらい平和よね。
それで、歌うように話す世界共通言語でも目指すの?」
「それは良いかも。」
「でも、世界市民が、そのヘンテコリンな言語を使うのには抵抗を感じるわ。」
「う~ん、でも、結局、知らない言語なんてこんなものだろ。」
「せめてフランス語みたいな響きで、何度聞いても不快にならないメロディーとか。
まあ、メロディーだけに意味を持たせるのなら言葉は何でも良いし、楽器で演奏しても良いのだけど。
そうね、歌は曲によって言葉の意味合いを強調してるでしょ。
歌い方を工夫することで更に伝わる情報が多くなるわね。」
「問題は、話が長くなると、とてつもなく時間が掛かる言語形態ということだな。」
「ええ、でも、例えば論文のタイトルを見れば、その論文を読んだ人には内容まで伝わるよね、そう考えると、数文字のタイトルに膨大な情報量が詰まってると考えられない。」
確かにね、まあ、その論文を読んでない人には何も伝わらないのだろうけど。」
「何について書かれているかぐらいは、タイトルから判断出来るのが理想ね…、なかなか難しいかしら。」
「うん、タイトルに騙されるパターンだね、良くあるよ。」
「健司って、そんなに読書家だったっけ?」
「はは、タイトルがついてるのは本だけじゃないだろ、後は追及するな。」
「はいはい、男子ってそういうの好きなのよね。」
「俺は何も言ってないぞ。」
「態度ってのも、情報伝達手段の一つなのよ。」
「えっ、俺は何時も通り真面目な顔で話してたけど。」
「本人に自覚なしか、まあ、人と話してる時に自分の顔の事は意識しないわね。」
「そんなことないぞ、智里の前では理性的でカッコ良い雰囲気を醸し出してるだろ。」
「ふふ、健司がナルちゃん系だったとは知らなかったな。」
「なんだ、そのナルちゃんって?」
「勿論ナルシストのことよ。」
「俺が?
まあ良いけど、言葉を短くするのは言葉の文化としてだな…。」

高校生部会の仲間とは、時におバカな話で盛り上がることも有るのだ。
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