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万里-04 [シトワイヤン-19]

「ということは、幼稚園入園前に集団と個人の関係を学習していたということですか?」
「ええ、幼稚園には色々な子がいて、その中でどういう立ち位置が望ましいか、智里と相談しながら話し合いました。
こんな子は嫌われるとか、智里と読んだ、本の主人公を参考に一つの理想像、優しいお姉さん像を描いたのです。
幼稚園入園直後には、不安で泣いてる子を慰めて上げたりしたそうで、すぐに皆から頼られる様に。
それが本人も嬉しかったみたいで、夕飯の時とかに話してくれる幼稚園での話は楽しかったですよ。」
「すでにリーダーだったのですね。」
「幼児期は集団で遊ぶことは有りませんので、リーダーと言えるかどうかは微妙なのですが、人間関係の基礎は築けたのでしょう。」
「万里ちゃんが小一の頃に、五年生の智里さん達が『格好の良い子どもになろう』を始めたのですよね。」
「ええ、智里から聞いた時は私達も少し戸惑って、本間さんに相談しました。
そしたら、本間さん、すごく喜んで下さって、時間を作って智里達と話して下さる様になりまして。
そんな時は万里も一緒だったのですが、高学年向けの話を小一の万里が理解してると知って凄く興奮されてたのを覚えています。
そのまま、万里の知的欲求を満たしてくれる大人との時間を作って下さったのですよ。」
「あっ、本間さんから、小学生が教師だけでなく色々な大人と接することの必要性を伺ったことが有ります、子どもの視野を広げる為に。
都会の子は親と教師の他は限られた大人としか接点を持たない、鹿丘の子達は地域の活動を通して大人との接点が有るだけでなく、本間さんが意図的に作った、子どもを少し大人扱いする場が有る事で、中学受験を目指す子達とは違った成長をしているのではないかと聞いています。」
「学力向上を目指しての教育だけでなく、バランスの取れた大人への成長という視点で大人達が接していますからね。
『教育の場に、教師の価値観だけで良いのか』というのが当時本間さんから言われたことです。
でも、本間さんには裏が有りましてね。」
「裏?」
「万里達とどう向き合うかで、その人の人間性が分かるのだとか。
根気良く、子ども達の質問に応えることが出来るかどうか、子どもの人格を尊重出来るかどうか、子どもと接する様子を見て大人達の力量を図っていたそうです。
ですから彼のスタッフは子どもに人気が有るのですよ。」
「万里ちゃんとしては大人と接することをどう捉えていたのでしょう?」
「質問に答えてくれる大人、智里では応えきれないことにも答えてくれる大人を見つけて万里は嬉しかったと思います。」
「ご両親が、質問に答えることは無かったのですか?」
「私達は制限をしていました、彼女の疑問全部に応えていたらきりがないです。
万里の疑問質問にはずっと応えて来ましたが、自分で調べることを覚えた頃には、簡単に答えまで届かないことを考えていて、私達の能力では答えきれなくなっていたのですよ。」
「それでは、小学校の授業は簡単過ぎるので有りませんか?」
「ええ、一年生の頃から教える側でした、それを見た本間さんが、教え合う授業に発展させたのです。」
「凄く濃厚な学習をして来たのでしょうね。」
「はい、何をどの程度理解しているのかは、私にも見当が付きません、本人は普通の小学六年生だと言っているのですが。」
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